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エルロワーズの森と黒き竜  作者: 山川コタロ
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ここで少し更新を中断させて頂きます。なるべく早く再開する予定ではありますのでよろしくお願いします。

「ほんなら、報告をする前に……先にみんなに紹介だけしとこか?」


 クーロン商会の会議室。

 その部屋に今日は大勢の人数が集まっている。

 オレの眷族の子供達は勿論、今日はコイナさんやガラフにカイン。エリーゼも集まっている。

 さすがに座る順番がマズイので、今日は円卓ではない。

 オレを上座に、その両脇に立つラウとクロム。

 そしてオレに近い席から序列順に座っている。

 長いテーブルを挟むように、眷族達が向かい合わせに座っている。

 そして下座にコイナさんエリーゼ。

 一番下座がガラフとカインだ。

 しかし全員が向かいの席の相手の顔は見ていない。

 身体ごと上座に向いて、オレを注視している。

 こうも人数が揃うとお誕生日席は恥ずかしい。

 しかもオレの言葉や仕草を見逃さないよう、熱い視線を向けられると余計に気恥ずかしい。


「新しいレイの子供のロッテや。何人かは顔を知っとるやろうけど、まぁみんな仲良うしたってや?」


「ロッテよ。よろしく。……それから私はアイツの子供になったつもりはないからッ!」


「……アイツって誰の事なのです?セシリーの聞き間違えなのです?」


「……私もそう聞こえましたけど。まさかレイ様の事ではありませんよね?」


 ……始まった。

 こうなるとは思ってたけど……。

 ほら?出番だぞ?ラウ?


「二人共いいじゃん。レイがいいって言ってるんだからさぁ~。それとも二人はレイの言う事が聞けないって言ってるのぉ~?」


「あら♪メアはレイ様がそのような呼び方をされても平気だと仰っているのですか?レイ様はお優しいので許されていらっしゃるだけで、それを嗜めるのも私達の役目だと思うのですけれど♪」


「みな止めんか。若様とラウ様の前じゃぞ。それ以上の無礼はワシが許さん。それでもまだやりたいというならワシが相手になってやろう」


 コツンッとキセルを鳴らしてクロムがみんなを睨み付ける。

 その迫力に誰もが口を閉ざす。


「ホンマはキミの役目なんやけどな?」


 分かってるからそんな顔で見んな。

 どうにもならなそうだったら言うつもりだったんだから。


「私は一応アイツ……レイの妻になるつもりでここに来てるのッ。だから口の利き方を変えるつもりはないわッ」


 さすがにみんな絶句している。

 ロッテを庇ったクロムでさえ開いた口が塞がらず、ポカーンとしている。

 ラウにいたっては頭を押さえて、首を振っている。


「ほんっとうに……私の耳がおかしいのか……あなたの頭がおかしいのか……。これ以上はレイ様の前とはいえ、我慢できません。あまりに身の程知らず。レイ様の優しさに付け込んだその傲慢な態度。もはや許せません。私が首を刎ねて差し上げます。そこに……いえ動かなくて結構ですね。そのままそこにいなさい」


 ルナの手からアトラナートの糸が放たれる。

 瞬時に部屋を糸の結界で覆いつくし、ロッテの首にはキラキラと糸が絡みつく。

 あの白魚のような指を後一センチも動かせばロッテの首が胴体からキレイに離れる事だろう。

 

 しかしその指を引き金を引くように動かした瞬間、ルナの糸が一瞬で燃え尽きてしまう。

 ロッテの魔法だ。

 いくらアトラナートの糸が炎に弱いとはいえ、ルナの糸を焼き尽くすなんて……。

 しかもいつ魔法を発動させたかも分からない程滑らかな術の発動だった。

 微塵も身体を動かした様子もなく、よくあそこまで無拍子で魔法を放てるモノだ。


「……いいでしょう。少し本気で相手してあげます」


「……向かってくるなら私も容赦しないわよッ!」


 睨みあう二匹の獣。

 一触即発の空気の中、人間のみんなは顔を真っ青にしてそれを見つめている。

 しかしさすがにウチの子供達だけはのほほんと興味なさ気に構えている。


 これがありふれた光景だって事も問題あるとは思うけど……。




「二人共いい加減にしろッ!それ以上はオレも怒るぞ!」


 オレの一声で二人だけでなく、その場の全員がオレに頭を下げる。

 さすがにこれ以上はオレも見過ごせない。

 

