35
いつも通りの穏やかな日々。エルロワーズの森の魔力が影響しているせいか、オウミの街の気候も実に穏やかだ。
酷い災害を起こすような大雨や地震も起こらないし、実に安定した爽やかな天気。
にもかかわらずオレ達の心は天気ほど清々しくはならない。
正直、全てがあまりに上手くいかないからだ。
日々時間が過ぎていくにも関わらず、新しい街の建設は遅々として進まず、ジークフリート本人の情報がほとんど集まっていないのだ。
完全に情報を隠蔽して、手に入るのは街の噂程度の情報しかない。
アステア、ルナ、ラウ、この三人ならば多少マシな情報を共有しているのだろうが、不確定な情報が多いうえに、使われている暗号や隠語が多すぎるため今の段階ではオレの所に情報を上げて来ない。
これは眷族であるみんながオレに情報を隠しているというより、慎重に情報を集めた結果、誤った情報までオレに上げてエルロワーズの森の組織全体が混乱するのを防ぐ為だろう。
これが最もジークフリートの厄介な所。
ただ何の策もなく情報を隠すのではなく、重要な情報に紛れて偽の情報まで紛れ込ませてくる。
情報戦に関しては流石としか言いようがないだろう。
だからこそオレとラウは考えた。
そこまでして一体何を隠そうとしているのか?
それこそがジークフリートのアキレス腱になるに違いない。
『王国の怪物』とまで言われた大貴族と渡り合う為の鍵。
おそらく今のままでは武力を背景に、五分、または負けに近い条約を結ばされる事になるだろう。
それはつまりジークフリートもオレ達と敵対するような行動を取っていないとはいえ、何かしらの要求をオレに飲ます為に必死だという事。
殺す事も勝つ事も容易い。けれど、ネックなのは被害を出さずにという事。
そんな事が不可能なのはオレもよく分かってる。
それでも……誰も殺させたくないというのはワガママなのだろうか。
ハクを殺し、シェンメイを見殺しにした時に誓ったはずだ。
そんなバカで困難な道を進むと。
さらにオレ達を苛立たせるのが赤鱗の存在だった。
エルロワーズの森の東を拠点に、その居場所を掴ませない。
ラウやオレの眷族が出ていけばどこかに隠れ、引けばまた小競り合い程度に攻めてくる。
そんな膠着状態がずっと続いている。
大方、じれてオレが直接出張るのを待っているんだろう。
一度オレが直接攻め込むと言った時はラウとクロムに必死に止められた。
罠と分かっていて攻めるバカがどこにいるのだと。
ならウチの子を何人か連れていけばいいだろうと言ったら、それ自体が罠の可能性があると怒られた。
戦力を分散された所に『勇者』や『魔王』が攻め込んできたらどう対処するのだと。
返り討ちにして皆殺しにした所で、ラウの眷族であるハク達を殺したほどの連中だ。
その被害は計り知れない。
本当にイラつかせる奴らだ。
なら今はジークフリートに集中するべきだろうと。
キョウ、オウミ、しいてはアルべリア王国さえ潰せば後は順に滅ぼすだけ。
それまでの辛抱だと。
分かってはいるが我慢ならない。
魔族の連中の動きも気になる。
ラウは人間を使って魔族の動きを牽制していると言っていたが、一番不気味なのは魔族の連中だ。
数こそ人間に劣るが、その能力は油断出来ない。
魔物と変わらない強さを持ち、人間のように狡賢い。
それが魔族に持つオレのイメージだった。
一番動きが大人しいからこそ何を考えているのかが読めない。
いずれ魔王とかいうヤツとも接触する必要はあるだろうな。
魔王が何人いるかは知らないが、南を守護していたラウの眷族を殺した魔王は交渉の余地がないだろう。
必ずその行いを償わせる。
仇討ちというならハクを殺したという勇者もその対象になる。が、今も生きている可能性はそれほど高くはないだろう。
勇者とはいえ人間が百年以上も生きられる訳がないからだ。
それでも魔法陣を研究させているガラフのじじいの例もある。百年以上生きている可能性も否定できない。
特に魔力の大きなヤツほど長生きする傾向にあるのかもしれないのだから。であればハクを殺したほどの存在だ。それも考慮して情報を収集しなければいけないだろう。
