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ぽわ~~~となって、うわ~~~~と動揺する私 2


 「それで?」とユマちゃんが聞く。「あの後タダはなんて?」

「え…と…別になんにも」

「へ~~~…はいはい。さらに何かあったって事ね?」

「ねえユマちゃん、ハタナカさんになんて返すのが正解だと思う?」

「んん~~~『うるさい』とかは?」

「そんな事言えるわけないじゃん!」

「だよね~~~~」

「ユマちゃん面白がってるよね」

「まあね!」

もう!「返信しないって答えは×だよね?」

「×だよね~~~」

「でも何にも思い付かないよ。何返しても反感買いそうなんだけど」

「そりゃ買うでしょ。だってハタナカさん、タダが大好きなんだから」

だよね。

 黙りこんだ私に「実はさ」と言ってユマちゃんは教えてくれた。


 実はタダを好きな子たちがみんなで私に『悔しい』コメント送ってみようかって話になったらしい。でも『悔しい』『悔しい』『悔しい』ってピロンピロン、ラインを入れたらそれはイジメになるよねって事になって、逆にイヤってほどみんなで『おめでとう』って送ろうかってなったらしいんだけど、絶対心からそうは思えないし、タダと私が小学から一緒で、タダの親友の事をずっと私が片思いしてたけど失恋したって事もみんな知ってるから、これは優しいタダの一時的な気の迷いでしかないよねって事に落ち着いて、ここは生ぬるい目で見守らないときっとタダにも嫌われるし、それでも私が調子に乗るような事があったら〆るけどみたいな話にもなったらしい。


 こわ…

 でもみんな大げさに言ってるだけだよね。後ユマちゃんも面白がって話大きくしてるんだと思うけど。そうであって欲しい。

 ハタナカさんに『ごめん』て返したいけど絶対ダメだ。『そんな事言わないで』も送れるわけない。もう、『タダが言ったのは作り話だから』っていうウソをつきたいくらいだ。

 「私だったら」と、ユマちゃんが少しまじめな声でやっと言ってくれた。「やっぱ何も返さないかな」

 …そうだよね。だってなに返しても相手にムカつかれるなら、何も返さないのが正解だ。


 「ハタナカさんもさ」とユマちゃんが続ける。「悔しいって取りあえずは言いたかったんだよ。そんなスタンプ付けてくれるなんて逆に優しいじゃん。ウザいなって思う事も多いけど、でも私はハタナカさん好きだよ。はっきりしてるとこがいいよね。アレでいて結構優しいとこもあるし。まあユズちゃんからはそう見えない事も多いかもだけど」

 …そうだよね。あのスタンプが無くて『悔しい』だけ送られて来てたらものすごく怖いもんね…


 ユマちゃんがさらに続ける。「ユズちゃんはさあ、はっきりしてないじゃん。うだうだ、ぐじぐじしてるとこあるじゃん結構。まあそういうとこも好きだけどさ私は」

「…ありがとう」

「うん。まあこっちがイライラしてる時、はっきりしないのはウザい事はウザいけどさ」

「!」悪口来た!ウザいと思ってんだやっぱ。

…まあ思うだろうけどさ。


 「でもほら」とユマちゃん。「私のすごい好い加減で適当な感じもイラっとする時だってあるでしょ?」

そう言われればそうだけど、ユマちゃんのいい加減さは安心出来る好い加減さなんだよね。私がしみったれた事を言った時でも多めに見てくれるっていうか…まあ今『ウザい事はウザいけど』って言われちゃったけれども!でもこうやって言ってくれる事って大事だよね。そしてそれは、そんな風に言われても、うんまあね、って思えるくらい私はユマちゃんの事を好きだって事だよね。

「う~~ん」と私は答える。「イラっとする事もちょっとあるけど、面白いなって思う事が多いよ」

「そう?うれしいな!」

 なんか友情深まった感。



 話を元に戻す。「返信しないでいようと思うけど、やっぱ明日何か言われるかな」

「いいじゃん言われても。それくらいは覚悟して受け止めればいいじゃん。ハタナカさんの大好きなタダに好かれてるわけなんだからさ。…ユズちゃんはやっぱまだヒロちゃんの事が好きなの?どうしてもヒロちゃんじゃないといけないの?」

「…」


 ヒロちゃんの事はまだ好きだし、これからもずっと好きだと思うけど、少し前みたいにヒロちゃんじゃなきゃ嫌だ!って気持ちは完全になくなった。それはやっぱりタダに好きだと思われている事で、タダを意識するようになったからだ。

 じゃあ私はタダが好きなのか?

 …好きか嫌いかでいうとそれは好き。でもヒロちゃんを好きだったように好きかというとそうじゃない。タダが好きだって言ってくれたからだんだん意識するようになってしまったのだ。

 でもこれからタダの事をもっと意識するようになったら、そしてはっきり好きだって思うようになって、いつかタダの事を好きでたまらなくなったりとかするのかな…気持ち悪くないかそれ。だってあんなにずっとヒロちゃんだけ好きだったのに。

 でもだ。ハタナカさんがタダと一緒に文化祭実行委員をするって決まった時に、私は確かにモヤっとしたのだ。

 それでさっきタダが電話を切る前に、『また明日な』って優しい声で言ってくれた事に胸がほかっと温かくなったのだ。


 「でもさ」とユマちゃんが言った。「ヒロちゃんはもう絶対無理だよね!カノジョ出来たんでしょ?」

 …そうだよね…少し前だったらユマちゃんにこんな事言われたら、くそ~~って思ったはずなんだよ。それが『もう!ユマちゃんわざわざ言わなくても』って思うくらいになったのは、やっぱりタダの事を私が意識してきているからだ。




 結局ハタナカさんにはなにも返信せず、せず、というか出来ず、翌日の私は学校に行くのが億劫だ。睨まれたらどうしよう。睨まれるだけだったらいいけど、緩く見守ってくれるはずの他の女子も交えてちょっとハブられたりしたらどうしよう。『イズミ君に好かれてるからって調子乗ってんじゃないよ!』とかね、「あんたみたいなのがイズミ君となんて不釣り合いだって!」とかね。いや、逆にはっきりそう言ってくれたらまだいいのかもしれない。女子のみなさん全員から露骨に無視とかされたら…


 でもおどおどと教室に入ってもハタナカさんはタダとの事について何も言って来ないし、その他の女子のみなさんも何も言ってこない。良かった。やっぱりそうそうマンガみたいな展開ないよ。でもまだ怖いけど。

 ハタナカさんとも仲が良いけどいつも話易いハシダさんに、頑張って提出するノートの事で話しかけてみたら、いつもとほぼ変わらない感じで返してくれた。目がほんのちょっと泳いだ感じがしたんだけど考え過ぎだと思う。生ぬるい目で見守るというユマちゃんからの情報は本当らしい。


 

 実際考え過ぎだし気にし過ぎだと自分でも確かに自覚している。タダと付き合う事になったわけでもないのに。好きだって言ってくれたけど、付き合おうなんて一言も言われてないし。今日だってタダは何にも言って来ないし、今昼ごはんに場所を移動するのにも1回も目も合わない。

 でも…この先言われるのかな。付き合ってってタダが私に言ってきたりなんかしたら…

 私はどうするんだろう。


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