9、don't stop!
数日後、私は寝不足で授業中ずっとぼーっとしていた。
友達にも先生にも瀬那君にも心配されて、相当眠そうにしていたらしい。
ぶっちゃけ四徹はキツすぎる。イベランガチ勢の私にとって推しイベは死活問題だ。
オタクなのに三次元で恋をしていいのだろうか。というか、なんだかぐるぐる思考が回り続けている気がする。
どっちにしろ、分からないのだ。結局自分が何をしたいのか、何者なのか。
もう、本当に。
分からない。
***
瀬那君と付き合って3ヶ月が経った。この時期になると雪がちらほら降ってきたりする。
廊下を歩く足音は私の音しか聞こえない。他の運動部の活発な声が聞こえてくるが、今の私にはそれすらも心地いいと勝手に思っていた。
今日は部活がある。週2〜3日しかない部活なのだが、私は基本的に毎日部室に向かっていた。
部長が引退して、なぜか私が部長に任命された。だからなのか、私は放課後に部室に赴いていた。
精神的な辛さからは逃れられたけど、少し腑に落ちなかった。納得出来てないのだろう。まあそのうち解決できるしなんとかなるでしょ。
適当なことを思っていたら、後輩がやってきた。そしてぞくぞくと部員達が部室に入ってきて、私に挨拶してきた。
「なあ伶菜、疲れたんだけど。お菓子ない?」
「あるに決まってるじゃん。私が持ってこないわけがないでしょう?」
「なんでそんなに偉そうなの……」
宏大はげんなりしてそういった。まあ、私ってこういうキャラだからね仕方ないね。
最近まじで頭おかしいキャラで通ってるから、変えるにも変えようがないし、変える気もさらさらない。
「伶菜大丈夫なの? やばいよ?」
結論。
私、大丈夫なんかじゃない。
***
キラキラした世界に憧れていた。
小さい頃、ずっとプリキュアやアニメが大好きだった。
あの頃から、ずっと二次元が大好きだった。
だから、男の子に結構喋りかけられるけど、全然話せなかった。というか、あまり興味がなかったのだと思う。
ずっと二次元が隣にいて、二次元の中にハマりこんで、二次元に惚れて、初めて好きになった、二次元。
これからもずっと変わらない。けど、変わらないと、いけない。
好きのままで居続ければ、瀬那君にもきっと迷惑になる。
でもこれからだって、私は二次元が大好きだ。
だから……。どうしたらいいのか、分からない。
けたたましい音が鳴って目を覚ますと、いつもの天井が目に入った。起きて顔を洗いに洗面台へと向かう。
……うん。いつもの顔だ。さっきまで変なこと考えてた気がするんだけど…………。
気のせいか。気にしない気にしない。
リビングに入ると、廻斗は朝食を作っていた。こいつホントに男子かよ……。私より女子力高いじゃん。
まあ元々女子力皆無の私はもうね、終わってる。
にしても廻斗はホントにいい弟だ。私とは違う。
イケメンだし、料理できるし、勉強できるし。
私とは違って高スペックだ。その才能くれ、まじで。
私は、彼と違って、本当に何も知らない。
知っていたつもりで、理解した気になって。
そんなのただの、欺瞞にすぎない。
「姉ちゃん、なんか元気ないね」
廻斗にそう言われた。そう見えるのだろうか。視線でそう伝え、伝わったのか、廻斗はこう答えた。
「なんか、姉ちゃんじゃない」
「は、え? 何言ってんの?」
「だって、姉ちゃんが違う人に見えるから」
そんなこと……、あるのだろうか。
物事の本質なんて結局目には見えず、ただ人の心にしかないものだ。
それを廻斗は現実に、今ここにあるのが海ノ原伶菜ではないと、そう言っている。
廻斗はカッコイイが、なんというか、痛いところを突いてくるのだ。結構辛辣だが、それでも私は弟に助けられてきた。
……ホントにかっこいいじゃん。
姉じゃなかったらあんたに惚れてる。
「姉ちゃん」
唐突に呼ばれて、首を反射的にあげる。少し痛かった。
「ちゃんと、姉ちゃんでいろよ」
そう言われて、私は弟に微笑みを向けた。
瀬那君と今日も帰る。一日が終わるのが本当に早い気がする。マジ疲れた。
どうやら私は、瀬那君といるのが一番いいらしい。
アイデンティティークライシスになるところだった。ていうかなってた。
自分を見失わないために。
私は前だけ向いていく。
絵に書いたような、小説に出てくるような、漫画で活躍するような、そんなヒロインなんて、なれないのは知っている。
けれど、私はそれを目指してきた。その信念を忘れていたけど、絶対持っていた。
きっと自分を欠かさないように。
だから、私はもう瀬那君と二次元を愛する。
宏大も、瀬那君も、みかも、なっちゃんも。
分からなくてもいい。
見えない自分と、戦い続けて、いつか…………。
また、自分と周りと、向き合っていくんだ。
__終
お久しぶりです、青春夢依です。
令和が始まって10日経ちました。
小説書いてるのに少しでも時間が開くとどうしても分からなくなります……。
まあそれは結局自分への甘えです。
誰だって自分を甘やかすんです。どんな人でも。
でも、きっとそこに間違いはなくて、むしろ正しいんじゃないかなって。
間違ってていいんです。間違い続けるんです。世の中はそうやって出来てる。
僕はこの小説が好きです。自分で書いたのは拙いし、何言ってるか分からないし、支離滅裂だし。
でも、好きなんです。
物事の本質は目には見えない。
だから、それが大切なんです。きっと見えてしまったらそれを拒絶するから。
というわけで、「二次元一筋のオタクが三次元で恋に落ちることはいけないことでしょうか」お送り致しました。
ここまでご愛読頂いて、本当に嬉しい気持ちです。拙くて何言ってるか分からないけど、少しでも伝わればいいなって、思います。
それでは、次のお話でまた会えることをお祈りいたします。
本当に、ありがとうございました。
またね!