奇妙な一行 その8
「――ちょっと、それどういうこと??」
魔王(七海)を守る、という言葉に聖王は動揺したようだった。
「アタシを守るって、約束したわよね?」
「あ、ああ。七海と会ったのはおまえよりも前だからな」
クリスの勢いに圧倒されながら、ホークが答える。
「じゃぁ、アンタは会う女の子みんなにそう言うわけ——?」
ホークに詰め寄るクリスの目が血走っていた。
「……クリス、大体その通り」
無表情でシグナスが答える。
「女、子供を守るのが兵隊の役割——いつも言っている」
――何よそれ!?アタシだから、特別ってことじゃないワケ!?
「……」
無言でクリスがホークを見つめる。
「な、なんだよ?」
「――どっちを……選ぶのよ?」
口調は攻撃的で、ホークを強く責めていた。
だが、その瞳は潤み、不安を率直にぶつけているかのようだ。
「アタシとその子――どっちを選ぶの!?」
ずいっと顔をホークに近づける。
非難されているのか、それとも縋っているのか、ホークには正直、見当もつかない。
「ど、どっちって……どっちを守るかってことか?」
コクン、と大きく頷く。瞳は相変わらずホークを一直線に見つめている。
「そ、それは……」
たじろぎながら視線を七海に移す。
七海もまた、不安げに見つめていた。
――七海は弱々しくて、とても魔王には見えないな……
その点こいつは……
ホークは聖都での攻防を思い返していた。
ギガンテスにホークが倒された時も彼女は一人で逃げなかった。
ジークフリードという魔神と戦った時、彼女は魔法を使いこなし、魔神を追い詰めるほどに逞しかった。
「そ、そうだな……どちらかと言われると、な――」
七海、と言おうとしたところでシグナスと目が合った。
いつもの様子と違い、目を見開いてこちらを凝視している。
『その選択肢はバッドエンドだ』
その迫力から、ホークは素早く答えを感じ取った。
「……な、何かを守るのに、何かを犠牲にするなんて、俺には選べない」
ホークは精一杯、クリスに目を合わせて白々しい台詞を吐く。
「……」
クリスと視線が合う。クリスは一瞬、頬を膨らました後、ホークの唇に人差し指を軽くタッチした。
「べ、別に守ってもらいたいとは思わないけど……ア、アンタはアタシの勇者だってこと、忘れないでよ?」
急に視線を逸らし、クリスはバツが悪そうに俯いた。
それとほぼ同時に馬車が停車する。
「ホーク、今夜はこの辺で野営するで」
空気を読んでか、読まずか、ズケズケとアラウデが入っってきて豪快に笑った。
「なんや、ホーク……この馬車ええ匂いがするなぁ~……お前、ついにハーレム作る気なんか?」
「な、な、なんで、ア、アタシがこんな奴の……っ!?」
クリス甲高い叫び声で、長く、慌ただしい1日は終わりを迎えた。