「身内で殺し合うなんてバカな真似は二度とするなッ!やりたいなら森から出て勝手にしろッ!ただしその時は二度と森の中に入れないと思えッ!外の魔物になるなら……今度はオレの敵だからな!その覚悟でやれ!」


 少し怒り過ぎたか。


 今度はウチの子共達まで顔を真っ青にしてしまった。

 ルナなんて怒られた瞬間からポロポロと涙まで零して頭を下げている。


 あぁ~これはフォローしてあげないと……。


 立ち上がってルナの目の前に歩み寄る。

 その気配に気付いたルナが身体をビクリッと跳ね上がらせ、さらの深く頭を下げた。

 まだ怒られると思っているのか、プルプルと肩が震えている。


「……ルナ?ルナがオレを思ってくれているのはよく分かったから。だからそんなに怒らないでくれ。オレは気にしていない。そうやってみんながケンカする方がオレは悲しいんだ。ルナは……みんなはオレの大切な家族なんだから……。なっ?」


 そう言ってルナの頭を優しく撫でてやる。

 柔らかいサラサラのシルクみたいにキレイな髪だ。

 

「ロッテもみんなと仲良くしてくれ。言いたい事は色々あると思うがケンカは御法度だ。分かったな?」


「分かったわよ……。私が……悪かったわ。ごめんなさい……」


「いえ、私もすいませんでした。先に手を出したのは私です。その罰は私が全て受け入れます」


 うん。お互いわだかまりがなくてなによりだ。


「ルナ。罰なんて与える訳ないじゃないか。ほんの少しカっとなっただけだもんな?可愛いイタズラやヤキモチと一緒だよ。それにいちいち怒るほどオレは小さくないつもりだよ?」


「……あれが可愛いイタズラなの?どう見たらそう見えるの?」


「どう見ても殺意の塊に見えたのです!」


「若様にしたらあの程度ちょっとしたヤキモチなんじゃろ?自分があの程度では傷一つ負わぬからってみながそうじゃと思われても困るのう」


 メア、セシリー、クロム。聞こえてるから。


「それからロッテ?改めてあれがコイナさんだ。血筋的には従妹になるのかな。仲良くな?」


「それはいいんだけど……なんであの子あんな顔と頭してるのよ?何かあった訳?」


「……まぁ色々な……」


 そこには涙目のふくれっ面でリンゴほっぺを膨らませたコイナさんが座っていた。

 頭にはトリプルアイスクリームみたいなタンコブをくっつけて……。


 オレから逃げ回っていたコイナさんの姿を見つけた後、ミケを呼び出し、二人揃ってこっぴどく叱ったのだ。暴れた理由もまぁ納得出来たので、ある程度で許したのだけれどその後がまずかった。

 事情を聞いたクロムが、コイナさんの……酒の買い出しなんかで商会を抜け出した事、さらに街で大暴れした事、あまつさえそれを隠して逃げ回っていた事に怒り、その罰として三つのゲンコツを頭に落としたのだ。

 それでコイナさんの頭にはトリプルアイスクリームが出来上がったって訳だ。

 さすがに少し可哀想になった。

 ミケは……同じくゲンコツを落とされたのにケロリとしている。

 それが余計コイナさんには不服なのだろう。

 

「さて、みんなに紹介も終わった事やし今回の報告といこか?」


 コイツ全然役に立たなかったな。

 サラッと流して、サラッと始めようとしてる。

 絶対厄介事だと思って逃げに徹してたよな。


「そうじゃのう。まずは被害報告と成果を発表するとしよう」


 クロムはそう言うけど、成果はともかくとして被害とかあったのか?

 みんな問題なさそうに見えるけど。

 メアの顔色が少し……悪いくらいか? 


「え~まず……何々?性悪が敵に翼をこっぴどく切り付けられた、か。うむ……被害は以上じゃな」


「なっ!?そんな事いちいちレイに言わなくていいじゃん!しかもなんで主観が入ってるんだよ!こっぴどくなんて誰が言ったんだよ!かすり傷にもならない傷で人の上げ足を取らないでよ!」


「いやいや、報告は正確にせんとな。今回敵に傷を頂戴したには性悪一人だけじゃしのう?かすり傷一つとはいえ戦場では命取りになる場合もあるのじゃ。そこはキッチリしておかんとな?」


