序章
初めての投稿です。温かく見守っていただけたら嬉しいです。
国の端の貧しい町に、一人の少女が住んでいた。
その少女は、住まいや身なりこそ薄汚れていたが、容姿はそうではなかった。
切れ長二重の金色の瞳に、筋の通った鼻、形の良い唇、卵形の小さな顔、透き通るほどの白い肌、何より目立つのが、金と銀が混ざったような美しい色をした長い髪。160はありそうな、14という年齢にしては高い身長が、大人びた顔をさらに際立たせていた。
少女の名はシルヴィアといった。誰もがふりかえるほどの美貌だが、その容姿とは違い、性格は少々変わっていた。
基本的に無口で無愛想、口を開いたとしても必要最低限しか話さない。
好みが偏っており、好きなものは博識と呼べるほど詳しいが、興味のないものは、基礎知識さえ知らない。
シルヴィアに親はいない。父親は知らず、母親は物心つく前に病で倒れて亡くなった。記憶がおぼろげだが、母は父はことを決して話そうとはしなかった。
母が亡くなり、数年間母方の親戚のほうで育てられたが、10を過ぎると家を出ていき、一人で暮らし始めた。
大叔母はもともと不仲だった姪の娘を押し付けられて、不満が爆発したのか、シルヴィアに虐待と等しい行為をしていた。
家の家事や仕事をさせることはもちろん、食事を与えなかったり、納屋に閉じ込める、時には暴力や肌に火を押し付ける、一度は閉じ込められた納屋に火をつけられて火事になり、死にかけることもあった。
母譲りの髪と美貌も、虐待のエスカレートにつながった。
今でも、シルヴィアの体は折れそうなほど華奢で、肌には火傷の痕がある。
おかげで、ちょっとやそっとのことでは驚かない図太い性格になり、それが良いのかどうかはわからない。
不幸中の幸いと言うべきか、その家の主人には虐待する度胸はなく、同情からか、当然ながら学校に通えないシルヴィアに勉強を教えていた。
主人は大学の教授を勤めるほどで、教える内容はレベルが高いものばかりだった。
学校で習う基本的知識から、大学で研究している内容、さらには未知の図解まで、ありとあらゆることを教えた。
シルヴィアが出ていったのは、一人で暮らして行ける年齢になったこと、大伯母に娼館に売られそうになったことが重なったからだ。
シルヴィアとしてはもともと出ていきたかったし、主人の計らいで遠く離れた町に住む所まで用意してもらえて、いいことづくめだった。
貧しくても薄汚れていても、暮らせればそれでいいのだし、金を稼ぐ方法は知っていたので、むしろ一人で暮らせることに感謝したい気持ちだった。
一人暮らしを始めて4年になった。
今日も1日暮らす銭を稼いで、シルヴィアは元気に暮らしている。