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ぽわ~~~となって、うわ~~~~と動揺する私 6

 もともとタダが私の誕生にチーズケーキを焼いてくれる事になったのは、ケーキ屋をやっているニシモトの家に、母に言われて学校帰りに自分の誕生日のケーキの予約のために寄った時にタダも一緒に居て、その時はまだすごく好きだったヒロちゃんが、ユキちゃんの誕生日用にケーキの予約をしに来たという話をニシモトから聞いて、しかもユキちゃんの誕生日が私の誕生日とカブるという思いもつかなかったミラクルもあったからだ。

 そりゃあ私の事を好きだとも言ってくれていたけれど、それでもあんまり不憫に思えたからだと思う。


 「オレも食いたかったわイケメンパテスリーさんのチーズケーキ」とヤマダも言い、「オレも」「オレも」「オレも」と残りのコガ以外の3人が言い、途中から入ってきたヒロちゃんも「オレも!」と楽しそうに言った。

「あれすげえうまくできてたじゃん」と言ったヤマモトが私に言った。「タダがすげえ、いつになくテンション高げに自慢写真送ってきたし。大島に食わせるんだつって。オレだったら恥ずかしくてそんなんせんわ。だいたいケーキとか作れねえけど」

タダが教えたの!?



 「大島」とタダが言った。「ニシモトにほら、持ってきてくれたあのロウソクの礼言わないと」

「あ、うん!」そうだった。「忘れてたごめん…ニシモトわざわざありがと」

「おいおいおいおい」とヤマモトが言う。「タダ~~。なんか超彼氏気どりぽかったな今の言い方。聞いてるこっちが恥ずかしいわ」

「いいじゃんいいじゃん」とニコニコしながら言うヤマダ。「やっと付き合えるようになったんだから。めでたいじゃん」

「いや、」とヒロちゃんが口を挟む。「ほぼほぼ付き合ってるっぽいみたいに見えるけど、まだカレカノではない、みたいな、な?そんな感じよなお前ら」

「なんだそれ」とコガ。「どうしたお前ら?友達からはじめよう的なアレか?お前ら小学から一緒なのに友達からとか気持わりぃな」

「だいたいな」とヒロちゃん。「ニシモトもユズ好きだつってたよな」

は?


 「ヒロト!」と急激に慌てるニシモト。「おい~~~~!なんでここでそれ言い出した?中学のほんの一時期の事、今出すなや!みんな忘れてんのに!てかオレも忘れてたくらいだって。は~~~もうヒロト、バカかビックリし過ぎたマジで冗談止めに…」

「オレがな」となぜか嬉しそうなヒロちゃん。「ニシモトにダメだつってやったんだよなイズミ」

「ヒロト」とタダが注意するように言う。「もう仕事にもどったら?」

でもヒロちゃんは止めない。「イズミは小学からユズの事好きだからイズミの方が先だったからな。しょうがねえ」

「「「「先着順か!!」」」」とニシモト以外が突っ込む。



 …ヒロちゃん。ほんとになぜここでそんな事暴露した。ちょっともう~~~…ほんとかなニシモト。ウケ狙いで言ってない?

「大島」とニシモトが私を睨んで力無く注意する。「赤くなんなって。マジで感違いすんなよ?中学のほんの、ほん~~~の一時期だけの話だからな!もう~~~ヒロト~~~ほんとなんで今それ言い出したバカじゃねえのお前」 

いや感違いっていうか、ただビックリしたんだって。中学の時のどの一時期なんだろ。そんな素振り微塵も感じさせなかったじゃんニシモト。

 

 きっとほんのノリのつもりで言ったんだよね…と思いながらも、それでもちょっと、わ~~~、となる。だってニシモトが!

