7、シュピターレス・フェスティバル
宏大が帰ったあと、私は少しだけ会場に残っていた。
私は、宏大にもらったヒントをしっかり伝えようと、そう思った。
宏大とは友達、親友であることは確かだ。確かに好きだ。けどそれは恋愛感情ではない気がした。
私はきっと、宏大が言ってたように、瀬那君のことが好き、なのかもしれない。
私の勝負は、1ヵ月後に迫った、文化祭だ。
夏休み明け。
「あ……おはよ」
「おはよう、伶菜」
やっぱり落ち込んでいるのか、少しだけ元気がない。……大丈夫だろうか。
「宏大、今日一緒に帰ろうよ」
「? いいけど?」
普通の顔して言われた。いつも通りじゃない。
始業式が終わり、テストも終わると、いつの間にか放課後だった。
直ぐに支度して、宏大と一緒に教室を出た。
宏大と帰るのは久しぶりだ。それを思ってか、ほぼ同じ高さの目線がさっきから交錯している。
ねえ……宏大……。今君は何を思っているの……? 分かりたいよ……。知りたい。怖いんだよ。きっと。
「お前らー! さっさと準備しようぜ!」
「男子ちゃんとやりなよー?」
「俺達はいつだって本気だぜ!」
……アホか。
今は文化祭の準備中だ。こういうイベント事になると別のことを考えてしまう。
合宿中も思っていたのだが、こんなことをして意味があるのだろうか。全てに意味があるとは思えない。
だから、ゲームをすることも、勉強をすることも、何もかもが私の中で意味を失いつつあった。
何かが欲しい。ただ、それだけだと思う。きっとそれは見つけるのにとても苦労すると思う。誰かと当たった時、壁が今あるけどそれを壊せるような時。きっと答えは見出だせる。
「伶菜? 手が止まってるよ?」
「え……? ――あ、ごめん!」
「どしたの、ぼーっとして」
そう言ってくれたのは相岡夏芽、通称なっちゃんだ。
「ちょっと考え事してて……。大丈夫だよ」
「そう? ならいいけどさ。あたし仕事戻るから」
なっちゃんはそう言って去っていった。なっちゃんはいつでもそうやって心配してくれるんだ。
……さて、私も仕事に戻りますか。1週間後にはお祭りなのだから。
本日、9月某日は、桐高祭の日だ。
2日間あるんだけど、両日とも一般公開だ。
私のクラスはメイド喫茶なのだが……、嫌だ! 誰だよ! メイド喫茶って言ったやつ!
あ、宏大だ……。あのやろー……。
こんな恥ずかしい格好して『いらっしゃいませ、ご主人様♡ お嬢様♡』って言わないといけないなんて……。そんな屈辱的なことは無いよ!
恥ずかしい! 恥ずかしいよ! 手で顔を覆いたくなる! 緊張してすぎてハゲひゃいそうぢゃわ!
やばい。緊張しすぎて呂律が……。
「伶菜〜、仕方ないよ。諦めよう。現実は非情なんだよ」
「ダメだ……! 頼りにならない……! みかぁぁぁぁぁぁぁあ!」
「ん? 着るの別に嫌じゃなくない? みかはこういう格好すきだなー」
「「嘘でしょ…………!?」」
みかは相変わらず天然というか……、なんというか……結論、分からない。それでいいのか私。
くるりんとみかは回ってみせた。てか可愛いな。
「ほら! 早く行かないと始まっちゃうよ!」
もう、仕方ないわ……。私は覚悟を決めた。
絶対に、後悔はしない。
『16時になりました。一般来校者は速やかにご退校願います。繰り返します…………』
16時半から後夜祭になるため、校内アナウンスが流れた。
後夜祭はまあ……私は別に行かないからいいか。
これから始まる私だけの、海ノ原伶菜の舞台に、立つのだ。
屋上に向かうためには、とりあえず人目につかずに行動する必要がある。なるべく見えない場所を進もう……。
よし。人いないね。…………キョロキョロ。タタタタタ……っ。階段を駆け上がった。
屋上に着くと同時に、時計を確認する。今の時間は16時12分だ。約束の時間にはまだ早い。
緊張する……。こんなふうに宏大も思ったのかな……。少し走ったせいか、それとも緊張しすぎているのか、呼吸がまだ乱れている。
例えるならあれ。怒られるのかなードキドキみたいな。みんな経験あるよね? あれ? 私だけ?
私だけの特徴でした。てへっ。
そんなことを思って待っていると、もう16時26分だった。感覚的にはまだ2分も経ってないぐらいだが、こうも緊張するとこんなに早いものなのか。
すると、屋上の闔がガチャッと開いた。そして開け放たれた扉の前には、私が待ち侘びた人が立っていた。
屋上に南風が吹いた。その風を受けて、瀬那君は、私の方へ歩いてきた。
「ごめんね、後夜祭なのに来てもらって」
「それはいいけど……。用って、何?」
ドクンドクンと、鼓動がいつもより早く進む。喉まで出かかっている言葉は、早く先に進ませろと急かしているようにも受け取れた。
「あのね、瀬那君。私、ね」
「うん」
つっかえながらもちゃんと伝えよう。そう思った。絶対後悔はしないって決めたんだ。
「好き。瀬那君、好きです」
こんにちは。青春夢依です。
冬の涼しい風に当たりながら、フレーズ考えてると結構いいのが浮かんだりします。
だから冬は好きです。でも寒いので嫌いです。
これを矛盾と言います。これで一つ知識が増えたと思います(こんなんじゃ増えない)。
人というのは、文明を開花させ、自分たちの生活を便利にしてきました。ですが、それでいいのでしょうか。
それが続いて苦から逃れ続けようとしているのではないですか? 僕は、この便利な世の中に疑問が沢山あるんです。
調べたって出てきません。つらみ。
だから、答えは自分で見つけるんです。それが大切なことだから。
さて、第7章、お届け致しました。
いかがでしたか? 楽しんでいただけたでしょうか。
まだまだ続く、伶菜達の青春。
読んで下さり、ありがとうございます。
感想などをくれると嬉しいです。
また次回お会いいたしましょう。