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ぽわ~~~となって、うわ~~~~と動揺する私 1

 午後9時過ぎ。タダとの電話を思い出してそのままポヤ~~~ンとする私。

 そして、ほわ~~~、と緩くてながい息を鼻から出しながら…なんかタダが…と思う。


 なんかタダが!私の事を好きでいてくれるのが本当にはっきりわかった。

 どうしようそうか…そうなのか…と思いながら自分の右手を見る。今私の手には何もないけれど、ちょっとシャーペンを握っている感じで右手を見る。

 タダが私のシャーペンを使って宿題してるって言った…私が前に貸してあげて、でもタダが返してくれなかったシャーペンだ。タダはその代わりに自分のシャーペンを私のカバンに勝手に突っ込んでいた。あの時…私…タダが私の黄色いシャーペンを握るところを想像しながら、自分もそのシャーペンを握ってるところを重ねて想像してた…その時一瞬、タダの右手が私の右手と重なっているような気がしたのだ…

 

 机の脇に置いたタダのシャーペンが奥に入ったままになっているカバンを見る。

 ちょっと出してみようかな…そして握ってみようかな…


 …。


 恥ずかしいっっ!

 恥ずかしいしどうしよう…タダのシャーペン、私も握ってみようかなって思ってるぞ私!

 キモッ!キモキモキモキモ、キモっ!どうした私…わぁなんか…肩甲骨の周りがぞわぞわするよ何考えてんだ私…




 タダと言うのは多田和泉。タダイズミは、私が小学の低学年からずっと片思いをしていたイトウヒロトの親友だ。タダは小6の時に私の通っていた小学校へ転校して来たのだが、さっきのタダとの電話で、結構その転校したて序盤から、私の事が気になっていたような事を言われた。

 また思い出して頬が熱くなってしまうけど…

 でも…でも、ってやっぱり思いもする。そんな事、本当かな…


 本当にずっとずっと私は、ものすごくものすごくヒロちゃんの事が好きだったのだ。

 それなのに、ここ、ほんの2、3ヶ月の間にタダに好きだって言われて、そして私の誕生日にチーズケーキを焼いて祝ってくれて…それで今のタダからの電話での告白で、こんなに胸が熱くなって来ているところをみると私ってものすごくお手軽な感じじゃない!?



 いや…『お手軽な感じじゃない?』とか思いながら私は、どう自分をごまかしてもごまかしきれない感じでタダの事が気になって来てるし。

 しかも今日のホームルームの文化祭の出しものを決めるクラスの話し合いで、去年うちの中学でラスクを作って販売していたのをパクろうってタダが言い出して、その流れでタダがお菓子を作れるっていう話になって、担任の水本先生が私に『タダが作ったもの食べた事あるのか』って聞いたもんだから、最終的に私の誕生日にタダが焼いてくれたチーズケーキをタダの家で食べたって事がクラス全員にバレたし。

 バレたっていうか…私はごまかそうとしたのにタダが喋ってしまったのわけだけど。

 それはタダがクラスの子たちにもバレていいって思って言ったわけだよね?それは、それくらいの感じで私を好きだって事だよね?

 

 それは私と公認の仲になりたいっていうタダの意思表示だと受け取っていいんだろうか…って思っている自分が結構気持ち悪い。

 どうしよう…とか思いながら、そういう厚かましいような憶測まで出来る自分が怖い。ついこの間までヒロちゃんの事しか見てなかったのに。



 だから落ち着かないと。

 今のタダが私を好きでいてくれるっていうのはちゃんとわかった。わかったし、こんな風に憶測までして私自身もぽわあああああってなってる。でも。

 そんな…転校して来たてで私って有り得るかな…しかもそのきっかけが消しゴム貸したからでしょ?

 その時貸したのがヒロちゃんからもらって大事にしてた消しゴムだったもんだから、タダがちょっと返すの遅くなったからって、そのヒロちゃんの消しゴム返してもらうために別の消しゴム差し出したっていうせっこい話がきっかけでしょ?

