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ぽわ~~~となって、うわ~~~~と動揺する私 4

 

 「私ぐじぐじしてるよね?」と実際口に出してしまった。

「あ~~…」と言い淀んで、今度は「ん~~~」と唸るタダ。

 何唸ってんだ。

と、ちょっと睨んだらタダがちょっと笑ってから言った。「大島のそれは、それで大島のキャラに合ってるじゃん」

いや全然嬉しくないけど。

 コイツ…私の事小学転校したてから好きだったような事確かに言ったよね?


 「なんかな」とタダがちょっと笑って言った。「大島のぐじぐじの仕方はオレは好き」

「は?」

「だってオレも本当はぐじぐじしてるし」

「…そんな事ないじゃん。…タダは…転校して来たてはそうだったかもだけど、中学になった頃にはすごい変わってたよ。…それに大きくなったよね。また背が伸びたでしょ?こっちに来た頃は私の方が大きかったのに」

「ハハハ、なんか親戚のおばちゃんみてえ」

「図書室で何借りるの?本なんていつも読んでたっけ?」

「いや、…なんつーかホラ、ちょっと一緒にいたかったし」

「…」


 ふわ~~~~!!

 こっちは二人きりでソワソワしてんの出来るだけ出さないように頑張ってんのに何言い出してんだ!

「なんで」とタダがちょっとムッとして言う。「やっぱササキとかとだべってんのが良かった?」

「…そんな事は…ないけど」

ハタナカさんから脱出出来て助かったし。



 「ヒロトんとこの文化祭行こうって言ってたじゃん」とタダが言う。「やっぱニシモトとかジャージ着ていくって」

 ヒロちゃんのクラスは『中学のジャージカフェ』をするらしい。全員出身中学のジャージを着てカフェをするのだ。在校生たちも出身中学のジャージを見たら懐かしい感じがするし、他校生のお客も同じ中学のジャージ見たらきっと『おおっ』ってなるし、中学生が遊びに来ていたら先輩がいるんだなって嬉しい気持ちになれるからっていうコンセプトらしい。

「へ~~。タダは?」

「ジャージ?だってオレは大島と行くから。普通で行くけど。え?何?大島はジャージ着て行きたいの?」

「違うよ。そうじゃないけど…」

「けど?」

 タダやヒロちゃんと仲良かったニシモト達はたぶん男子だけ連れだって行くのに、タダはやっぱり私と二人で行く気なんだ。

 …それってデートだよね?


 ちょっと恥ずかしいけど聞いてみる。「なんかみんなに言われたら嫌じゃない?」

「なにを?」

「ニシモトとかほら、すぐからかってきそうじゃん。私とタダが一緒に行ったら」

「いいじゃん。逆にオレは結構うれしいけど」

「は?」

「ニシモトとか、ヒロトでもふざけた感じで大島の事オレに振ってくると、オレは結構今までも嬉かった」


 ふわ~~~!!

 バカじゃないの!?なんでそんな恥ずかしい事ここで口に出した?

 わ~~~もうだめだ顔が。赤くなるのはもうしょうがないとしてニヤついてくるのがダメだ。カッコ悪いな顔見れない。

「変わった趣味だよね!」って言うのが精いっぱいだ。

「いや。そんな事はない」

わ~~普通に答えられた。『そうだよな?』くらい言ってくれたら、『もう~~』とか言えるのに。

 タダがふん?て感じで私を見るので目を反らし言った。「なんか…そんな風に言われるのは恥ずかしいよすごい」

 「そっか」


 もう!なに『そっか』とか言ってふふってちょっと優しく笑ってんのこの人!