ちなみにガラフのじじいは勇者についてはほとんど知らないらしい。王家や大物貴族が囲っているらしく、一般的には表に姿を現さないそうだ。
何らかの功績があった時は派手なお披露目をするそうだが、それも勇者本人かどうか疑わしいという事。
稀に目立ちたがりな勇者が現れる事があるそうだが、そういうヤツは大抵長生きしないらしい。
力量を過信し過ぎて自滅するか、誰かしらに暗殺されるとの事。
人間にとっては他国、又は敵対勢力にそんな武力がある事自体、脅威なんだろう。
やはり強い力を持つ人間は殺す方も殺される方もバカなんだと思い知った。
そしてさらにガラフのじじいからの情報だと、百年前にエルロワーズの森の南の守護者であるラウの眷族を殺した魔王は生きている可能性が高いらしい。
それどころか、五百年前のメアやラウの引き起こした大戦の頃から生きているヤツもいるかもしれないそうだ。
そんなヤツ長く生きているヤツが弱い訳がないし、ラウとメアの二人を恨んでいる可能性まである。
情報が入れば入るほど魔族や魔王といった存在も無視できなくなってきている。
なので、今は他の事は置いておいて、ジークフリートが探しているという白い大蛇の特定。
さらに、同じく何故か白い大蛇を探しているというカインのおっさん。二人が探す白い大蛇が同じかは分からないがその話を聞くため、カインのおっさんがオウミの街に到着するのを待っている状態だった。
オレ達なら散歩感覚で移動できる道も、人間であるカインのおっさんにとっては厳しいらしく、五日ほどかかるそうだ。
それでも早いというのだから我慢せざる得ないだろう。
その間オレはラウに言われた通り、冒険者として名を売るべく日々奮闘するのであった。
冒険者ギルドのいつもの受付で、キツネのお面を着けたまま依頼書を順に目を通す。
いつものカウンター、いつもの受付嬢。
受付嬢の名前はアンジー・フランクだと教えてもらった。
アステアの一件以来、アンジーはギルドの受付嬢として何かととてもよくしてくれている。
あの出来事の後、一度アンジーを連れてクーロン商会でアステアと会わせた。
もちろんヤタガラスの姿のアステアとだが。
時間的に解決が早すぎる気はしたが、ヤタガラスが思いのほか街の近くで隠れていた事にした。
初めはアステアの姿を見て怯えていたアンジーだったが、やがて意を決してアンジーはアステアに向かって、涙を流し謝罪としてアステアの家族の羽を差し出したのだ。
それをもって、アステアもアンジーからの謝罪を受け入れ、無事和解をしたのだった。
ちなみにその羽の代金をクーロン商会からアンジーに渡そうとしたのだが、いらないと固辞された。
なのでアステアが自分の羽を一枚、代わりにアンジーに渡し、自分の命の恩人に対するお礼だと言った。
ヤタガラスとはこちらの世界でも『太陽の化身』とも『太陽の霊長』とも呼ばれているらしく、その羽の守護の能力はかなりのモノだそうだ。しかもそれがオレの加護を受けたアステアのモノならその効力はどれほどになるのか想像もつかない。
アンジーの為に魔力を込め、もはやマジックアイテムといっても過言ではないアステアの羽を最初はアンジーも受け取ろうとはしなかったが、アステアからのお礼という事で快く受け取ってもらえた。
もちろんだがアステアが受け入れたのは、自分達に危害を加えずちゃんとした謝罪をした命の恩人でもあるアンジーだけであって、家族を殺した冒険者達を許したりはしていない。
アステアも今はエルロワーズの森の大事な時期だと分かっているので公に行動していないが、やはり時間が空くとカラス達に冒険者の事を調べさせているようだった。
オレはそれを止めるつもりもないし、むしろ頼まれれば積極的に協力するつもりだが、今の所そう言った頼みはないのでアステアの好きにさせている。
自分の力だけで仇を取りたいのか……。
とまあそんな訳でアンジーからオレへの信頼はすこぶる高い。
フランクさんと呼んだら、アンジーと呼んで欲しいと笑顔で返されたほどだ。
なので、今日も冒険者ギルドのいつものカウンターでアンジーと向かい合って二人で依頼書を眺めている。
子供達は結局誰も連れて来ない事にした。