 …いや、わかってるけど。みんなが誰かの事好きって言い合うやつで取りあえず支障なさそうなとこ言っとこうみたいな感じなんじゃないのどうせ、と自分を納得させてなんとか平常心を装おうとする私だ。

「ちょっ…大島!」ニシモトが騒ぐ。「赤くなんなつってんじゃん!止めろ恥ずかしいから」

「なってない」と私は言うがまだちょっと動揺している。



 だってニシモトが私の事を…。

 いつもふざけて軽口ばっかり言ってるニシモトが?でもタダの次くらいにヒロちゃんが仲良くしてるよね。だから私にも割とよく話しかけてくれてた。ニシモトもヒロちゃんと同じように相手が女子でも男子でもほぼ変わらず軽い感じで喋るし、誰にでもまあまあ優しい。誰にでもまあまあ親切。でも時々、え?この人に?って感じの相手に人見知りするのだ。

「まあいいわ。ヒロトはバカだからしょうがねえ」とニシモトがちょっと諦めたように言った。「席もどろ。大島がオレを意識し過ぎたらマズいから。タダに恨まれる」

 ニシモト、おちゃらけてるけどやっぱ良いヤツだよね。こんな場所でのヒロちゃんの暴露に慌てながらも、自分も、そして私も気まずくならないように持っていってくれた。まあヒロちゃんの友達に悪いヤツなんかいるわけないけど。


 

 …と思いながらも5人がいなくなったらなんか気まずい。いても気まずかったがタダと二人きりの方が断然きまずい。それにジャージ5人組は完全にいなくなったわけではないのだ。元の席に戻って今度は遠巻きにチラチラ私とタダを観ている。しかも別ににやにやすることもなく、緩く、ほんとはどんな感じなんだお前ら、みたいな感じで見ている。

 見ないで欲しい!


 「タダ」とこっそりと呼ぶ。「見てんだけど、あっちからずっと」

 それに見ているのはジャージ5人だけではない。他のテーブルの女の子たちのグループがチラチラとタダを見ているのが私の目に入ってしまう。

「あ~~」とタダが言う。

「いや、あ~~じゃなくて止めさせなさいよもう~~」

「止めるわけないじゃんアイツらが。見たいんだろどんな感じか」

「もう…ヤダな、なんか…もう出ようよここ」

「オレは別に嫌じゃないけど」

「…嫌じゃないの!?」

「嫌じゃない」

「…」

 わ~~~、と思う。ダメだ私。これ以上赤くなるな!

 ハハ、とタダが軽く笑うので頬を両手で押さえる。赤くなってんのをバカにしてくるのかな…あれ?なんでタダもちょっと恥ずかしそうなの?やっと恥ずかしいってわかったの?

「今の、なんか…」とタダが少しニヤつきながら言う。「言い方が可愛かったな」

「は?」

「『出ようよ』って言う言い方」

 ガタっと立ち上がって、「バ…」と言いかけて、ヤバいみんなが見る!と思ってなんとか押さえてまた椅子にかけた。

 バカじゃないの!!



 「なあ」と向かいのタダが私に少し顔を近付けて言った。「ニシモト、良いヤツだよな」

「…うん」

「どう思った?」

「え?」

「ニシモトも大島の事好きだったってわかってどう思ったのかと思って」

「…」

「言ってみ」

「…なんでよ?」

「赤くなったし嬉しそうな顔したから」

「…」


 困ったところでヒロちゃんが飲み物を運んで来てくれた。

「おぅ待たせぇ~~~いたしましたぁ~~~~~」と変な抑揚をつけてタダの前にアイスカフェラテ、私の前にジンジャーエールを置いてくれる。そして一口ドーナツが5つ。チョコがかかっている。

「なあなあユズ」とヒロちゃん。「ニシモト、良いヤツよな?」

ヒロちゃんまで言い出した!もうニシモトの事はそっとしといて欲しい。

「…うん。でももう言わないで。なんかニシモトにも悪いから」

「ニシモトに悪いってどういう事?」とタダ。

「悪くはねえよな?」と、とぼけた感じで言うヒロちゃん。

ヒロちゃんがあんな事言い出したのが悪いのに。


 「ごぉゆっくりぃ~~~~どうぞぉ~~~~」と変な抑揚をつけて言いながらヒロちゃんが行ってしまうとまた気まずい。

 タダはアイツらに、私の事をカノジョ呼ばわりされていじられても全然嫌がっていなかったし、困ってもいなかった。

 それは私を好きでいてくれるからなんだよね?

 そして私も嫌がってなかった。

 それは私もタダの事を…




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