 …どうなんだろうなソレ。


 仮に私が小6男子で転校して新しいクラスに入ったとする。困っている所にまだよく話した事もないクラスメートが消しゴム貸してくれたらそりゃ嬉しいよね。その子の事が気になるかも。でもその子は低学年からずっと好きな子がいて、しかも自分は中学になったら良い感じに女子にモテ始めるわけでしょ?良い感じにっていうかウザいくらいに女子にモテるわけでしょ?

 んんん~~~…私がタダの立場だったら…まず女子にモテる自分に酔うよね!それでその中からいちばん可愛い子を選ぶよね!そして小学で消しゴム借りた思い出なんてそっとどこかに仕舞っとく。

 



 ピロン。ピロン。

 

 どうしたんだろ…電話終わったばっかりなのに、タダからまだ何か…


 えっっ!

 ハタナカさんから来た!!

 …まじで…『悔しい』ってラインがもう見えてんだけど…



 ハタナカさんは入学当初からタダの事をとても好きでいるクラスで一番目立つ強気な女子だ。事あるごとにタダに絡もうとするのだが、タダは結構苦手そうにしていて、それでいて普段あんまり女子に自分から話しかけないタダが私には気安く話すものだから、その度に私には塩対応をしていた。

 今回文化祭の委員を決めるくじにタダと一緒に当たってものすごく喜んでた矢先に、今日のホームルームでの文化祭の出しものを決める最初の話し合いの段階で、私の誕生日にチーズケーキを焼いてタダの家で一緒に食べたという話がばれてしまった。ハタナカさんもきっと、私とタダが付き合ってると思ったに違いない。

 が、その後逆に、ハタナカさんは何事もなかったかのように淡々とクールに議事を進め、それでもホームルームが終わった後机に突っ伏してたし、それで放課後は速攻帰ってたし…

 絶対何か言ってくるだろうと思っていたのだ。

 


 やっぱり来たよねハタナカさんから。そりゃ来るわ。だってものすごくタダの事が好きだから。

 それでもハタナカさんからのラインは、ウサギが四つん這いになって俯いて涙を垂らしているスタンプと『悔しい』の一言だけ。


 …これは…

 どんな返しをすればいいやつ!?

 このスタンプはなに?ふざけてんの?なんちゃって~~、みたいな感じ?

 そんなわけないないよね?だってハタナカさん本気でタダの事好きだし。

 

 …どうしようこれは…

 どんな返しをすればいいやつ!?


 何も返せないよ…何を返しても不正解だよ…

 いやマジで。どうしたらいい…既読付けてしまった…ほっといて明日学校でラインなんか見てなかった振り…なんて出来るわけがない。


 ユマちゃん!ユマちゃんに相談だ。

 慌てて電話をすると、「電話して来ると思った~~」と、出るなりすぐにユマちゃんは嬉しそうな声で言った。

 私はすぐにハタナカさんからのラインの事を話す。

「他の女子のみなさんはなんて?」とユマちゃん。

「他の子からは来てないよ」

「あれ?そうなん?」

「え…どういう事?」

「なんだそっか」

「いや待ってユマちゃん。なんか知ってんの!?みんな何か言ってんの!?やっぱりみんな私とタダが付き合ってるって誤解してるよね?」

「そりゃそうでしょ~~~そりゃ言うわ。言わないわけないじゃん何言ってんの。タダ好き多いからホラ恨まれてるよ~~~?あっという間に他のクラスにも伝わったよね」

「そんな事…言われても」

私が困った感を出してそう言うと、キャハハ、とユマちゃんは笑った。

「『そんな事…言われても…』」とさらに困った感をわざとらしく付け足して、私の口真似をした後小バカにするように言った。「だって~~~。もう~~なんかユズちゃん最近天然ぶってない?」

「ぶってないよ!…そんな事…ないと思うけど」

「『…そんな事…ないと思うけど…』だって~~~」とユマちゃんはまたデフォルメして私の口真似をする。「なんでそんなしみったれた感じ出すのかなユズちゃんは。あんな感じでみんなの前でどうどうと好意をアピールされたらもっと喜んだらいいじゃん。例えタダの事なんとも思ってないとしても」

なんとも思ってない事はないよ。…だって…ドキドキしたし。ついさっきまでぽわっとしてたし。



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