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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ある一幕

作者: 秀之

題名:ある一幕

   著者 :秀之



つまらない毎日だ、横浜中華街の占い師に27歳で人生が大きく動きますよみたいなことを言われた、まぁそうなんだけど、確かに現に岐路みたいな感じなってはいるんだけど、なんだろね。あのおばさんの言うとおりになって割と癪に障る。

 一か月くらい前に仕事を辞めて、無職になり、大した貯金もなくあるのはさっさと返しちゃえよという程度の借金、いやでもそれが返せないという表現のほうが正しい。

あるのは、不満と憤り、口惜しさと苦しさ、平成元年生まれのゆとり世代が生んだ不良債権。

たくさんの媒体から生まれる名作が胸に突き刺さる名言を提示してくれたけど、実行に移せぬまま何の対策も打てないまま岐路。どこに向かえばいいのかわからない。同じ三十路手前の同期と呑んでも自分も含めてくだらない建前と大層ご立派な人生観をだれの受け売りか知らないけど、我が物顔で語り語らう。楽しいんだけどね。進みはしない、でも無益なんて切り捨てない。何も味わっていないくせに爺気取り大人になったねなんてのたまって、さぁどうしようか、なんて前向きなふりをする。

それは甘えだ、屑が何を言ってんだそんな声が聞こえるけど、そういう人はすごいよ、これから伸びていく市場はネット関係さ、この情報社会でIT分野の資格は絶対にいる。まぁ英語を話せるのは大前提、俺はすでに準備はしているぜ、あぁ手放しで尊敬するよ。この先の何十年もやり直しは聞かず。セーブロードはなしだぜ?どこに向かっているのかわかってっているやつ。まぁ俺はわかっているふりだと思うけどね。表面上ぼくは、さすがですね。全幅の信頼ですなんてツラして笑うけど。話してたらそうゆうやつは偏差値は高いけど耐え難いバカ。いちいち気に障る。空気読めないやつ。

でも、何物にもなれないで、何もできず動かず、豪華でお上手な哲学と無理心中。たくさんのギターヒーローがメロディに乗せて歌うキラーフレーズは胸に響いてるくせに、刺さってるくせにめんどくさい、つらい、わかったふりしてるだけ。

さぁ何になりたいんだろう間違えたら終わりだよ。というか間違いってなに?ぼくは、レノンの人生もそこら辺の浮浪者の人生も出来不出来、上下はないはずさなんて思うたちで、仕事をもし仮にしているなら、その仕事が終わってたまの休みの日に気の合う友達と酒を飲んで、ギターなんて趣味にしているから、スタジオなんてものにみんなと入って唄を歌って。満ち足りているはず。なんてことを信条にしているんだ。酔っぱらったらよくある、真剣30代しゃべり場みたいな雰囲気になったら呪文のように繰り返していた。その時のどや顔は自分でもすごい。何かを成し遂げるということに果てしないハードルを感じているくせに。

たまにいるんだど、おれの職場はこんなにも過酷な状況の中、毎日を暮らしている。当り前さ辞めてないよ続けてる、それでも俺は耐えているよ、辞めたいけどね、なんてなんだか真っ最中だ見たいな顔している奴がいるけど、それは違う、何かを変えられないだけで、やめるという選択肢さえもやり遂げられないそんな奴。別に否定はしないけど避難はしたいな。

ぼくは、他人の価値観を僕にも押し付けるのを極端に嫌がる傾向がある。お前の物差しで僕を語らないでくれないかな。なんて本気で怒ったことがある。何物にも縛られないから生き物で、自由だからこそどこに行けばいいのかわからなくて動けない、時間は未だに不可逆で、不可思議な中生きていかなければいけないから、どんどん不安になって、振り返って後悔で寝れなくなって、両肩に生活を背負ってる、伏した見知らぬ人に大丈夫ですかなんて、声をかける余裕なんて無くて、くそくらえの根性を教えてくれた時代には生きていない、飽和したエンターテイメントは一生暇をつぶすには十分すぎる。でも声高らかに文句を言う資格もないしそんなこと毛頭ない、黙って死ぬしかないというのは心得ている。