一人を選べば誰かが拗ねるのは明らかだったし、ぶっちゃけみんなには悪いが、護衛とかオレには必要ない。
さらにオレがアンジーの受付にいる時には他の冒険者は誰も近寄って来ない。
仕事が楽で助かるとアンジーからは喜ばれ、他の冒険者からは嫉妬と恐れを含んだ目で遠巻きに見られている。
なんか、こっちの世界に来ても人間には避けられるんだな~。
なんて事を改めて実感した。
「レイ君。これなんてどうかしら?千日草の採取なんだけど……報酬もいいし、余分に採取出来てもまず売れ残る事はないわよ?」
「あっ。それなら今余分に在庫を抱えてるので今すぐにでも納品出来ますよ?」
「本当に!?とっても助かるわ」
アンジーの出してくれる依頼は基本的に採取が多い。
冒険者ギルドの受付嬢として、プロらしくオレに見合った依頼書を厳選してくれている。
この辺は一応オレがクーロン商会のお抱え冒険者って事になっているので納得はしている。
むしろクーロン商会絡みだからこそ気を使って採取の依頼書を出してくれているのかもしれない。
一般的な商会にとって、魔獣の討伐は素材が取れるからまだマシとして、盗賊や山賊の討伐なんて引き受ける価値がない。本来は冒険者ではなく騎士団の仕事だし。
それなら採取で貴重な素材を冒険者に持ち帰らせた方がよっぽど有益だ。盗賊を討伐する事によって荷運びの危険性が下がるというなら、お抱え冒険者の数を増やして護衛させた方がよほど効率がいいだろう。
しかしアルべリア王国の王都の情勢が不安定な為、盗賊や野党の類が増え、最近はこのオウミの街の近くにまでその数が増え始めてきているらしい。
さすがに騎士団だけでは対応出来ず、こうして冒険者ギルドにまで依頼が来る始末だ。
ん~。アルべリアの情勢が不安定なのもラウの仕業なんだろうな~。
「んっ……どうしたの?レイ君。何か気になる依頼書でもあった?」
一枚の依頼書を眺めるオレに向けて、アンジーは微笑みながら問いかけて来た。
ニッコリと微笑んで問いかけるアンジーに、少しだけ可愛いと感じてしまった。
営業スマイルではなく、本心からの笑顔を人間に向けられるなんて、一体いつ以来だろう。
小学校の時の担任の先生に向けられた以外、家族からも笑いかけられた記憶はないな……。
先生元気にしてっかな~。
オレもひねくれたガキだったから、一杯迷惑かけたっけ……。
「あ、ああ。すいません。それより……これ……」
オレから差し出した依頼書を見て、アンジーの顔色が曇る。
内容は討伐任務
魔獣カリラの討伐
難易度A
報酬金貨100枚
詳しい事が何も書かれていない。
普通誰が依頼したとか、どの素材を何に使いたいから納品してくれとか、報酬と素材の買い取り金額についてとか色々書かれているはずなのに、この依頼書には何も書かれていない。
「あ~それ?実は私の友達が頼んできたんだけど、訳アリの上、報酬が安すぎて誰も受けないのよ。素材もいらないから、ただ眠りの森にいってソイツを倒してくるだけだって。実際カリラの素材は高値で売れるけど、危険すぎてその金額じゃ誰も受けてくれなくて……」
「へ~そんなに危険なんですか?」
「そうね。難易度Aって事になってるけど実際はもっと困難ね。最近出たばかりの依頼書だし、私達も友達からの依頼書じゃ知り合いの冒険者に勧めない訳にいかなくて……」
どこか困り顔のアンジーは苦笑いを浮かべている。
しかし、頼んでもいないのにアンジーがオレに討伐依頼書を見せるって事はよっぽどだ。
つまりそれはアンジーも他の受付嬢達も冒険者に勧めているが、まだ誰も受けていないって事。つまりこの依頼は金貨100枚の報酬でも安すぎて、それだけ危険って訳だ。
金はともかく名を売るにはかなりいい依頼かもしれない。それはこの街の冒険者達がみんな知ってはいるが危険で手が出せない依頼。なにより訳アリってのも面白くていい。
「ダメよ!レイ君が強いのはよく知ってるけど、キミはまだ冒険者ランクがBになったばかりじゃない。それに言ったら悪いけど、この依頼はレイ君にもクーロン商会にも利益がなさすぎるわ。それでレイ君が死んだら意味ないでしょ」
普通はそう考えるよな。
