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シルヴィアは呆然としながら話を聞いた。今思うと、兵や侍女たちの態度や、待遇も、皇女だからと思っていたのなら、納得できる。
「ステーシャの髪を持ち、なおかつ直系王族の瞳を持つそなたは、あの時の余とステーシャの子だとしか思えない。だから、そなたを迎えに行ったのだ」
王は、話し疲れたのか、背もたれに寄りかかった。側近の男が、杯を差し出す。
シルヴィアは、しばらく考えていたが、意を決して顔を上げた。
「陛下、お言葉ですが...」
「ん、何だ?」
王は嬉しそうに身を乗り出した。
「私は皇女ではありません」
「!?」
王が驚いてむせた。側近の男が慌てて背中を叩いている。
「確かに陛下がおっしゃったとおり、私の母は子を身籠り、城を去ったのかもしれません。しかし、母が本当に不倫をしていたとしたら?」
「何を...!」
「たとえ陛下の子だったとしても、母は堕ろしたのかもしれませんし、別の誰かの子だとしたら?」
「そなた...!」
「その男がたまたま金色の瞳だったり、滅びたはずの一族の生き残りだとしたら?だとしたら、私は陛下の子ではありません」
シルヴィアの言葉に、王と側近は絶句している。
「失礼ながら...、陛下はもしご自分の子を見つけても、陛下が見るのはその子ではなく、その子を通じた母親では?」
「...っ!」
そこで口を閉じた。見ると、王の顔が青いを通り越して白くなっている。
王は、しばらくショックを受けたように顔を押さえたあと、顔色の悪いまま、シルヴィアを見た。シルヴィアは、顔を伏せたままじっとしている。
「つまり...、そなたは余の子ではないと?」
「はい」
迷うこと無く答えた。