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狐の嫁入り -土姫ノ章-  作者: ツカサシキ
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3-1 夢遊病の翻弄と…ひょんな『依頼』?

8月も残りわずかですが、台風見舞いを申し上げます。

本日から新章(3章)を始めさせていただきます。


また読みづらい箇所があると思いますが、楽しんでいただけたら幸いです。


前者は、まだ明かせません。

後者は、教授の異名を持つ大学生“辻本蓬”さん視点です。


よろしくお願いいたします。

「マダ?マダ?」


 また聞こえる…この声…。


「マダカ?マダカ?」


 子供の頃から頭の中で、聞こえ続ける『声』が、女子高校生になった今日も優しく囁き続ける。

 何度も何度も…聞こえ続ける。


 この『声』を聞くと…私の中の“欲”が面白いくらい駆り立てる。

 上手く言葉に出来ないが、ストレス発散なのか?自問自答をしても『答え』が見つからない…高校生になったというのに情けない。


 大人達は「焦らなくていい。」と、よく口にするのに…焦らせる癖がある。確かに高校生は、しっかりしている人達が多いが…まだ“子供”心を隠し持っている。


 隠し持っているが、上手く周囲にバレないようにしている…バレてしまえば、終わりだからだ。


 バレてしまえば『公開処刑』が、待っている。


 自分より優れている人の“弱み”であるし、逆に自分より劣っている人の“弱み”で、いわば『秘密=甘い蜜』という名の心を自己満足にする“魅惑的なお菓子”感覚に近い代物――…秘密を知った途端の弄る側の相手は、ハイエナと化す。


 芋ずる式に『秘密』を大暴露され“笑いもの”として、卒業後も晒され続ける。

 回避方法など、存在するのか?と、いうレベル…弄る側の相手が飽きるのを待つしかない。


 立派な『イジメ』だというのに…教師を含む大人達は「自分で、解決しろ」の一言で、無理矢理に済ます…思いつく限りの手数の解決策が底を尽き、一杯一杯だから頼ったのに…ショックの衝撃は、大きい。


 その結果――…自害する人が、後を立たないというのに『自覚』と、理解が足りない。


 私も…その一人に入っている。

 私の実家が『神社』だからか、物珍しがられる。


「マダ…?マダ…?」


 まただ。

 この『声』を聞くと…私の中の“何か”が、動き出す。


・・・・・


 ――某都市の某大学。

 まだ5月だというのに梅雨入りしたのか…お天気雨が、頻繁に発生している。


 その“お天気雨”対して「ぅあー!また雨が降ってる~!今日の予報は、一日中晴れって言ってたのにー!」と、僕の同級生であり同じサークルに所属している田中かなえさんが窓の外をマジマジと、見ながら頑張って干したのであろう布団の心配と今朝の天気予報への不満の愚痴が炸裂していた。


 確かに天気予報を信じて、頑張って布団や洗濯物を干したのに今日に限って急な雨が降ると…ショックという名の顔色が変わる。


 直ぐに田中さんは、血相を変えながら自主勉をしていた文具類類をカバンに次々に投げ込みながら帰宅準備をしている。


 帰宅準備をしながら田中さんは「すまんっ!愛する布団達のために帰るわ!」と、叫びながらICカードを片手に持つと「よしよし…忘れ物は、無しだね」と、ブツブツと確認をし終えると直ぐに「では、さらばっ!」と、言いながら“なんちゃって”敬礼するポーズを取り終えると素早く部室を後にした。


 あまりにも見事な走りに思わず、感服した。


 流石、元・高校陸上部女子長距離走のエース…素晴らしい走りだが、学内なので走っては駄目と、心の中で訴えるしかない。



 先程まで、田中さんと一緒に宿題をしていた、同じサークルメンバーである原絵里さんが「今日、ナポリタン論争日だったのにな~…残念っ!」と、残念がりながら恒例の『宿題の息抜き休憩会話』の談義内容を言うと、同じくサークルメンバーである鈴木久美子さんが「仕方ないって…頑張って干した布団が濡れてたら大ショックでしょ?まぁ…実家通いの私には、皮肉にしか聞こえんだろうけど…。」と、軽いネガティブ発言を言い放っていた。


