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皇女は幸せを探す  作者: 彩夏
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2

そうこうしている内に、王都に着いた。初めて見る王都に、シルヴィアは目を丸くした。

数えきれないほどの人に溢れかえり、女性は流行のドレスを着ている。ドレスは、シルヴィアからすれば派手すぎないかと思うほど、きらびやかで、たくさんの宝石を身に付けていた。

唖然として見ている間に、馬車はいつの間にか城の前に着いた。見上げるほど高く、立派で、世界で一番美しい城と呼ばれるのもうなずけるほどだった。

当然ながら門も立派で、門番もいた。運転手が証明書のようなものを見せると、門番たちは慌てて頭を下げた。

なぜ頭を下げるのかわからないまま、城の中に入ったが、この時よく考えずについていったことを、後に後悔することになる。

馬車から降り、案内されたのは、とても立派な扉の前だった。知らない者でも分かる、ここは玉座の間だと。

「シルヴィア様、これから国王陛下にお会いしていただきます。くれぐれも失礼のないようにお願いいたします」

侍女が小声でささやき、兵に合図する。兵はうなずき、大声で叫んだ。

「シルヴィア・ルサンブール様のおなーりー!」

叫ぶと同時に扉が開かれる。

シルヴィアは、頭を下げ、うつむいた姿勢でそっと入った。事前に侍女たちに教え込まれた礼儀を思い出しながら、前に進んで行く。

ちょうど玉座の少し下まで歩くと、ゆっくり膝をおり、頭を下げた。

「陛下のご命令により、シルヴィア・ルサンブール、ただいま到着いたしました。遅れて申し訳ございません」

教えられた台詞を言い、そのままじっとうつむく。

「...良い、顔を上げよ」

そう言われて頭を上げた瞬間、シルヴィアは固まった。

玉座にいたのは、思っていた以上に若い男だった。三十代半ばと思われる男の顔は、男女問わず見とれるであろうと思わせるほどの美形で、短い黒髪は綺麗にセットされていた。

だが、シルヴィアが固まったのは、王の顔に見とれたからではない。

自分と同じ、金色の瞳。

突然、シルヴィアの頭の中に、侍女たちに教えられたことが思い出された。

王家の象徴は、限られた直系のみ受け継がれる金色の瞳だと。

思い出したくないことを思い出しつつ、王を見上げた。

王も、シルヴィアの顔を凝視している。そして、ポツリと「...ステーシャ...」と、呟いた。ステーシャは母の名前だ。その母を、王がなぜ知っているのか。

「そなたの母は、ステーシャという女性か?」

「はい、そのとおりでございます」

答えると、王は何かに耐えるように顔を押さえた。シルヴィアが困惑していると、側近と思われる若い男が、王に

「陛下、シルヴィア様が戸惑っておられます」

と囁いた。王は顔を上げ、シルヴィアに向き直った。そして、

「そなたの姓はルサンブールではなく、スチュワート・ル・クレシアだ」

と告げた。

訳が分からず、ただシルヴィアは戸惑った。スチュワート・ル・クレシアといえば、この国の王家の姓だ。まさかシルヴィアに、妃になれとでも言うのだろうか。

ふと、頭にある予感が思い浮かんだ。それは、妃になる話よりあり得ないこと。いやいやと、内心頭を振った。だが、嫌な予感はよく当たる。それがシルヴィアだった。

次の瞬間、王はとんでもないことを言いはなった。

「そなたはこの国の皇女であり、余の娘なのだ」

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