2、山下宏大と海ノ原伶菜の出会い
桜の花が散り乱れる中、私は桐ノ舞高校の入学式に行った。見知らぬ顔ばかりで、とても新鮮な気持ちだった。
オタクがいなかったらどうしよう。そんなことを私は思っていた。
教室に入ると、やはり同じく中学の子と一緒なのか、皆お喋りをしている。私の中学からは、私しか来ていない。
自分以外のネクタイや制服は輝いて見えて、私の制服が少しだけ燻って見えてしまった。惨めになる。楽しい高校生活を送りたい。それが私のただ一つの願いだった――。
「ねね、あれってもしかして海ノ原伶菜って人じゃない?」
「あー、片葉中の? なんでこんな遠いところ来てんの?」
ふと、そんな声が聞こえてきた。私の中学は、山形県内でも結構有名な学校だ。なんかの噂でも聞いたんだろうか、私の名前も有名になってるらしい。……はっ!? これってもしかして私スカウト受けるんじゃないの!? やだサインとか考えてないよ……。
なんてそんなわけはない。悪名だかかったのだ。
「確かあの子、片葉中の番張ってたてたんでしょ?」
「なんだっけ、オタク番長だったっけ?」
「ネーミングセンス皆無じゃん」
けらけらと高らかに笑う2人の女子。事実、私は番を張っていた。けどたかがそれだけの話。別に喧嘩とかしてたわけではない。ムカつく奴らを全員叩きのめしていたまでだ。勿論、言葉の暴力というもので。
しかしまあ、教室の雰囲気はあまりいいものではなかった。初日からだいぶきつい。
私は気を紛らわしたいがために、教室を出てトイレに向かった。
入学式終了後、担任である夕波先生は、とても簡単に話を終えた。そんなに短くていいんですかね。いいんでしょうね。
まあでも、最初のような雰囲気からは脱した。とりあえず、オタ活したいです。
ホントに普通の生活させてよ……。
終わったと同時に家に帰り、部屋に篭ってゲームに打ち込んだ。
入学式から数日後、私たち学年はテストを受け、2週間後にテストが返ってきた。私の成績は五教科全て一位。ゲームに打ち込んでても私は成績を落としたことはない。
それを受けてか、私の周りにめちゃくちゃ人が集まって、点数とか順位を確認していっている。とりあえず、離れて欲しいな……。暑苦しい……。
「海ノ原さん、数学教えてよ!」
「え、うん……いいけど……」
「私もいい!?」
「我も頼めるか」
「あの僕も教えてもらっていいですか?」
なんだろう……。すごく教えて欲しいって人が多いんだけど……。
それでも存在が認められたのは存外初めてかもしれない。ちょっと嬉しい、かな……。私ったら現金な奴だなと我ながら思った。まあでも満点ではないのもあったから悔しさもあった。
そんなことを口に出したらそれこそハブられる……と思い、私は喉まで出かかったその言葉を飲み込んだ。
すると、女子生徒がこんなことを言った。
「そう言えば、学年二位の人確かオタクだよ」
それを聞いた瞬間、私はガタッ! と席を勢いよく立った。
仲間発見……!? 私はその人と友達になりたいと思った。名前も知らないのに。
「その人のクラスと名前は!?」
「えっと……確か……A組で……」
「名前は、山下宏大だよ。私同中だったから知ってるんだ」
私はそれを聞いて、すぐさま飛び出したい気持ちを抑え、脳内にメモした。とりあえず、後で凸ろう。
放課後。私は大急ぎで帰りの支度をし、バッグを肩にかけ、教室を飛び出した。
目的地はA組だが、山下君の行動は分からない。だから帰りのSHRが終わったすぐの時間帯なら教室に残っている可能性が高いと睨んだ。
A組に着き、私は目の前の女子に、山下君って人いる? と聞いた。その子は、今あの席でゲームしてる眼鏡の人だよ、って教えてくれた。ありがとう、とお礼を言って眼鏡男子に近づいて行った。
「山下君、私と友達になってください!」
そう、私は山下君に言った。かなり大きい声で。すると彼はイヤホンを外し、私の顔をじっと見つめた。
「…………誰?」
「私、海ノ原伶菜! 伶菜って気軽に言って! あの、テスト、二位なんだよね?」
言うと山下君は、ピクリと眉を釣りあげた。
「海ノ原さん、だっけ。あんた、一位なの? そうじゃないなら話しかけないでくれる」
「私一位だよ! ほら!」
と言って私は紙を出し、山下君に見せた。山下君は目を見張り、こう言った。
「仲間を発見した! 俺もう死んでいい!」
……………………は?
「俺は噂に聞いていた……っ! 一位の人は俺と同じオタクだと……!」
あー……なるほど……。
「もちろん、友達だ。盟友よ。共にこれからもオタ活をし続けようではないか!」
なんかすごく話がぶっ飛んだなあ……。でも目標は達成した。よし。放課後毎日、A組に来る。それが次の課題だと心に留め、私は意を決して、山下君にこう伝えた。
「今日、一緒に帰ろ!」
山下君はポカーンと口を開け、カタカタと口を動かした。その後、こくんと小さく頷き、AEONで語り尽くした。
その後も結構一緒に帰ったり、色んなことを語った。いつまでも宏大とは親友で居たいと願った。
ゲーセンとかアニメイトとかカラオケも行ったし、なかなか青春してるなぁ……と我ながら思った。
とりあえず、宏大はいいやつ。ホントに。
こんにちは。青春夢依です。
冬になると手がかじかんでゲームでミス連発して死んでいくのが音楽ゲームのあるあるです。
まあ僕自身、結構やってるので、色々苦悩はありますね……。分かる人にはほんとに分かるよ……。
てなわけで、第ニ章、お届け致しました。いかがでしたか?語彙力欠如してるのでもっと増やしたいと思ってます(泣き目)。
読んで下さり、ありがとうございます。
また次回お会いいたしましょう。