だからこれは孤独で卑屈な底辺の闘争さ決して共闘はできない。対無気力、対退屈、対怠慢、努力とは別のプロセス、むしろゴールは打ち込むという、努力するという目標。ほうぼうこれまで手を尽くしたがなかなかこの年になると若者という言い訳は恰好がつかなくなってくる。さぁどうしようか、具体案をだれか得ているだろうか、禅問答の掛け合いで答えなんてでない、だって禅問答だもん。

モチベーションを保つ、これさえも精神論ではなく科学でアプローチしていきましょうそんなことを言いたいわけでは決してなく、そんなものがあるならば、全力で論破してやる、むしろ僕で立証していただきたいね,27年間のすべてで否定してやる、もし仮にそっちが正しくて状況が好転するならば、それはそれでオーライさ。


 仕事を辞めて一月半、最近は半月続いて雨、大体はベッドから動かずスマートフォンを片手にその小さな四角形で暇をつぶしている、職安にもでかけているけど、もともと実家暮らしではあるから、何のためにと聞かれたら、母と父がいるから、さも僕は仕事を探しています。というポーズからくるものだろう。何やりたいかわからないし。職安のおばさんはまず一番にまず何をやりたいかきめましょう、そこからです。なんて言ってきて、あぁだめだなんておもいながら、そうですでね、やはり、いままで二年と少し営業職にいましたんで、それを生かせる仕事がいいですね。なんて、やはりこの人にどう思われたいかというポーズからくるでまかせが出てきて、何言ってんだろな僕は、とか考えながら心の中で笑っちゃってしょうがなかった。いやぁ今日は実のある話ができましたよ。そうですか、じゃあ全力でサポートしていきますから頑張りましょう。なんて締めくくって、職安をあとにした。薄給の中で借金もしながらどうにか購入した軽自動車のキーを回して帰った。

スマートフォンで今気になってるアニメの再放送をグダグダ見ながら、すぐに崩れた生活リズムで明け方まで時間を潰しながら無気力に過ごし、ひたすらに自他楽を愉しむ。

 なんということはない、たぶん、ひたすらにこんなくだらない日々がずっと続かないことも知っているし、おそらく、自分からもう駄目だな、という地点で適当に流されて、僕はやっとやりたいことが決まったよなんて顔して、手取りがやっと20幾つかもらえる定職について、骨をうずめる覚悟で、なんて息巻いて見せて何か始めるだろう。持っている資格は普通免許くらいで、しかもAT限定。その免許すら取得するのに大変な苦労をした。

ほんとに取得したのは快挙だと思う。自分の中では、実際に免許を手にしたときは冗談じゃなく泣くほどうれしかった。だから、最初はエンジンキーを回すたびにひそかに誇らしかった。そんなことを思い出しながら。日々日々意味もなく過ごす。

 また、ベッドに倒れこむ、だれとも会わずに、一日が過ぎる。そうだ、勉強をしてみよう、昔、取得しようと息巻いて、英検の参考書を買って満足してしまった事がある。その後悔の一つを引っ張り出して、机の見えるところに置いて、眠くなってその日を終える。次の日になってベッドから這い出すまでに二日かかるからその間にそんなことは忘れてしまった。またあくる日、愛車のエンジンキーを回して、糞みたいなかけがえない誇りを意気揚々に見せびらかしに公道を走らせる。

 ところで、どうだろう、いくら目をつぶっても眠れないときにみんなはどうな妄想をするだろう、僕は決まって中学時代に僕をいじめていた。あいつのことを頭の中でひたすらに残虐に残酷に苦しめることを考えながら眠る。まぁ決まって毎日そればかりではないけれど、眠れる可能性が高いのが、それかもしれない。いや決して鬱屈な陰な特徴というわけではなく、僕の中ですごく、生産的なトラウマの使い道だと思う。ひどく寝つきがいいものなんだから。自分ではそれで解決しているしポジティブだと考えている。


 あくる日、半月続いた、雨も明け、行楽日和といえるほど晴れ晴れとした天気に外に出かけ愛車を走らせていた、信号待ちをしながらふと窓の外に目を向けると。すると、毎晩、僕の不眠を解消してくれている、中学時代に僕をいじめていた、あいつを見かけた。あいつは向かいに建っているパチンコ屋の入り口に設置してある縦型の灰皿の横で鎖骨がほどんど露見するまで着古した、ダルダルになったシャツを着て、右手でたばこを持ち、左手で腹の上をかきむしり、寝ぐせのままの金髪にピアス、いかにも頭の悪そうな恰好をしていた。だってTシャツのロゴがPIKOだったもの。