依頼書をアンジーに渡そうとするとスゴイ剣幕で怒られた。
やっぱりアンジーはクーロン商会の利益だけではなく、オレの身体の事も心配して採取依頼を優先して回してくれていたんだろう。
ちなみにオレはここ数日で冒険者ランクをBに上げている。なので難易度Aの依頼も受けられない事はない。
あまりの依頼達成のスピードに、アンジーはオレがクーロン商会から素材を回してもらって依頼書の品を納品していると勘違いしているが、ちゃんとオレが自分で採取に行って、自分で採って来たモノだけを納品している。
ラウにもらった巾着を使えば、一度の採取で複数の依頼書の素材を取ってくるなんて簡単だったからだ。
「でも、誰もこの依頼を受けないのでは冒険者ギルドの信用も落ちてしまうし、アンジーの友達も困るのでしょ?」
「それは……そうだけど……。でもそれはレイ君が心配する事じゃないわ」
アンジーも中々に頑固だった。
でもそれは、それだけアンジーがオレの能力を過小評価しているとも受け取れる。
オレが名の売れた冒険者であったなら、アンジーも率先してオレにこの依頼書を頼んできただろう。
「この魔獣カリラと魔物ヤタガラスではどちらが強いですか?」
「そんなのヤタガラスに決まっているじゃない」
「じゃぁ大丈夫ですよ。オレはヤタガラスより強いですから」
それ以上はアンジーも何も言わなかった。
無事なアステアを見てしまったアンジーではオレの言葉を否定する事は出来ない。
ズルいやり方だとも思ったが、結果は上々だ。
しかし、冒険者ギルドの受付嬢であるアンジーには嫌われたくないので、なるべく早めに片付けてしまおう。
「でもこの依頼もおかしいですね。いつまでに討伐しろとも、討伐の証としてのカリラの素材の指定もないなんて」
「一応討伐期限はあるの。最初はそんなの無理だってギルドマスターも言ったんだけど……依頼主が聞かなくて……」
「へぇ~。期限はいつまでなんです?」
アンジーは友達の名前ではなく、依頼主と言った。
それはつまり本当の依頼主はアンジーの友達ではなく、他にいるに違いない。
訳アリっていうのはその辺の事情があるんだろう。
「後一週間よ……。でも、それを依頼書に乗せちゃうとますます誰も受けないからって、ギルドマスターが勝手に期限を削除しちゃったの……。ねっ?こんな依頼元々無理だってみんな思ってるんだから、やっぱり止めなさい?どう考えても準備期間がなさすぎるわ」
アンジーには悪いけど、これはこれでおいしいのでは……?
短い期限。安い報奨金。危険な討伐対象。強引な依頼者。それに反発するギルドマスター。
なにより誰がどう考えても無理ってのが気に入った。
どれほど強いといっても、白虎のハクや黄龍のラウ程強い訳はないだろうし、魔力探知を使えばある程度居場所は確認できる。
逆に魔獣が弱すぎると、魔力探知をかけてもどれがターゲットなのか区別が出来ない。
強い魔獣だというなら願ったり叶ったりだ。
「これ。オレが受けさせてもらいますね?」
陽気に言い放つオレの手から依頼書をひったくる様にアンジーが依頼書を取り上げる。
「もう!本当にどうなっても知らないからね!」
文句を言いつつもアンジーはちゃんと手続きをしてくれた。
プロの受付嬢で、友達の絡んでいる依頼とあってはアンジーも手続きしない訳にはいかない。
思えばアンジーのオレに対する態度もずいぶん砕けたモノになっている。
でもオレにはそれがとても嬉しく、オレも気を許せる関係なのだと感じてしまう。
だからこそアンジーの友達からの依頼も積極的に受けたいと思ってしまったのだろう。
「それから……訳アリって所。説明するわね。討伐を確認する素材が書かれていないのは……依頼者本人が同行して魔獣の討伐を確認するからよ」
「…………はぁっ!?」
思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。
「依頼者は私の友達だけど、キミに同行するのは二人よ。私の友達と友達が仕えている貴族の令嬢の二人。分かった?」
「な、なんで……」
「知らないわよ。だから私は止めときなさいって言ったでしょ」
どこか冷たくアンジーが言葉でオレを突き放してくる。
