表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/11

初期設定は手際よく


新連載2話目です。

しばらくは毎日1話以上投稿します。

 

【Chaos Of Frontier】……略してCOFと呼ばれるこのゲームは神ゲーとして人々に呼ばれている物でした。


 未だ数の少ないフルダイブ型VR技術を採用している本作は、発表当初から注目の的となっておりました。


 和洋中様々な世界が詰められた世界観と広大なマップ、最新のAI技術が生み出した様々なキャラクターたちの生活模様は、歴戦のゲーマーたちをもってして、


「まるで本当に異世界の旅が始まったようだった」


 と言わしめたほどです。

 それほどまでにリアリティを追及しているのですから、当然キャラクタークリエイトでの選択肢も多岐に及びます。

 そのたびに操作も交えるのですから、凝ったものを作ろうとすれば長い時間を取られがちなのですが……。


「プレイヤー名アイ背そのまま髪そのまま目そのまま顔変えずジョブ拳法家ボーナス全部STR所属国家ドラグニル!」


『それではそのように設定いたします』


 ……前もって決めていた音々子はひといきに宣言し、作成用のAIに任せてほとんど終わらせてしまいました。

 伊達にカフェで背伸びをしながらトッピングマシマシの飲み物をオーダーしてません。

 早口言葉はお手の物。


『こちらでよろしいですか?』


 その手の職に就いていなければ2~3回は聞き返すであろう要望にも手早く返答するあたり、さすがは最新AIです。

 声と同時に、音々子の指定をCOFのフォーマットで再現したアバターが現れました。


 その再現力の高さに音々子は圧倒されてしまいます。

 ほとんどがそのままなので当たり前ではあるのですが、自分の姿と瓜二つ……まるで姿鏡の前に立ったような感覚です。


「すごーい、本当に私が出てきちゃった……これがゲームの中で動くんだよね、かわいいなあ」


 実質自画自賛しながらアバターを鑑賞し、そしてあることに気づきます。


「……ツノ?」


 まじまじと見ていくと、耳の少し上のあたりから前へ向けて小さくツノが生えていたのです。

 さっきのオーダーの中で言った覚えなどありません。

 これはいったいどういうことか、と音々子は首をかしげてしまいました。


『お疲れさまでした……最後に──』


「ねえAIさん、私ツノの設定なんてしてないよ?」


『お答えします、そちらはこれから行う種族深度設定で調整するものです』


 そのまま進行を続けようとしたのを遮って問いただす音々子に、AIは答えました。


『COF世界のプレイヤーは【キングダム】【ドラグニル】【ジパング】の3つの国のうちいずれかに分かれて所属し、そこで生活することになります』


「うんうん」


 そこまでは音々子も知っていました。

 3つの国はそれぞれ人間とそこのみで暮らす種族で構成されており、手を取り合って暮らしています。

 そしてすべてのヒトと呼ばれる種族は多かれ少なかれ、その血を受け継いでいるのです。


『その血がどれだけ濃いかを調整するのがこのシステムなのです』


 なんとこのゲーム、調整次第では人外でプレイ可能という、その手のマニアが大歓喜するシステムを備えていました。


 種族深度が高ければその分、人にはない特性やスキルを入手できたり、逆に熱さや寒さに弱いなどの弱点が生まれたり。

 このゲームの売りの1つになっている要素なのでした。


 そしてアバター以外を映すウィンドウがすべて消え、代わりにめもりとスライドつまみがついた画面が姿を現します。


『こちら10段階で調整できますので、お好みの深度にめもりを合わせ決定を押してください』


 音々子の所属する国は竜の末裔たちが暮らす国家【ドラグニル】。

 ゆえにここでの深度は、その竜の血がどれだけ濃いかを調整することになるのです。


 ふつうにゲームをしに来たプレイヤーであればどこまで姿を変えるか悩んだことでしょう。

 なんといっても竜の血ですから、大きく引き上げれば多少の弱点など目をつぶってもおつりが返ってくるレベルのボーナスになるはずでは……しかし、と考え込むに違いありません。


 けれど、音々子はそういう“本気でゲームをしに来た人間”ではありませんでした。


「いじらなくていいや」


『よろしいのですか?』


 ヘタに大きく上げると、たとえ再会できたとしても音々子だとわかってもらえなさそうですし、ここまで本人に寄せたアバターがトカゲっぽくなるのはちょっと抵抗感があります。

 それに……


「うん、だってこっちのがかわいいもん!」


 側頭部のあたりから前に向けてぴょっこりと生えた小さなツノは、これ以上ないほど彼女に似合っていました。

 ゆえに音々子はこのままの姿、深度1で決定を押すのでした。


『承知しました、これにて初期設定は完了です……これよりゲームを開始しますが、準備はよろしいでしょうか?』


「もっちろん!」


『それではユーザーネーム【アイ】さま、様々な種族が入り乱れるChaos Of Frontierの世界を、どうぞお楽しみください!』


 元気のいい音々子の返事を聞き届けたAIの声に合わせ、強烈な光があたりを包み込みました。

 ……そして次に目を覚ました時には。


「おう! おめーさんが新しく冒険者になりてえってやつかィ?」


 少し薄暗い、古風な道場めいた室内の中でやたらガラの悪い声をした筋肉質の人型トカゲがこちらを見てにい、と笑っていました。



次回は4/7、0時からの更新になります。



よろしければブックマークや下にある☆に触れていただければ幸いです



深度で変わる種族は国毎に


【キングダム】…エルフ

【ジパング】…鬼

【ドラグニル】…竜人


となっています。

深度5から種族毎の専用スキルが使えるようになり、弱点もそこから追加されていきます。


エルフだと羽が生え空が飛べますが、金属による物理攻撃に弱くなったり。

竜人はより頑強になりますが魔法に対して弱くなったり。

鬼は夜でのステータスが上昇しますが、昼はバッドステータスが付与されたりします。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