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大脱走! その9

「なんだ?貴様……こんな時間に、こんな場所で……」

その男は子供のように小柄で、横柄な態度であった。

「なんだ、ベルトランか」

ホークは出くわした人物が、聖都でもっとも自分のことを知っている人物であるということに多少の安堵感を覚えた。


「質問しているのは俺の方だぞ」

少しむっとした感じでベルトランが再びホークに問いかける。

「俺が近衛第一連隊の連隊長だということを忘れていないか?」


近衛第一連隊——言わずとした聖都一帯を守護する筆頭軍団である。

ベルトランは若きその連隊の連隊長であり、聖都の守備隊長だ。


「つまり——城内の不審者を取り締まる責任がある」

キッパリと、人差し指でホークを指して断言した。

「おい、おい……また不審者扱いかよ……」

ホークは頭を抱えた。


すぐ後ろでは心配そうなクリスの視線を感じる。

手振りで「隠れていろ」と合図を送り、ベルトランと対峙する。


ホークは答えに窮する中で、必死に突破口を探った。

ふと、ベルトランの姿を見ると、普段は甲冑を着ない男が甲冑に身を包み、マントを羽織っているのに気づく。


「そういや、近衛は出撃なんだってな」

「耳が早いな。俺たちはこれから魔族退治だ」

ホークが水を向けるとベルトランは得意げに言った。

「連隊を率いて出撃する。先程、戒厳令が敷かれたところだ。今夜は外に出ないほうがいいぞ」

そう言ってホークに念を押す。

「お前のような不審者は目立つからな」


——戒厳令か……これは厄介だな。


聖都は城壁にぐるりと囲まれ、市外へ出るには市門を通る他ない。

だが、戒厳令が敷かれているとなると、出入りは厳しく制限される。

まして夜中に出ようとすれば、人目につくのは避けられない。


「なんだ、貴様?まさか、勇者一日目にして脱走でもしようというのか?」


ぎくり


「い、いやー……夜風に当たろうと思って」

「ちょっと待て、貴様の部屋は確か最上階だったような。どうやってここまで来た?」


さすが、守備隊長殿。城の構造をよく分かってらっしゃる。

って、そんな褒めてる場合ではないか。

仕方がない……切り札を使うか。


「ああ、俺は今日、城を出る」

「!?」

驚愕するベルトランを前にホークは淡々と続けた。

「先程、密命を受けたんだ。今日中に城を出て、向かうところがある」

「ほう……どこに行く?」

怪しさ満点。という感じで、ベルトランは尋問にかかる。

「旅団に戻るんだ」

そう言った瞬間にベルトランの顔色が変わった。

ホークはそれを見逃さない。ニヤリ、とほくそ笑む。


「そ、そうか。と、ところで、ホーク。その、なんだ、彼女は元気にしているのか?」

ベルトランは急に明後日の方向に視線を向けて聞いてきた。

「そ、卒業後に一度聖都で見かけたきりだからな。同期としてその後が気になるんだ」

こいつが<彼女>という時には相手は一人しかいない。いや、そもそも、士官学校の同期に女は一人しかいない。

「チェスカのことか?」

「そ、そうだ!元気にしているのか?」

「相変わらずさ。いつもお小言ばかりで参ってるよ」


チェスカもまたホーク、ベルトランとは同期生であった。

士官学校時代、何度となくホークとベルトランで馬鹿をやらかし、チェスカに叱られるというのを繰り返したのである。

チェスカは学級委員長タイプであり、紅一点ということもあってか同期全員彼女には頭が上がらないというところがあった。

その中でもベルトランが彼女に惚れているというのは同期全員が知る事実だった。


「演習で彼女が隊長になった時、号令に合わせて「イエス、マム!」と叫んで突撃するのが楽しかったな……」

「ああ、大体それでボロクソに負けるんだよな。お前ら女にいい格好見せようと勢いよく前進し過ぎなんだよ」

思い出話に花を咲かせると見せかけ、すかさずホークは続けた。


「——と、いうわけでだ……円滑に旅団に戻りたいんだよ。お前なら人目につかずに市外に出られる道を知っているだろう?」

「ば、バカを言うな。知っていたとしてもお前に教えるワケが……」

「知ってるか?俺はチェスカの上官なんだぜ?」

そう言ってベルトランの肩を抱き、耳元で悪魔の囁きを吹き込む。

「今度、近衛と合同訓練でもしないか?調整役はチェスカを考えているんだ」

「——取引したい……そういうことだな?」

急にベルトランの顔も真剣になる。ホークは無言で答えた。


「食料庫の奥がゴミ捨て場だというのは知っているな?

実はそのゴミは下水道から処理場に送られているんだ。

下水道はたしか市外の用水路まで続いていたよなぁ……」

とぼけた顔でベルトランが答える。


「恩にきるぜ、さすが我が友!」

そう言ってベルトランの背中をホークが叩く。

「借りは返せよ」

彼は迷惑そうに一言告げると去っていった。


ベルトランの姿が見えなくなったのを確認すると、ホークは手招きでクリスを呼び寄せる。

「さぁ、行き先は決まったな」

満面の笑みを浮かべるホークをよそにクリスはうんざりという表情で答えた。


「オトコって、サイテー……」

前回短めだったので、今回は多めの分量となっています〜

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