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雨の中で

ウエーブのかかった金髪と、堀の深い顔立ちは、どこでも目立っていた。

evelynと歩くと、疲れると孝二は思った。

実際、evelynは、スペイン父人とスペイン人クオーターの母親との間に生まれた。フィリピン国籍の孝二が通う、大学の留学生だ。

本国では、財閥のお嬢様らしいが、ここではのびのびと過ごしているが、外見に似合わずに日本語が達者なので、驚かれる。

なんでも、祖母が大の日本びいきで、知らず知らずに日本語も覚えたらしい。

そんな、祖母の遺言で、evelynは、日本留学することになったらしい。

その祖母は、夫を戦争で無くしてから、女独りで会社を興し、自国では有名な財閥の1つになっているらしい。

何故か、うちみたいなさえない私大に留学ときた。

さらに、家の経営するアパートに入ってきたから、必然的に孝二は、evelynはの相手を務めることになった。

今日も、買い物に付き合えという。

スペイン気質、ラテン系と言えばいいのか、ノリが違う。

そのたびに、孝二は周りの視線が痛かった。

なんせ、ファッションのモデルかというような体形で、(実際、本国ではモデルをしていたらしい)、金髪とくれば、横にいる孝二には好奇の目が行くことは仕方がない。


「コウジ、ナニスル」


はあ-と孝二は溜息をついた。


「evelynは、何したい」


「swimm」


「もう夏は過ぎました、いまは10月です。」


「ダイジョウブ、プールでオヨゲル」


孝二は、夏にサークルのみんなと、evelynを連れて海に行ったことを思い出した。


それはもう,刺激的な水着で大変でした。


「IT'S A JOK」


孝二は、ハイハイと手をあげた。


パンとEvelynは、ハイタッチをした。


「give me five」


と笑った。


Evelynには、フィールドワークの目的があった。

祖母の遺言で、ある人の消息を探していた。

あの大戦の中で,出会ったひとりの日本人男性を探していた。


その人の名前は、竹部 明憲 その当時 海軍の航空隊のパイロットらしかった。

どうして、その人を探してるのかは、Evelynにも教えてくれなかったそうだ。

ただ、どうしてもEvelynの祖母は、死ぬ直前まで竹部 明憲を探してくれと遺言したらしい。

そして、一通の手紙を預かっているらしい。


当然、国にも問い合わせたし、その頃の部隊の方にも問い合わせたが、竹部 明憲という名前はなかった。

古ぼたセピアの写真だけが唯一の手がかりだったが、その写真もピンぼけでよくは映っていなかった。

孝二は、Evelynのこのフィルードワークに付き合っていた。


歩き疲れて、コービーショップに入った。


「コウジ ゴメンナサイ イツモ ツキアッテクレテ」


「いや いいよ。俺も暇だし。すこし興味もあるしな。」


Evelynの上目遣いの目で見られると,ぞくとする。

とても、20歳の女の子とは思えない。


「おばあさんと、この写真の人はどんな関係だったの、まさか 恋人?」


「I DON'T KNOW グランマはナニモイワナナカッタ。モウイチド アイタイト」


「そうか。」


Evelynは自分の髪をいじりだした.すこし癖のあるウエーブの髪を指でくるくるとまいたりほどいたりした。

ここ最近、見慣れたEvElyn の癖だ。


「人が消えたりすることはないから、きっと手がかりはあるさ。あっそうだ。この近くにも、昔海軍の飛行場があったらしいから、行ってみようか」


「Ok」


といって、店をでた。


外は、夏の雨より、すこし冷たい秋の雨が降り出していた。


天気予報で、雨が降ると言っていたから、二人とも傘を用意していた。


Evelynのピンクの傘に雨音が響いていた。


タクシーを拾うと、行先を告げた。

運転手は、不愛想に行先を確認して、車をだした。


すぐに、目的の場所についた。


そこは、先の大戦で東洋一の航空廠があった場所だ。


今は、海自のヘリコプター部隊の基地だ。


「ココハ?」


「昔の、海軍の飛行場の跡地だよ」


「ソウナノ、グランパノサガシテイルヒトモイタノカナ」


「さあね、どうだろう」


雨は、しとしと降り続き。訳もなく二人の傘に水玉をつくりすスーと落ちていった。


しばらくそうしていたが、帰ろうとしたときに向こうから、一人の老人が黒い傘をさして歩いてくるのが,見えた。


すれ違う時に、その老人はチラッと傘をあげて,Evelynを見つめた。


Evelynは、わずかに会釈して微かに微笑んだ。


老人の口から


「Sara・・・・」


という言葉がもれた。


その言葉をEvelynは聞き洩らさなった。


「Why ナゼ グランマノナマエ」


老人と孝二とEvelynはの三人は、雨の中に立ち続けた。


雨音だけが大きく響いた。



70年の時がよみがえります。

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