 クロムの言う事はもっともだ。

 毒や何かで、かすり傷一つでも死に至る事だって十分に考えられるんだから。

 でもクロムのイヤらしい顔を見るに、ただメアをイジメているようにしか見えないけど……。


「メア?本当に傷は大丈夫なのか?少しでも違和感があるならすぐに言うんだぞ?」


「……レイの……みんなの前で……よくも……よくも恥をかかせてくれたね……」 


「……メア……?」


「……ぶっ殺してやるよぉッ!!絶対に許さないからッ!!」


 ガバッと泣き顔を上げると同時にメアの十字架が発動する。

 クロムを取り囲むように、その数十二体。

 メアが本気で子供達と戦う時の数だ。

 それ以上は威力も精度も下がるから全力で戦う時は十二体で抑えている。

 片やクロムもキセルをふかしながら、身体の周りに結界を張り巡らせる。

 態度こそ余裕を取り繕って見えるが、身体から発せられる魔力は本気そのものだ。

 クロムも本気でメアを相手取るつもりらしい。


 ……揃いも揃って……


「いい加減にしろッ!!さっきから何なんだ!!一体!!これじゃゆっくり話も出来ないッ!!」


「「……」」


 全く!!

 どうなってるんだ。

 

 うちは問題児ばっかりか。


「キミそっくりやな?」


「ラウも茶化すな!」


 今度から話し合いの席で武器と魔法の発動は禁止!

 というか今から禁止だ!


「二人共ごめんなさいはッ!?」


「だって……このおばさんが……」


「ワシは性悪から売られたケンカを買っただけじゃ……」


「ご・め・ん・な・さ・い・はッ!?」


「……ごめんなさい」


「……スマンかったのじゃ」


 オレに言ってもしょうがないだろう。

 突っ込む気もなくなるよ……。


「今から武器と魔法は禁止!破ったら……もう口を利かないからな!」


 みんなにはこれが一番効果があるだろう。

 おかげで全員が身震いして震えている。

 もう、ちょっとは反省させないとな。


「で、メアは本当にケガは問題ないんだな?ウソや無理はダメだぞ?」


「……本当に問題ないよ。その場ですぐに治ったし……」


 なら本当に問題なさそうだな。

 くだらない見栄で取り返しの付かない事にならないならいいんだ。


「よし。クロム、次の話に行ってくれ」


「うむ。次に成果じゃが……今回の若様の指令は出来るだけ静かに目立たないようにとの事じゃったが……?順に報告を上げるのじゃ」


 何か変な所を強調して言ってるよな。

 被害を出来るだけ出さないようにとは言ったけど。

 みんな顔を伏せてしまったし。


「まずはミケじゃな?」


「……問題ない。全てマスターの指示通り」


 いや、話を聞く限り大暴れだっただろ。

 手元の資料を見る限り、暗殺者全員殺してるよな。これ。

 

