或る不死少女の独白
あはは。どうしてなっちゃったんだろうなぁ…
こんなに悔やんだことなんて今までにあったかな?
後悔しないと誓ったはずなのに…
もう、笑っちゃうよね。
笑うしかないよね。
あはは。
もう、私ってば、どうしちゃったんだろう…
頬を冷たいものが流れ落ちる。
ただ、ただこぼれ落ち続ける。
それが、ポツリポツリと落ちる。
落ちていく。
それさえ、視界が霞んでしまい見えなかった。
覚悟はしていたはずだった。
でも、ホントはハリボテの覚悟だったみたいだ。
だってほら、こんなに涙がポロポロこぼれるんだもの。
だってほら、こんなにも、悲しいんだもの。
今更後悔したって遅い。
時は覆らない。
やり直すことなんて出来ないのだから。
いくら私とはいえ孤独には生きることはできなかった。
だからこういうこともいつかは起こることだったのかもしれない。
いや、それは必然だったのだろう。
失って、始めて気づく、大切さ,か。
そう独りごちる。
まさにそうだ。
失うまでこんなにも後悔するなんて予想だにしていなかった。
いや、無意識にでも予想していたからこそ大切なものをわざわざ作らないようにしていたのだろう。
でも予想できていたとしても何ができただろうか?
…できなかっただろうなぁ…
私も人間なのだ。
少なくとも心は。
まだ、人間なのだ。
そう、まだ、心だけは確かに人間なのだ。
肉体的にはどうであれ。
涙を腕で拭い、水鏡を覗き込む。
笑え。
笑ってしまえよ、私。
笑って受け流してしまえよ。
どうせ、これからも何度も何度も何度も何度も通る道になるのだ。
だから、これくらい、友人が死んだくらい、笑って受け流してしまえよ。
私はどうせいつもおいていかれることになるのだから。
いつも失ってしまうのだから。
だから今のうちに慣れてしまえよ。
笑って未来に進めよ。
そう、頭では考える。
でも、それでも、体は正直だ。
拭ったはずの涙が視界を覆う。
結局あの子には私の秘密、話せないままだった。
話す前に死んでしまった。
私も話すのが怖かった。
でも今思えば話せばきっと笑って受け入れてくれたんだろうな、そう思う。
今となってはすべてが遅いけれど。
これからも私はたくさんの人たちと出会い、また別れるだろう。
そのうち仲間たちの死にも慣れてしまう時がくるかもしれない。
いや、どうにも慣れてしまう時が、慣れてしまわなければならない時がくるんだろう。
そのうち昔のことさえ忘却れてしまうこともあるだろう。
でも、この、初めての別れだけは、ずっと覚えておきたいな。
だから、慣れていない、今だけは泣かせて。
あなたを失ってしまったことを悲しませて。
不用意に不老不死になってしまったことを悔やませて。
これからも何度も見送ることになる悲しい運命を恨ませて。
悔いのない人生なんてない。
でも、今は、少なくとも今だけは泣かせて欲しいな。