 直ぐに原さんが「まーた、あんたはー」と、嗜める。

 そんな彼女達のやり取りを聞きながら僕は、読書感想文の執筆を走らせる――…のだが、ついつい本の内容に夢中になり過ぎてしまい締め切りギリギリ間近で、一気に筆を走らせる日々を送っている。


 ほぼ毎日の『当たり前』の光景だった。


 しかし、その日が田中さんとの最後だった。

 よく『出会いと別れは、早いか遅いかの紙一重』という言葉があるが…その通りだった。田中さん宛てに原さんと鈴木さん、他のサークルメンバーも連絡を取ろうと試みるも音沙汰が無かった。


 ――そして、知らなかったが…退学していた。


 あまりの突然の事に僕も含めサークルメンバー達は、目を丸くし驚きを隠せなかった。

 中には「しつこく連絡をし過ぎたかな?」と、何かをやらかしてしまったショックを受けている人も居た。


 ――そして、原因が判明した。

 田中さんが、退学をして一ヵ月後…6月、本格的に梅雨入りになっていた。


 夕方。

 何時ものように大学を終えて、帰宅中に駅中にある行きつけの書店にて、新発売された大好きな作家さんの小説を買った帰りだった。

 早く読みたいのをグッと、堪えながらバスターミナルに向かっていると、必死にビラを配っている人達の姿が目に入った。


 その配っている人達の中に「え?田中さん…?」と、驚いていると立て看板が目に入った。

 看板の内容は『この子を探しています!』の文字と少女の顔写真が張られているのが目に入り…居ても立っても居られなくなり僕は、直ぐに田中さんの元に走った。


 田中さんの元に駆け寄ると「この子を探しています!何か、知っていましたら――」と、言いながら僕にビラを渡そうと顔を見ると田中さんは「き、教授…?どうし…なんで…」と、今にも消え去りそうな…か細い声を発していた。


 何時も元気な田中さんから想像が出来ない弱弱しさに恐る恐るだが、僕は「一体、どうしたんですか?突然を大学を辞めて…僕と皆、心配しましたよ」と、言うと田中さんは、僕の言葉に大粒の涙をポロポロと流し始めた。


 田中さんの突然の行動に思わず僕は、慌ててしまっていると田中さんは「ごめ、ん…なさぃ…久しぶりに…家族以外の、知っている人に…逢えたから…涙が…」と、泣きながらのため、途切れ途切れの言葉を発してくれた。


 田中さんの言葉を聞きながら僕は、カバンからタオル系のハンカチを差し出した。

 僕の行動に田中さんは「相変わら、ず…優しいな~…教授は…」と、言いながら僕からハンカチを受け取ると、まだ途切れない涙を拭った。


 すると、遠くから「かなえ」と、若い男の人が慌てて駆け寄ってきた。

 その声の主に田中さんは「兄の隆夫です、教授」と、紹介してくれた。


 駆け寄ってきた田中さんのお兄さんは、一目散に田中さんを隠すように前に立ちはだかり僕を威嚇?してきた。


 直ぐに田中さんは、自分の兄だというのに『バコッ』と、頭をブッ叩くと同時に「アホ兄が大変、失礼しました」と、謝罪をしながら深々とお辞儀をした。


 その様子に田中さんの兄は「え?」と、言わんばかりの表情を表しつつ状況を把握していなかった。


 田中さんは「大学で、お世話になった先輩の辻本蓬さんです」と、言うと田中さんの兄は、みるみる青ざめた。


 田中さんは、青ざめ頭を抱え悩んでいる自分のお兄さんをほったらかしにすると直ぐに何かを思いついた顔をしながら僕に「すみません、教授…!教授のお知り合いの方にご協力を頼みたいのですが!」と、暗かった表情から一遍、まるで『希望』を見つけたかのように切羽詰った言動を起こした。

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