「ミケ……。この暗殺者を退治?したって言うのは?」


「……退治した。……なんの問題も起きなかった」


 後始末がずさん過ぎて街で大騒ぎになってるよな。

 オレの耳に入るくらい。


「……完璧」


「そ、そうか……完璧だったのかぁ……」


「……うん。完璧」


 普段は無表情のミケが、照れたように、はにかんで笑う。

 その瞳は透き通るような新緑色に染まっていた。

 あまりにも可愛すぎる。


 じゃ、じゃあ完璧だったと。


「レイ様はミケに甘いのです」


「ねぇ♪羨ましいわぁ♪」


 だって珍しくミケが働いたんだし、あんまりやる気を削ぐような事言いたくないじゃないか。


「つ、次は……ワシとセシリーじゃの。ワシ等も完璧じゃったから報告するような事はないの」


「そ、そうなのです!完璧だったのですッ!」


「……」


 えぇ~と報告書には……何々。

 クロムは聖域の警護で外に出ず、セシリーは森で大暴れっと。


「セシリー?この森での大立ち回りは何かなぁ~?」


「そ、それは同郷のフェンリルを見つけたので少し遊んだだけなのですッ!」


「フェンリルは遊ぶとみんな死んじゃうんだ?へぇ~?」


「そ、そうなのですッ!フェンリルは遊ぶと手加減が出来ないのです!しょ、しょうがないのです!みんな楽しそうだったから何も問題ないのです!完璧だったのですッ!」


 ふぅ~ん。

 それはずいぶん楽しそうだったねぇ~。


「で、この赤鱗のフェンリルはどうだったのかな?強かったのかな?」


「ちょー弱かったのですッ!」


「さすがセシリーだね!セシリーなら余裕だったんじゃないのかな?」


「ちょー余裕だったのです!あんまり生意気だったからぶっ殺してやったのです!…………あッ……」


 やっぱりね。

 別に怒るつもりはないんだけどね。

 ただ今後のみんなの役割に考慮しないといけないから一応ね。

 セシリーは単独で動くと暴走の可能性あり……か。


 セシリーは耳までしおれて俯いてしまった。


「でもよくやったよ。セシリー。これで森の東は攻略しやすくなった。それで赤鱗はどうなったのかな?」


「……それは分からないのです。満足したから帰って来ちゃったのです」


「赤鱗なら森の東から気配が消えたのじゃ。おそらく南。それも魔族領に近い位置まで逃げたと考えておる」


 南?ほとんど南東の魔族領って森から出ていってるのと変わらないくらいじゃないか。


「少し調査してみる必要があるけど、それならもうこの森はほとんど掌握出来たって事になる」


「うむ。ようやっとじゃ」


 これは後でみんなで宴会だ。

 みんなの慰労も兼ねて派手にやろう。


「さすがだな。セシリー。序列二位は伊達じゃないな」


「……ニシシなのです」


 うん。セシリーにも笑顔が戻ってよかった。


「では次じゃな。次は……」


「私ですね♪私も問題ありません♪三千の聖騎士団、全て殲滅いたしました♪」


 アステアさん。それは……問題ないって言えるのかな……。

 ほら?エリーゼとかポカーンとしてるし。


「レイ様の御指示。完璧にこなして見せました♪」


「う、うん。皆殺しにする必要はあったのかな……?」


「はい♪もちろんです♪これでアルべリアは大きく兵を失いすぐに行動を移せなくなりました♪これによって森の安全は守られ一気にアルべリアは国力を落とす事になります♪後はレイ様のお気の召すままになさればよろしいかと♪」


「あ、ありがと……」


 アステアって笑顔でもすげー怖い時あるよな。

 優秀なのは優秀なんだけど、人間に容赦ないっていうか、時に少しだけ優しくて、時に()()厳しいっていうか……。


「それでアステア?新しいマスケット銃の使い心地はどうだった?やっぱ良かったのかな?あれはアステアの翼と一緒でとても美しいから」


「ッ!!はい♪それはもう♪思わず試し打ちで的が足りなくなるかとヒヤヒヤしてしまいました♪やはり的が三千では少々物足りませんでした♪」


 アステア……。

 人間相手だとやり過ぎる傾向ありっと。

 これもダメじゃないけど、やっぱ任せるには問題あるよな。

 人間の国に使者で使わせても国ごと滅ぼしかねないし。


「次は……?」


「ボクだね。ボクも問題ないよ。完璧☆」


 うん。ケガして帰って来たよね。

 そんな強い相手じゃないはずなのに、慢心……だろうな……。


「メア?メアが強いのはよく知ってるけど油断はダメだぞ?やっぱりケガして帰ってくると心配になっちゃうからな」


「……うん。ごめんね」


「でも人間の勇者を討ち取ったのはさすがだったな。さすがメアだ」


「本当?もっと褒めてよ☆」


「ああ。さすがメアだ。自慢の息子だ。これからも頑張ってな」


「あは☆ボクもっと頑張るからね。見ててね。……あっそうだ!レイにお土産あったんだ!」


 お土産?

 近くにいたはずなのに何を持って帰って来たんだろう?


「これは……?」


「勇者の持ってた聖剣!アルデバランって言うんだって。二本に分かれるんだよ。これ」


 へぇ~。

 聖剣とかかなりレアなのかな?