 その時、僕はもう少し何かあるだろうと感じるほど、少しもトラウマを刺激する感情は起きなかった。恐怖とか怒りとかそんな感情は本当に少しも起きなかった。むしろ感じたのはそれこそ時間に対する恐怖だった。あれほど殺したいと望んでいたあいつを十何年ぶりに見かけ何も感じない。よくある時間が解決してしまった、風化させてしまったのか。そんなことを考えたら、そのことに恐怖した。

 瞬間、信号が変わりアクセルを踏んだ。ハンドルを切りながら、あぁどうしようか、僕はあいつを見返せる何物でもない。コンビニに立ち寄り、駐車している途中でスマートフォンの着信が鳴りメッセージが届いた。ぼくの彼女からだ、おはようなんてことから始まり、昨日の他愛ないやり取りの続きだ。ありふれた感動は普通過ぎてもはや僕の一部でもあるのだと思う。彼女とは前職を始める前に付き合いだしてもうすぐ三年になるか、という年月を重ねてきた。好きだから一緒にいるとか僕のほうはそうゆうものではなくて、生活の中の一つ惰性もひどく絡んでいるだろう、とりあえず一緒にいるという反面が強い。じゃあなぜ付き合っているのかと言われれば、こんなどうしようもない自分を理解して、好きでいてくれているということなんだ。かけがえないものだと思うし実際そうなんだろう。彼女は同じ地元の住んでいて、今日の予定を僕に教える。今日は友達と出かけるとのことで遅くなるのだそうだ。


 次の日、前の晩も眠くなるまで暇を潰して、夕方近くに目を覚ました。ルーティンのように起きてすぐに、携帯を手に取る、すると何やら、着信が彼女の携帯から何件も来ており驚いた。

すぐにかけなおすと、低い声の男性の声がそれに出た、話を聞くと、僕の彼女の父だった。しどろもどろに慌てながら、応対してると、遮られこう言われた。

 「あなたは、自分の娘と交際しておられた方ですよね。話しは聞いています。落ち着いて聞いてください、娘が強姦された上に殺されました。いまAという病院にいます。すぐに来ていただけませんか。」

 電話越しでわかる、想像に容易い、泣いている。途端僕も声を忘れて。そこからは詳しく覚えていない。ただただ、事態が呑み込めず、そこに駆け付けた、そして、彼女はベッドで眠っていた。聞いていたように悲惨な状態で。

 話しを聞いてみると、彼女は昨晩遅くまで、僕も彼女からよく話題に登場していた友達と二人でカラオケボックスに行ったらしい、すると、男性二人組が突然ナンパ目的で入ってきた。彼ら二人は邪見にされたことが気に障ったのか、怒鳴り散らし、蛮行に及んだらしい。そうですか、なんて言いながら。一緒にいた友達は僕のことを見るなり、ごめんなさいと呟いた。

死因は、殴打による撲殺だそうで、彼女の友達も同じような状況だそうで。そうですか。と僕も呟いた。

 警察の人とも話し、僕と彼女の関係も話しながら、お悔やみ申し上げます。何て空々しく、ただ、特定には時間はかかりません。必ず無念はなんて虚しく。でも、お願いします。なんて答えたと思う。

 大体に事の後処理が一区切りつき、岐路に着き感じるのは彼女が死んで悲しいとか、怒りとかもちろんあるのだが、実をいうとそれよりも、猛々しく燃える使命感が沸き立っていた。

あいつを殺そう。やり遂げて、あいつを残酷に残虐に一番に苦しむやり方で、そう決めていた。警察が法によって解決する前に、また自分の中で、時間が解決してしまう前に。

というのも実をいうと、彼女の友達に、犯人の風貌を聞き出していた。それはもう、不作法だし、ことが起きたすぐ後に聞くべきことではないのはわかっている。ただ警察は教えてはくれなかったから、どうしても知りたかった。ふとよぎったんだ。そのカラオケボックスの下には、昨日見かけたあいつがたばこを吸っていたパチンコ屋がある。そして、思った通り二人のうち一人は金髪にピアス、ダルダルになったTシャツ、ロゴはPIKOだそうだ。


