カオル、カオル?
家に帰って自分の部屋に上がると、カオルがいた。実体化したカオルが…。
「お前、何だ!」
僕はきつく問いただした。
「カオル、みたい…」
お茶とお菓子を広げて、くつろぎながら、僕らは話した。
「…私にもサッパリわけがわからないのよねえ。どうしてこんなことになったか。スイッチが入って、アプリに呼び出されたら、あの、教室に立ってたの」
「ふうん…」
「ふうん、じゃないわよ!」
部屋のとびらの向こうに、僕の彼女の弓月由貴がいた。
「なに、二人でくつろいでるのよ!」
「いや、最初は慌てたんだが、話を聞いているうち、慌てても仕方ないなあと思って」
「そうそう」
カオルがニコニコしながら挨拶した。
「浩生さんのスマホアプリのキャラのカオルです。よろしく!」
由貴がカオルをにらみつける。
「まあまあ…」
…そのとき、階段をドヤドヤと誰かが上がってきた。
「カオル!ここにいたのかい!」
ブランドで身を固めたミセスが、そう言いながらカオルを抱きしめた。
「あなたがカオルを救ってくださったの?アリガトー」
おばさんは僕に頭を下げた。
「カオルは病気でね。いろんな妄想に取り付かれちゃうのよ。あーっ、見つかってよかった!」
カオルはきょとんとしてる。
「じゃあ、カオルちゃん、帰るわよ。お二人、アリガトー!」
おばさんに無理矢理引っ張られて、カオルは外に連れ出された。
僕と由貴が、虚空に取り残された。
「なんじゃ、ありゃ?」