「そ、それは確かにアルデバランです!本当にタウラスを倒したんですか!?」


「当たり前じゃん。レンジでチンで楽勝だよ☆」


 エリーゼの反応を見るに、これが聖剣なのは間違いなさそうだな。

 レンジでチンが何の事か分からないけど、お手柄だな。


「ガラフ?解析出来るか?素材や性質。なんでもいい。弱点なんか分かったら特にいい。預けるから好きに研究してくれ。最悪壊してもいいぞ」


「か、畏まりました!必ずや若の御期待に応えましょう。……いやしかし……まさか聖剣まで研究出来る日が来るとは……。さすが若。まさに王の中の王たる御方ですな」


 そんな言い方されるとむず痒いな。

 みんなもウンウン頷いてるし。


「そんなかしこまらなくてもいいよ。いい玩具が出来てよかったじゃないか。ラウもガラフに協力して聖剣の解析を手伝ってやってくれ」


「任せとき。何ならアレンジして量産して見せるたるわ」


 さすがラウだな。

 心強い。


「メアもお手柄だ。今後も期待してるよ」


「うん。任せて☆」


「後は……?」


「ボク等んとこやな」


「そうだな。連絡が遅れていたけどなんかあったのか?」


 ラウにしては珍しいから気になっていたんだ。

 コイツが失敗するとは思えないけど、ルナを一人で働かせていたしな。

 報告書にもラウの仕事については何も書かれていないし。


「さっきまで仕事しとったんや。おもろいで?今頃王都は大混乱のはずや」


「聞かせてもらえるか?」


 そうしてラウはオレに王都での仕事っぷりを身振り手振りを交えて聞かせてくれた。

 みんなの視線が微かに嫉妬に染まっていたけど、確かにそれくらい見事な働きぶりだった。




「……王を。さすがだな。誰にも見つからずたった一人を殺して晒してきたのか……」


 オレがドラゴンになって王都へ行ったなら、ここまでの成果は出なかった。


「いやぁ~。全部ルナのおかげやわ。あの子の情報操作があったおかげで効果が二倍、いや三倍や。ナビも完璧やったし、他に被害も出さんですんだ。なんやったらボクもいらんかったんやないか?」


 確かに。

 ルナの糸を使ってすぐに情報を拡散させたのはでかい。

 これでアルべリアは国王の死を隠せなくなった。

 おまけにフェイクの情報を流して、王族や貴族が疑心暗鬼になっているのも大きな成果だ。

 これでアルべリアはもう動けない。

 次の王が決まるまで身内で喰らい合うだろう。

 自分の国の経済が死にかかっているにも関わらず。

 ジークフリートとラウの策がピッタリはまった形だ。


「あのルナって子そんなにすごい子だったんだッ」


 ロッテもルナを見る目が変わっている。

 確かにそれだけの働きをルナはした。


「スゴイじゃないかルナッ!?よく人間を殺さずに我慢したね。おまけに一人でずっと働きっぱなしだっただろ?本当によくやったよ!」


「い、いえ。私は何も……」


「謙遜しなくていいよ!みんなには可哀想だけど、今回完璧って言える程の働きをしたのはルナだけだよ!それくらい自慢していい働きだったよ!」


「悔しいけどさすがルナなのです」


「ボクも頑張ったのに……」


「あらあら♪私達はレイ様と共にすごすというご褒美を最初に頂いたではありませんか♪」


「それはそうだけどさ……」


「……ルナすごい。……()()()()()()見直した」


 あ……やっぱりミケの中でもルナってそういう扱いなんだ……。


「うむ。さすがワシが育てただけあるの。これはむしろルナを教育したワシの手柄と言っても過言ではあるまい」


 過言だよ。

 お前なんもしてねぇーじゃねーか。


「あ、ありがとうございます!でも私は本当に何も……」


「いやいや。さすがルナや。ボクなんかなーんもしとらん。国王を殺すだけなんてここにいる誰もが出来る事や。あの情報操作はルナやないと誰にも出来ん。もっと自慢してええんやで?」


「ああ。本当にラウは役立たずだったからな。ルナを王都に一人で取り残すし、いいとこだけかっさらうし」


 ルナを一人にした時はどうしてやろうかと思ったけどな。

 余計ルナの優秀さが目立った結果になったな。


「アルべリアの王城に侵入して国王を暗殺なんて……誰にも出来ませんよ……。そんなスゴイ簡単みたいに言わないでください……」


「ああ。ホントだぜぇ。あそこの聖騎士は全員ロイヤルガードとかばっかなはずだぜ?ここの連中はどうなってんだぁ?」


 エリーゼとカインの言ってる事はしょせん人間にとってはって話だから。

 今ならエリーゼにだって出来ると思うんだけど。


「決まりだな。今回もっとも優秀な働きをしたのはルナだな。ルナ?何か欲しいモノやして欲しい事はないかい?出来るだけ応えてあげたいんだ」


「そ、そんな……。私には勿体なさ過ぎて……」


「いいんだよ。それくらいの事をルナはしたんだ。遠慮なく言ってくれ。じゃないとオレの示しがつかない」


 それなりの働きをした者には褒美を出してあげたい。

 ボーナスも何もないんじゃ働く意欲もなくなってしまうし。


「そ、それでは……大変厚かましいのですが……。……レイ様と初めて出会った頃のように一緒に眠りたいです……。抱きかかえられて森を駆け抜けてみたいです……」


 う、う~ん。

 ダメじゃないよ?

