8、光と影の存在
私は、音ゲーをしていた。イベントスタートから5時間走り続け、現在のランキングは一位。今のイベントは推しのメインイベントだから、きつくても一位になりたいと思っている。
なので、石が溶けていくのは仕方がない。
「よし、あともうひと頑張りっと……」
ついつい独り言が漏れてしまう。今夜は徹ゲーになりそうだ。学校を休む覚悟で、私はイベントを走り続けた。
「……海ノ原、なんでアイス食べてるの?」
「……へぇんへい、ほのあふはへふよ。はいすよはいふいふうひほほほほうあはほほはほほほいはへん?」
もう9月の下旬なのに、くっそ暑い。学校でアイス食べちゃいけないとか聞いたことないよ。
「まずアイスを口から離しなよ。何を言っているのか全然分からないわ」
「ひやれす」
「はぁ……。まあいいわ。今回は見逃してあげる。けれど、次はないからね」
夕波先生は、ゴミもちゃんと捨てるんだぞーと言って去っていった。……かっけえな、なんか。入学当初とは印象が違うからなのかな。
てかホントに暑い。……そう思うと瀬那君も思い出しちゃう。
「ははふほなひはな……」
中庭のベンチは暑いけど待ち合わせにはちょうどいいのだ。だって結構目立つし。
まあそんなこんなで、私は瀬那君に告白して、付き合えることになった。
『好き。瀬那君、好きです』
『…………海ノ原、さん?』
『返事は、まだ、大丈夫! だから、あの、ゆっくり、考えて?』
途切れ途切れだった。あんなに緊張したのは初めてだから。
『……あのさ』
『ん……?』
『俺、さ』
『うん…………?』
沈黙が降りる。けれどこんな緊迫した沈黙はあまり経験したことがない。
『伶菜のこと、好き、だよ』
『…………え?』
今、名前…………、てか、え!?
『だから! 好き……なの』
照れる……。こんなすぐ、付き合えるの……?
頭おかしくなりそう…………!
てかおかしくなったおかげが変なことを口走ってしまった。
『えと…………、じゃあ、きょ、今日からよろしく、ね?』
『……うんっ』
えへへとはにかむように私は笑った。瀬那君も、笑った。
きゃーーーーっ! 思い出しただけで恥ずかしい……!
名前で呼んでくれるのも……、かなり、嬉しい。
幸せ絶頂の海ノ原伶菜です。急に自己紹介するスタイル。アホすぎて言葉が出てこない。
「伶菜、お待たせ」
「あ、瀬那君。用は済んだの?」
「うん。……行こっか」
私はこくんと頷いた。
制服デートとは、やはり緊張するものだ。半端ない。やばみ。てか今からどこ行くんだろ? なんも聞いてなかった。
「今日どこに行くの?」
「…………家じゃ、ダメ……? だ、誰もいな、いから…………」
「べ、別にいい、よ……」
まさかのお家…………、いや、待てよ?
え? 家?
歩くこと数分。案外近くに瀬那君の家はあった。
「上がっていいよ」
「お、お邪魔しまーす……」
結構広くて、なかなか趣のある家だ。こんな所に瀬那君は住んでるのね…………。
「俺の部屋、2階だから……行こ?」
「う、うん…………」
ドキドキしながらも瀬那君の部屋に向かった。カチャリとドアを開ければ、あまり部屋が汚くない、キレイな部屋が目の前に広がっていた。
ワンチャン私の部屋の方が汚いぞこれ。女子力皆無の私にとってこの部屋は結構理想だ。
「伶菜……っ」
「わっ……せ、瀬那、君?」
いきなり抱きしめられた。抱擁って……すごく……落ち着く……。
いつの間にか私の手も、瀬那君の後ろに回っていた。
そして、短くはない抱擁のあと、真剣な眼差しで瀬那君は私を見ていた。
「……? どうしたの? …………んっ」
顎のあたりに手が伸びてきたと思ったら、瀬那君の唇が、私の唇に重なった。キス…………したんだ、……私。
「「……………………」」
二人とも沈黙していた。……恥ずかしいよ、もうっ。
「「あ、あのさ……」」
同時に何か言おうとするとこんなに気まずいっていうか、なんというか……。よく分からない感情に見舞われる。
「あ、あのさ、……好きだよ」
ボンっと音がするぐらいに顔が真っ赤になったと思う。んもう!
「瀬那君、私も、大好きだよ」
驚いたように目を見開いたあと、照れたように斜め下を向いた。
えへへーと言いながら近づいて、私は瀬那君を抱きしめた。
何度もキスを交わした。何度も抱きしめ合った。瀬那君……大好きだよ。
「瀬那君、あの……そろそろ帰らないと……」
「……うん。分かった」
いつの間にか時計の針は6時を指していた。
「それじゃあ、また明日、ね」
「うん。またね」
そう言って私は瀬那君の家を出た。フラッシュバックしてきたんだけど…………! 恥ずかしい……!
そう思いながら帰途についていたが、どうやって帰ったのか覚えていなくて、家に着いたのは7時を過ぎていた。
興奮しすぎてこうなったのか……。もしかして、私変態?
翌日。興奮が冷め止まないまま学校に来たから、めちゃめちゃ心臓の鼓動が早い。猛ダッシュしたあと並に。
ドキドキしている私の心臓がまだ鳴り止まない時、私は別の意味でもドキドキしていたことを、この時はまだ知らなかった。
こんにちは。青春夢依です。
やっとのことで雪が降って、地面が凍ってるので滑りたいなあと思ってます(笑)。転ぶんですけど。
僕が小説を書き始めたのは中学生の頃だったと思います。ラノベとかめっちゃ読んでて、その頃から小説というか、ラノベを書くのが少しずつ面白くなってきた感じです。
でもいざ書いて書き終わって読んでみると全然面白くなくて、つまんなくて、幻滅してってなるんです。
それでも僕は、好きだから書くんです。好きじゃなきゃ書いてません絶対。僕の小説を読んで面白くなくても、つまらなくて幻滅して、読みたくないなって思っても、僕の伝えたい言葉が伝わればそれで満足です。
ってわけで、第8章、お届け致しました。
いかがでしょうか。楽しんでいただけましたか?
感想などをくれると嬉しいです。
それでは、また次回お会いいたしましょう。