そこに残ったのは、彼女は死に残されたものは悲しみ、残酷の極みみたいな死体だけ。彼女の死体はひどく痛み、見れたものではない、そんな結果だけが残る。彼女は、暴漢に死ぬまで殴打され、強姦され、苦しみ抜いて死ぬ。そんな事実だけが残される。

だから、あいつを殺そうと思う。そこには法も国家も地球も宇宙も関係ない。


予算はそんなにかかんなかった、2万くらいで、ホームセンターとかいろいろで、拘束に必要な必要な長めのバンドとか、ガムテープなんかもいるかななんて一応買ってみたけどそんなにいらなくて、紐とかのほうが便利でというか、無駄に意気込んでしまった。

警察が先に捕まえるよりも、僕があいつを捕まえなきゃいけない、そっちのほうが焦ったかな。そこからあいつの毎日に張り付いた。幸い地元は郊外から外れたさびれた町だったし、ひと気がないタイミング何てものは結構あった。何度かやっぱり、ここだというタイミングはあったんだけど、尻込みはしちゃって、拉致するやり方はいろいろググったりして考えたんだけれど、直接あいつ殴ったりして無抵抗にする自信もなくて、最近は運動もあんまりやってなかったら、筋力とかで敵わないかななんて考えて、結局、深夜暗がりに自分の車であいつが歩いてる途中に、思い切りアクセル踏んでいきなり突っ込んだ。そしたら、あいつ面食らったみたいで、いてぇ、なんてコンクリに吹っ飛んだから、僕は大丈夫ですか、なんて近づいて、ふざけんなよと言い返してきた時には、バットであいつを殺さないような力加減で顔の右当たりを振りぬいた。

そこから先は早くてとりあえず、結束バンドとかでガチガチに拘束して、大きな声出させないように、ガムテープで口塞いで、ほんと、ガムテを使ったのはここぐらい。車に放り込んだ、ブルーシートを上からかけて見えないようにした。そこからどれくらい移動しただろうか、たぶん半日近くかけて、どことは言わないけど、声をあげても届かない、人の目なんでまさかありえない、日中は光さえも満足には届かない森の中にあいつを縛り付けた。車で突っ込んだ時運よく右足を折ったらしくて、それが割と大きかったらしい、ずいぶん行動を制限できた。なんか猫捕まえるよりも簡単だったかな。

木にロープに括り付けあと、こいつのガムテープを外して、聞いた。

「どう大丈夫?ちゃんと動けない?」

「ふざけんな、この野郎、後で覚えとけよ、てめぇ殺すからな。」

「ははは、おもしろいな、逃がすわけないじゃんか、僕のこと覚えてる?ほら中学の時いじめられてた。」

「ああ、思い出したよ。別にお前を笑える感じでいじってただけじゃねぇか、まぁこんな度胸があったのは褒めてやるよ、そん時の復讐か、今更だな、殺す度胸もないのにな。」

そこから先は、なんか、殺されまではしないと考えたのか、やたら騒いでいた。こいつ。

それで、少し静かになってから僕はこいつにこう話しかけた。

「僕の趣味の中で、よく漫画を読むんだ。小学生時代毎週月曜日になると週刊少年ジャンプを友達の一人が買って、それを回し読むなんてことをずっとしていた、その時代、彼ら主人公は僕の中でヒーローだったんだ。友達と僕はこんな能力であいつを倒すね、なんて、話したり。登場人物に優劣をつけてあいつのほうが強いよなんて、話しながら。むしろこんな展開になったらなんて、楽しかったな。

中学に上がると、さすがにそんなことは言わなくなったけどさ、でも、あらゆる漫画は読んでいた。それこそ、お前にいじめられていた真っ最中だったから、この主人公は漫画の中から抜け出して、僕を助けてくれないだろうか、なんて考えていた。そん時僕は毎週月曜日の続きを収集するだけでやっとだったな。僕はいじめられっ子でお前やその取り巻きになんとか近づかないように、気に障らないように、そしてグループの中にいても、何とか上辺で取り繕い、ローテーションでほかの人間がいじめられていても、ひきつりながら笑っていた。そんな日常のなかで、漫画に救われていたんだ。とにかく、合法的なドラッグみたく、繰り返し想像の中で僕はその主人公と大活躍だった。そんな現実逃避をしていた。