 なにこれ…バカップルみたい…

 なんかもう教室帰りたいユマちゃんとこ帰りたい!…帰ったらハタナカさんまだいるのかな。



 

  図書室に入って、なんとか出来るだけ普通の感じで横を歩くタダに小さな声で言ってみる。「よその学校に行くのってちょっとドキドキするよね」

「あ~まあな。うちの高校に受験しに来た時もドキドキしたな」

「ドキドキしたの?」

「大島しなかったの?」

「したけど」

「なんだ自分もしてるじゃん」

「私はするけど、タダは落ち着いてるから」

「いやいやオレはヘタレだからな。ほらオレ、大島いなかったらカズミの幼稚園参観行けなかったじゃん」

あぁそうだったね…

「ヒロトがいなくて、ヒロトの周りのヤツらとも一緒に居れなかったら、オレはいつまでも、今でもずっとぐじぐじしたヤツだったと思う」

「そんな事ないよ!」少し大きい声で言ってしまって、慌てて声をひそめる。「タダはもともとちゃんとしてたんだよ。だからヒロちゃんもみんなもタダと一緒にいるんだよ」

「…」

タダがちょっと恥ずかしそうにしたからこっちまでまた恥ずかしくなって慌てて付け足す。

「っていうような気がしただけ!」

黙って、まだ恥ずかしそうにタダはうなずいた。




 文化祭の準備は少しずつ進む。ハタナカさんはてきぱきと話し合いのまとめ役をしたり、仕事をグループで割り当てたり、それでも委員会でタダと連れだって出て行く時には必ず私に言いにくるのだ。『ユズりん行ってきま~~~す』ってニッコリ笑って。『帰り遅くなったらイズミ君に送ってもらっちゃおっかな』とか可愛く唇をとがらせながら言ったり。

 あ~~言ってるよね~~、と、それでも何も返せず曖昧に変な顔をしてしまいながら私は、前よりずっと、ハタナカさんがタダに近付くのが気になっているのだ。彼女でもないのに。



 そして10月最後の土曜日。私はタダと、ヒロちゃんの高校の文化祭に遊びに行く。私たちの所よりも早く、ヒロちゃんの高校の文化祭が前日の金曜日から開催されて、土曜日は一般開放されるのだ。

 朝、タダが迎えに来てくれると言ったが断ってしまった。タダがうちに来ると母が騒ぐからだ。

 それで、タダのうちと私のうちのちょうど中間くらいにあるアパートの駐車場の自販機の前で待ち合わせをする事にした。

 逆に、ものすごく『デート』って感じがするなと思う私。



 朝タダから『今から家出る』というラインが入って、私も家を出る。自転車で行くと手っ取り早いのだが、そこはやはりバスで行こうという話になったので歩いて出る。そしてちょうど同じころに約束の自販機の前に着いた私たちだ。

 一応校則で、他校の文化祭に行く時には制服を着るように決まっているので私たちは制服を着ている。10月の半ばからはブレザー着用の冬服仕様だ。ヒロちゃんの学校はうちの高校ほどスマホの携帯にうるさくはないらしいのだが、今日の一般公開は全員スマホの持ち込みが禁止されていて、一般客もみな校内での使用は禁止されるのだとあらかじめユキちゃんが教えてくれていた。他校生や一般のお客さんが勝手に撮った、いろいろなものや人が写った写真や動画を各自で公開したら、いろいろマズい問題になるからだろう。


 「なんか」と合流したタダが言う。「こういう待ち合わせってデートっぽいな」

「…!」

 わ~~~…と思う。私も思ってたし!だからって、『うん!』てうなずくのは恥ずかしいから、ちょっと目を反らして『…そうかな』って答えてしまう。



 あれ…でも今タダは『デートっぽい』って言ったよね。私は『デート』って思ったのに。

 …タダってもしかして…付き合ってる彼女は今までいなかったと思うけど、もしかしてこういう待ち合わせとかしてどっか行くくらいの事は結構してたのかな。いろいろ誘われてたのを私も知ってるし。

 なんか…こういう小さい事でモヤっとする自分が嫌だ。

 そしてそれなのに、歩きながらもバスに乗ってからもタダは普通のテンションだ。私も普通のテンションを装っているが胸の内は隣に座ったタダの近さにドキドキしている。夏に海に行ったバスの中の事を思い出す。あの時タダはイヤホンをして音楽を聞いて、そして大半眠っていた。今は眠っていない。私たちは取りとめなく、そして脈略なく、学校の事や中学の時の事を思い付くまま少しずつ喋る。

 そしてタダは普通のまま、私は普通を装ったままバスはヒロちゃんの高校前の停留所に着いた。




 

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