1、理想と現実の融合
私は、音ゲーをしていた。イベントスタートから5時間走り続け、現在のランキングは一位。今のイベントは推しのメインイベントだから、きつくても一位になりたいと思っている。
なので、石が溶けていくのは仕方がない。
「よし、あともうひと頑張りっと……」
ついつい独り言が漏れてしまう。今夜は徹ゲーになりそうだ。学校を休む覚悟で私はイベントを走り続けた。
翌日の放課後。夕波先生は私を職員室に呼び出した。今すぐイベランしたい。早く話が終わらないかしら。そんなことを思っていたのだが、現実はそんなに甘くない。
「海ノ原さん、授業中は寝ちゃいけないって言ったでしょう?」
「すみません……。昨日寝てなくて……。でも悪気はないんです! むしろ善行したと思ったまであります!」
「昨日の夜、何してたの?」
笑顔が怖いです! 先生!
「推しのためにイベランしてました!」
「どうしてその時間をあなたは勉強に使わないのかしら……。成績はいいのに……」
先生の言う通り、私は結構この偏差値の高い学校の中、全てのテストで1位を取っている。意外と勉強してるんだよ? 偉いでしょ? 褒めてよ褒めませんよね知ってました。
「まあいいわ。今後授業中は寝ないでくださいね」
分かりましたと答え、私は職員室を出た。
授業中寝れないならイベランしたい。出来ないならアニメ見たい。でもそしたらスマホ奪われるんだよね……。スマホが奪われたら私は死ねる自信がある。
とりあえず早く帰ろう。そしてイベランしよう。そう思って廊下の角を曲がったのだが――。
「ったあ……」
誰かとぶつかってしまった。
「あの……大丈夫ですか?」
「あ、大丈夫、です……。すみません」
反射的に謝った。顔を上げると、見るからにイケメンだ。あれ、この人同学年なの? 内履きをちらりと見ると、私と同じだ。
じゃ、と軽く会釈されて、彼は去っていった。
少女漫画によくある、「廊下の曲がり角で衝突して転倒→事故でキス」なんてのは、結局のところ三次元では起きないのである。二次元のことは所詮二次元なのだから、三次元でなるんじゃないかとか変な期待はしないことにしている。私だってそういう所は弁えているつもりだ。
私は大急ぎで教室に向かい、即行で帰途についた。
家に着くなり、私はスマホを取り出す。すぐさま機内モード、ナイトモードにして、充電器をぶっさす。サイレントモード解除。アイロク(アイドルロックの略称。私がイベランしている音ゲー)を起動し、即スタート。集中力を滲み出して私はひたすらに譜面を叩きまくった。
3時間後、軽食をとるために一階へおりた。冷蔵庫の中に食べ物をストックしておくのが私のやり方だ。
今日はプリンを選んだ。甘いの好き。大好き。ないと多分死んじゃうまである。
そんなどうしようもないことを思ってプリンを食べている間、今日廊下の角でぶつかってしまったイケメンを思い出してしまった。
あのイケメン何組なんだろう……。クラス、聞いておけばよかったな。あと名前! 軽く後悔した。
……はっ!? これってもしかして運命の赤い糸……? やだ……私ったら……お・と・め・っ!
うん。もうこんなの考えてる時点で既に矛盾。アホかって。
一人で勝手に盛り上がっていたら、弟が部屋に入ってきた。
「姉ちゃん、何してんの。おかしな人だよどう考えても」
「おかしな人って何よー! 元々おかしいから何も言えないけどさ……」
「んで、何してたの?」
ちゃんと聞いてくるあたり弟優しいな。ここは真面目に答えておこう。
「廻斗には分からないよ多分」
ドヤ顔で言ったら、うわぁ……うっぜぇ……みたいな顔された。そんな顔したらかっこいいお顔が台無しよ?
まあ別にいい。私は弟に「まだやることあるからじゃあね」と言って、部屋を出た。今は夜の七時。まだまだ走りまくれる。石溶かして走りますか……。
そう思って、私はイベランの続きを始めた。
***
翌日、私の所属する2年B組は、朝から喧騒に包まれていた。
「伶菜、おはよう」
「あ、宏大。おはよう〜」
前の席の宏大は、いつも通り私に挨拶してきた。
彼は私と同類、つまるところのオタクだ。ただ、ジャンルとしては、2.5次元なので、男子にしては珍しいと思う趣味だった。
「ずいぶん眠そうだよね。またゲームしてたの?」
「ご明察! さすがだね宏大!」
「眠そうなのにそんな元気はどこから来るの……」
宏大は呆れたように頭を垂らした。ホントだよ。私も分からないわ。
「あ、ねね、宏大」
私はどうしても宏大に聞きたいことがあった。多分知っているだろうと思って。
「ん? どしたの?」
「あのさ、この学年に、転校生って来た?」
どうしてもイケメンを知りたい。あの人去年はいなかったはずだ。
「あ、うん。来たよ。それがどうかしたの?」
「その人、何組!?」
「えっとねえ……確か、E組だったと思うよ」
ほぉ……。案外近いじゃないか。ダメもとでもう一歩踏み込んでみた。
「名前、知ってたりしない?」
「うーん……瀬那…………一希、君……だったかな……。ってあれ? なんでそんなこと聞くの?」
言われてみれば、なんで聞きたいと思ったのだろう。そう宏大に問われて至極当然だ。……私らしくもない。
「伶菜? どしたの?」
「ううん。なんでもない。ただ、気になっただけだから。気にしないで」
宏大はそっか、と答え、私の目をじっと見始めた。
なんだか気恥ずかしくて、私は思わず目を逸らしてしまった。
「いや……なんか、仲良くなった時のことを思い出してさ」
「あー……あったね。あんなことも」
すごく懐かしい。とても心に残った出来事の一つだ。
私は、その事を思い出して、笑ってしまった。
こんにちは。青春夢依です。
今は冬です。なんで春のお話書こうと思ったんですかね。気分です。私服なくて困ってます。でも炬燵でぬくぬく暖まれるのでそこはいいですよねぇ……。
世の中のオタクって気持ち悪いイメージとかあると思うんですけど、イケメンのオタクとかたくさんいるんですよ。冬コミ、修羅場とかになって人が多いけどあそこはきっと酔わないと思います。行ったことないんで分かりませんが。
自分の語彙力のなさに気付いて悲しくなりますが、小説書くのは楽しいですよね。
ってわけで、「二次元一筋のオタクが三次元で恋に落ちることはいけないことでしょうか」お届けいたしました。まだ第一章なので、これから頑張って書き終えようかと思います。更新は適当なので、一週間ぐらいがメドなのかと思ってます!
読んで下さり、ありがとうございます!
それでは、また次回お会いいたしましょう。