でも、彼らに納得しない部分もあって、劇中に出てくる悪役はそれはもうひどいことをしている、例えば、何年にもわたって、その土地を暴力と恐怖で支配したり、彼等の大事な誰かを人質にとったり。かわいい女性キャラクターの父親を銃で打ち抜いたり。もちろん、彼等ヒーローは勧善懲悪に乗っ取り成敗する。もちろんそれは痛快だよ、当り前だよね、でもプロセスが足りない。彼らは、見開きで、必殺技を決めて、敵を倒したってことになってるちゃんと死を明示しないこともあるんだ、僕はずっとその成敗の足りなさに不満持っていた。正直これで終わり?という感じで、残忍なことをしたんだから、もっと残忍な成敗が欲しかった。だから、この復讐劇もそうあるべきだと思うんだよね。意味わかる?」

 そこまで話すと、少しこいつの顔色が変わって、

「なぁ、ほんとに悪かったよ、かなり時間たっちまったけど、今ほんとに謝るって、まじでごめん、ほんとに、なぁ」

「いやそれは本当にいいんだよ、中学の時のことは、ほんとに、もはや、その怒りも消えちゃって、普通に、生活してたし。」

「なら、なんで、もういいじゃん助けてくれよ。」

「それよりこの前さ、カラオケで、女の子ナンパして、姦したでしょ、覚えてる?ほら茶髪のセミロングで緑のスカートであれ俺の彼女なんだ、それで今更なんだけど、殺されないとでも思ってる?ここから長いよたぶん。」

 そこからこいつは発狂して、命乞いしか言わなくなった。そこからは、マニアックなAVファン顔負けの再現、思いつく限りやった。まるでゴアホラー、一度飯を与えるときに指を噛まれたんだけど、十分弱ってたから、歯形ぐらいで済んだ、基本的に切り傷とかだめで森とかだから、ウジとかいろいろわいて、早めにダメになっちゃいそうだから基本的に、打傷にした。指を噛まれた腹いせに生きたゴキブリとかを大き目な漏斗で流し込んでみた、流行りのユーチューバー見たいなノリで。


 それからあいつを拉致してから13日目の朝いつものようにいろいろ持ってきて、様子見に来たら、まったく動かなくなった、まぁ最後はほとんど反応なくなっていたけど、最後に念入りに百均の包丁で刺して、簡単に水辺の近くにそれを埋めて僕の復讐劇は終わった。

 その最中に彼女の通夜とかと同時進行だった、あいつを殴るたびに何かが解消していくことはあった、ただそこまでサディストではないんだ、ひどい仕打ちをたくさんしてみたがむしろグロテスクで自分で引いてしまった。

ということを認識しながら、じゃああんまり意味がないんだなこれも、でも別に復讐なんて意味がないなんて事を言いたいわけではない。

もちろん初めの二日三日ぐらいは中学時代の憤怒や、彼女を失った悲しみが救われていったような気持になった。

でもあとは、彼女が苦しんだ分もっと嫌がることを残酷に残虐にしなければという、まるで、プレゼンを考える、会社勤務のサラリーマンのような気持ちなっていた。そこから先はやりとげるという湾曲した使命感からことを成したような気がする。


気持ちが落ち着けた時点でそれが解消されたタイミングなのかな、なんてことを思いながら少し汚れた軽自動車を走らせながら考えた。そして、僕は殺人犯になった、もし捕まったらどうだろうか、そんなことを考えたがまぁ別にいいか、使命は果たした。とゆうよりも別に変りないかな。なにも、感情の機微はない。本当に彼女のことが好きというか必要な大事な存在だったんだろうか。狂おしいほどに怒り、悲しんだろうか、いやそんなことはないな、むしろそれよりも、何かをやり遂げるべきキッカケを衝撃的に作ってくれたという考えのほうがしっくりくる。

僕はサイコパスなんだろうか、どういうことか、物心つかない頃にしてはいけませんよと言われた行為を時間がたった後、好奇心でしてしまったときと同じような感覚がする。

あぁこんなもんか人を殺すなんて、たぶん人を殺してしまって見つかったら結構な罰が下されんだろう。でもそれをすべて受け入れ加味したうえで、構わないというならば人など殺していいのだと思う。こんな考えが発展して、ベジタリアンとかそんな思想になっていくのかななんておセンチなこと考えていた。