 全然いいんだけど、今のルナと一緒に寝るってのは……。


「も、申し訳ありません!出過ぎた事を言いました!今のは忘れて下さい!」


「いいよ。一緒に森に出かけてその後眠ろっか?それくらいなら大丈夫だよ」


「ッ!!!ありがとうございますッ!!」


「本当にそんな事でいいのかい?もっとなんか欲しい物とか、他に色々あるんじゃないか?」


「いいえッ!!それがいいです!それ以外ありえません!」


 年頃の女の子なんだからもっと他にあるだろうに。

 でもお父さん嫌いッ!とかの心配がなくて安心だよ。

 みんなスゴイ羨ましそうにルナを見ているし。

 みんなもなんかご褒美上げたいんだけど……。

 何にしよっかな。


「みんなも頑張ったから何か欲しい物やして欲しい事はないかい?ルナほどは聞いて上げられないけど」


「セシリーもレイ様と一緒に寝たいです!」


「ボクも!」


「そうですね♪ルナはさらにレイ様とのお出かけ付きですし、願いの半分の睡眠を一緒に取るという辺りは無難ではないかと……♪」


「……ミケも」


 そうかぁ~。

 半分ならみんなも納得だよな。


「じゃぁ久し振りにみんなで一緒に寝るか?ご飯も一緒に食べてお風呂にも入ろっか?ロッテの歓迎会と今回のお疲れ会もかねて、みんなでパーッと騒ごうな?」


「……えぇッ!?」


「えッ?ルナはイヤだったかい?」


「い、いえとんでもないです!すごく嬉しいです!」


 決まりだな。

 ルナとは今度一日かけて森を散策したらいいな。


「あんた……本気で言ってんのッ?鈍感とか言うレベルじゃないわよッ?もはや脳ミソついてんのって話よッ?」


「なんだよロッテ?ロッテの歓迎会も兼ねてるんだぞ?何か気に入らないのか?」


「……はぁ~……。やっぱり私あの子と仲良く出来そうだわッ。共に苦労する仲間として」


 苦労なんてかけてないのに……。

 やっぱみんなで食べるなら食事は何作ろっかな。

 出来るだけ豪華にしてあげたいし、みんなよく食べるから大量に必要だよな。


「よし!そうと決まればすぐに準備しよう!みんなは少しゆっくりしてくつろいでいてくれ!オレは先に厨房に行って用意してくるから!」


 そうしてみんながポカーンと驚いている会議室を後にした。


 ふんふ~ん♪




「……なっ?ホンマ大変やろ?あれ落とすの一筋縄じゃいかんで?」


「……むしろやる気が出て来たわッ!絶対好きって言わせてやるからッ!」


「私も負けませんから」


「それ全員そう思ってるよね☆」


「あらあら♪」


「セシリーはレイ様と一緒に入れるだけで幸せなのです!」


「……ミケが一番」


「ワシはの!ワシはの!あの目で怒られるとゾクゾクするのじゃ!引っ叩かれて踏んづけられた時など失禁モノじゃ!」


「それはクロム姉様だけなのでは……?」


「あらコイナ様もレイを好いておられるのでは?」


「エリーゼさん。私はクロム姉様ほど変態ではありませんから」


「若も大変だなぁ。まぁあの強さなら男じゃなくても惚れるってもんだよなぁ」


「まさにじゃな。若ならばそれもまた然りよのう。早く御子様が授かって下さるとよいのじゃが。このじい、全身全霊をかけてお育ていたしますのに」


「そんな話いつになるんやろな。みんな頑張って頼むで?」


「なんじゃお前様は反対するものじゃとばかり思っておったぞ?」


「なんでボクがレイの幸せを邪魔するんや。あの子が幸せやったらそれでええんや。ボクは」


「お前様も意地っ張りじゃのう?本当は寂しいくせに」


「はっ。好きに言っとたらええ。ボクはな……あの子の幸せだけを願ーとるんや」


 レイが去った後の会議室では相変わらずの会話が繰り広げられている。

 人数が増えた事によってそれはいつにも増して賑やかであった。

 そんな幸せがいつまで続くのかは誰にも分からない。

 永遠なんてどこにもないのだから……。

 そうして今日という日がまた終わるのだった。






































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