「最初にそこを説明してくれないと……」
「言いそびれた私も悪いけど、確認しなかったキミの落ち度でもあるわ。どうする?今ならキャンセル出来るけど?」
アンジーの友達はまだしも貴族のお守りなんてまっぴらだ。
何より貴族に顔がバレるのは出来るだけ避けたい。
プライベートでまでこのキツネのお面を着けっぱなしとか勘弁してもらいたい。
でもここでキャンセルするのも……。
「どうする?止める?引き受ける?ハッキリしなさい。男の子でしょ!」
ウンウン悩むオレにアンジーが強く迫ってくる。
やはりどこか依頼は引き受けて欲しくなさそうだ。
「……分かりました。引き受けます……」
それならさっさと行って、魔獣を狩ってしまえばいいだけの話だ。
他の冒険者と違って、オレは大仰な荷物を持っていく事もないし、仲間もいない。
最悪『爪』や『牙』を見られると困るので、簡単なダミーの武器くらいは装備しておこう。
「で、その同行者はいつ合流したらいいんですか?時間があまりないので、早めに出発したいんですが」
「そうね……。向こうはいつでも出発できるようにしてあるって聞いてるから、レイ君の準備ができ次第連絡するわ」
「そうですか。じゃあ今からでお願いします!」
「……はぁ!?い、今からって……」
今度はアンジーが素っ頓狂な声を上げた。
「オレは特に準備とかいらないので、今すぐで!」
「だ、だって、いくらこの街から眠りの森が近いからって、日帰りなんて無理な距離よ?野営の準備や装備の確認。対象の情報も調べないと……」
「問題ないです。これでもマジックアイテムも持っていますから」
「そ、そう?本当にいいの?連絡しちゃうわよ?本当にいいの?」
何度も確認を取るようにアンジーが聞いてくるが、オレの返事は変わらない。
カリムの居場所も今から念話でラウに聞けば問題なく、一直線に向かえるだろう。
「じゃあ、ギルドの二階に個室があるからそこで待ってて。すぐに依頼主に連絡を取るから。でも、本っ当にいいのね!?」
何をそんなに心配しているんだろう?
付き添いを二人連れて魔獣を一匹狩って来るだけ。
確かに貴族とか面倒くさいし、対象の魔獣カリムも危険なのかもしれない。
足手まといかもしれないが、オレなら特に問題なくこなせる自信はある。
「――?ええ。それじゃあ二階で待っていますから?」
「……分かったわ。じゃあ部屋に案内するから」
そういって二階にある一室に案内された。
部屋で依頼主を待つ間、ラウに念話をして魔獣カリラの居場所。その姿の特徴などを聞いておく。
ラウに言わせればカリラは全く強くないそうで、オウミの街から割と近い所に生息しているそうだ。
個体数もそこそこ多いし群れではなく単体で行動するようなので、簡単に狩れるとのお墨付きをもらった。
素材はそこそこ重宝するので、たくさん狩ったならクーロンでも買い取ってくれるそうだ。
今回の目的は金や素材ではなく、名声を上げたい為なのでさっさと依頼を果たして帰ってくるので、素材はまた今度って事にしておいた。
ラウと話をする限り、アンジーが心配する程の危険がないと判断できた。
後は同行者二人の心配だけ。
何が目的で討伐依頼についてきたいのか分からないが、出来るだけ相手にはしたくなかった。
そんな事を考えていると、部屋の扉がノックされた。
返事を返すとまずアンジーが部屋に入って来た。
丁寧な仕草でお辞儀をするアンジーは普段の態度と違い、まさにプロって感じでさすがだと感心した。
それからアンジーの隣には姿勢のよい女性が立っていた。
ショートカットの水色の髪に高い身長、細身の引き締まった身体。柔らかな表情をしているが、その動きはきびきびとしていて、さながら軍人のようだった。
女性は部屋に入りオレに気付くと軽く会釈をしてくれた。
ラウお手製のお面をしているにもかかわらず、ハッキリと認識してにオレに近く辺り、この女性が街の冒険者より腕がたつのは用意に想像できた。
「ちょっと、一人しかいないけど他の仲間はどこにいるのよッ!?」
強い物言いに女性の後ろを見ると、そこには栗色の髪をした中々性格のキツそうな少女が腕組みをして立っていた。