じゃあ何なんだろうこの一幕は復讐劇なんだろうか。どうもしっくりこなくて、それよりも冒険譚のような気がする。スタンドバイミーとか、そんな青春物語のような。そして、家に着いてベッドに横たわる。


 また何日か経って、警察の人とか、彼女の両親とかと話しを聞いたらば、あいつと一緒にいた屑はすぐに見つかって逮捕された。そして、あいつについてはまだ見つかっていない、本当に申し訳ない全力で捜査しています、必ずやだそうで。

 僕はその時、僕のことを疑っているのではないだろうか、なんていうことはあまり思わなくて、また、僕がしでかしたこの罪を償いたい捕まえてくれないかなんてことも思わなくて。受け入れていた、すべてを。

 

また後日職安に出かけて、いわゆる就職活動を再開した。職安のおばちゃんにやはり営業で一度探したいという旨を伝えて。何社か面接を取り次いでもらった。

 ある面接で、興味があるからとかマニュアル通りの答えのほかに僕はこれまでに培ってきた処世術の定石通りこう話した。

「もし彼に僕を雇っていただけるのであるれば粉骨砕身、身をうずめる覚悟で弊社の

ための利益を一番に尊重していきます。また僕は最近一番大事だった彼女を事件によって亡くしました。あの世にいる彼女に例え見られていたとしても恥じないように生きていくつもりです。固い決意が胸にあります、どうかご一考のほどお願いします。」

 そこから、何かあったんですか。みたいなことを聞かれて、これこれこうでなんて、大変でしたね、というようなやり取りがあったのち僕は、

「確かに、僕の中でまだ解消されていないところはあります、ですが、彼女がもしこの場いるんだとしたら、何を言ってるんだ。しっかりしなさいなんて一喝を入れるでしょう。気丈な彼女でしたから。」

 そんなやり取りが自分では、変に面白く、気持ち悪く、でも僕という人間はこうなのかと再認識した。この一か月弱の冒険譚で何か変わったのか淡い期待を感じていが、淡々と出まかせが出てきて、心の中で、また笑ってしまった。まして僕の中ですっかり過去としてとらえてしまった彼女の死など、とっくに感情を波立たせるものではなくなってしまった事なのに。世間が僕を一連の事件の被害者の内の一人だととらえ、もしくはどうとらえられたら有利に働くかそんなことばかり考え必死にポーズをとる。

 変わらない、劇中のヒーロー達はこれくらいの期間、これくらいのインパクトの冒険譚で目の色が変わるのに、僕は目の色さえもほら変わってるでしょうなんて考えながら、二重にしている。

 だが、僕はあいつを拉致して、淡々と残虐な拷問を与え、殺した。それをやり遂げえた。

そのやり遂げたという事実については、本当に密かに誇らしかった。これから、元彼女のご家族の方達とは、一生の縁になるだろう、彼女の墓参りのたびに未だに捕まらない実行犯の一人を憎み、何もかも消化できないまま憤怒の怒りが冷めぬまま震える日々を過ごすだろう。彼女の父親が今後病床に伏し、往生の末寿命を全うする今の際で、あいつを殺した際の記録をひそかに見せてあげようと今から企んでいる。そうなったら、彼はどんな表情で喜ぶのだろうか、もしくはその罪を僕に背負わせてしまった責任に責められるのだろうか。まぁ、あいつが殺されたことを知り、僕が捕まってしまったらそれまでなんだが。そしたら、捕まる前に彼にお見せしよう。

 僕は、いまだに再就職先は見つからないまま自他楽をまだ楽しみながら、少しだけ、今後の人生について考えながら毎日暮らしている。明るくなっては暗くなる、一日を恨めしく妬みながら。やはり、少し寝すぎた一日の最後は、寝つきが悪くって妄想の中眠れるのを待つのだが、最近の題材はあいつを殺すまでの最初の三日間をできる限りなぞるように思い出す。どんなに眠れない夜だどとしても、死んだように、眠りにつける。僕のロスタイムのような人生に一つだけ不安の種は減った。不眠症には今後絶対にならないだろう。


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