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新居?いや、同居!

僕は目の前にある、見上げる…程高くないアパートの前に立っていた。


「私も一人暮らしだから、好きに使っていいよ」


僕は水瀬さんについて行ってアパートの階段を上り、『水瀬』と表札に書かれている扉の前に立った。


水瀬さんが慣れた手つきで鍵を開け、中へ入っていく。

僕も流れるように入ろうと――


「待って」


なぜか止められた。


「大丈夫です、水瀬さん、僕は勝手に冷蔵庫の中身を見てカロリー高そうだなぁなんて言いませんから」


「なんで、そんなくだらないことを具体的に言うのかわからないけど…少し片づけるから待ってて」


水瀬さんは扉を閉めた。

僕を外に残して。




「うわ、散らかってるなぁ、直也が記憶喪失とはいえ汚いなんて思われたくないなぁ」


「水瀬さん、黒のブラジャー落ちてましたよ。こっちにはきわどいパンツが」


「あ!それはさすがに直也にみられる前に片づけなきゃ、それは引き出しの中で、パンツは――ってきゃああああああ!」


「水瀬さん近所迷惑ですよ」


水瀬さんが片づけ始めたころから見てたはずだが、水瀬さんは中々うっかりさんなのか。


「どうしたの!黄色!」


急に扉が開いて年の近そうな女の人が入ってきた。


「なんだ男連れ込んでたの?勘違いしちゃうからやめてよね」


「ごめん、日香里先輩、っていうか誤解だから」


あの人はヒカリっていうのか。


ヒカリさんはなんだかウキウキしている。


「で、どこまでいったの?一線超えた?」


「一線超えるとどうなるんですかね?」


「はいはい!この話終わり!何もないから本当に」


ヒカリさんはあきれて帰ろうとすると

「そういえば、あんたのポストに封筒が入ってたわよ、かなり分厚いの」


そういってヒカリさんは帰っていった。


「封筒?親からとか?」


水瀬さんはその中身を見ると固まった。


僕も水瀬さんの近くへ行ってその中身を覗くと

「やりましたね、水瀬さん」


「私は何もしてないわよ!ねぇ本当なの、信じて!というかなんで急にこんな…」


封筒の中には札束がギッシリ詰まっていた。


「手紙があるわよ、えっと…飯田さん宛?」


僕は水瀬さんから手紙をもらって文面を見てみる。


「んと、飯田直也様へ、この度は多大なるご迷惑をおかけしてしまいまして誠に申し訳ございません、これはお詫びの印です。もう少しちゃんとお詫びしたいので後日お迎えに行きますぅ?」


なんだこれは、明らかにダメな金じゃないか。

それとも記憶があった頃の僕は英雄だったのだろうか。


僕は水瀬さんにこの金は返そうと言う前に

「今日はこの金で退院パーティしましょう、日香里先輩も呼んで」


それはあかんやろ、水瀬さん。




「いい?あなたは飯田直也、第二高校の生徒で私の彼女」


彼女、と言う所をわざわざ強調する意味があったのか不思議だ。

日香里さんは水瀬さんの先輩だった人らしい。


「スポーツができて、勉強もできて、みんなから憧れの存在、わかった?」


なるほど、僕は天才だったらしい。

明日から学校だから僕は水瀬さんから前の僕について学習していた。


とりあえずみんなの前では天才を振舞えってことか。

なんて簡単なのだろう。


「じゃ、布団出すから、寝よっか」


「はい、僕はさすがに玄関では寝られないのでよかったです」


「私はそんなことまでしないけど…」




静かな夜、僕はあまり寝付けないでいた。

 

前の僕は一体どんな人だったのだろう。

今の自分が前の自分の培ったものを台無しにしているようで…


そんなことを考えていると涙が目から零れた。

何も悲しくないはずなのに。


すると

「ごめん、みんなごめん…」


僕がすでに寝ていると思ってか、水瀬さんが泣きながらそんなことを言った。


水瀬さんは僕が思うよりも重い何かを心に持っているようだ。


それに比べ、僕の悩みはちっぽけなものだろう。

そう思いながら眠りについた。








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