届かぬ想い
母親の話を聞きながら、こみあげてきた感情に押し流された、Evelynは、顔を伏せていた。
Mariaは、ブランデーを飲みながら、Evelynが落ち着くのを待っていた。
「Evelyn、まだこの話には、不思議な続きがあるの」
とMariaは、落ち着きを取り戻した、Evelyn に向かってそういった。
「続きって、どんなこと」
「第2次世界大戦で、アメリカがフィリピンを奪還したことは、学校で習ったでしょう。その時の上陸作戦の場所が、パンガシナン州のリンガエンよ。ママとおばあちゃんは、竹部さんと新谷さんから、マバラカットから逃げるようにいわれたらしいわ。沢山のお金と壁に飾っている年代物の銃があるでしょう、あの銃を貰ったらしいわ。そして、おばあちゃんの故郷のアラミノスへと逃げたんだけれども。1944年12月の暮れになって、アメリカ軍の将校が来て、すぐに避難するようにいわれて、移動したのね。年があけるとすぐに爆撃があって、上陸が開始されたわ。なぜか、その間、ママとおばあちゃんと私は、ずっとアメリカ軍に護衛されていたの。戦争が終わるまでずっと、戦争が終わってからも、安全な場所に住む場所が与えられて、お金までもらえたの。理由は分からなかった。たしかに、ママの夫だった人は軍人だったけれども、それほど位は高くないってママが言っていた。それから、1年くらいはその状態が続いたそうよ。ママは、それは竹部さんのおかげじゃないかと思っていたわ。だって、アラミノスに避難したのを知っているのは、新谷さんと竹部さんだけだから。ママはそそう思って疑わなかった。でも、1年が好きだ頃から、それは無くなった。何故だか、多額のお金が軍から支給された。理由は、教えてもらえなかった。そのお金で、ママは軍を相手にレストランを開いた。それが今の私たちの会社のもとになっているわ。」
「グランマは、信じていたのね。自分たち家族を助けてくれたのが、竹部さんだと。」
Mariaは、大きくうなづいた。
「ママは、届かないと知っていても竹部さんを思い続けることで、心から感謝していたの。それは、たぶん崇高で純粋な愛だと思うわ。」
Mariaは、自分の母のSaraを誇りに思うように言った。
「私も、そう思う。きっと竹部さんは生きていて、ママやグランマを守ったんだと思う。そう信じたい。」
Evelynは、Mariaの膝の上に顔をうずめた。
Mariaは、きれいな自分譲りのいや、母親のSara譲りの金髪を撫ぜた。
Mariaは、母親のSaraからこの話を聞かされたとき、母親が再婚しないわけを理解した。
子供の自分から見ても、母親は美しいと思っていた。
レストランでも、何人もの男の人から求婚されるのを見ていた。
それでも、母はなびくことがなかった。
Mariaのことと、仕事のことだけを見ていた。
それでも、時々、竹部ももらった櫛を見て泣いていることもあった。
Mariaは、そんな時に、母がどんなにその人をことを思っているか、分からなかった。
Mariaは自分が結婚するときに、母親のSaraから、こう言われたことがあった。
"そばにいてくれる人を選びなさい"
と、その言葉には自分したような辛い思いをさせたくないという、母親の思いが込められている気がした。
Mariaは、Evelynも、そう思える人を選べばいいと思っていた。
幸いなことに、パートナーに恵まれたことで、仕事に対する不安はなかった。
「ママ、明日。グランマのお墓参りにアンへレスに行くわ」
とEvelynは顔を上げていった。
Mariaは何も言わなかった。
ただ黙って頷いていた。
あと少しで,完成となりますかね。急いで完成させる必要もないと思いながらも、このところ毎日書いています。もう少しだけ、お付き合いください。
追伸 エピローグをどうしようかなと、考え込んでいます。
ということで、今回は短めに仕上げてます。
次話は、長めになると思います。




