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大脱走! その6

修道院は街外れにあることもあってか、周囲は暗くひっそりとしている。

しんとした夜の静けさの中に時折、獣の息遣いが混じっていることをヘルマンは聞き逃さなかった。

「さてさて、盛り上がっとるところ悪いんじゃが、今夜はそろそろお開きらしいの……」


和気藹々とする食卓を前にヘルマンが言う。

すると、ステラはすぐに外にひしめく気配に気づいたようだった。

表情がすぐにこわばり、手元の剣を引き寄せる


「ステラさん?」

七海がステラの様子に気づき、心配そうに声をかける。

「——七海、外……兵隊がいっぱい」

シグナスもすぐに気づいたらしい。


「周囲を固めろ。猫の子一匹出すんじゃないぞ」

修道院の外では馬に乗るガブリエルが兵隊たちを指揮していた。

数は百人はいるだろうか。馬が時折興奮して吐く息や蹄の音が闇夜にはよく響いた。


「お嬢さん方にはこちらから出ていただくかの」

そう言って地下室に案内される。

木箱の山で覆われた一角に扉があった。

「この扉から下水道に抜けられる。下水道は街の外まで繋がっておるから、朝までには外に出られるじゃろう」

ヘルマンは微笑むと七海たちに背を向ける。

「——どうして、魔王の私を逃がそうとするんですか?」

その後ろ姿に七海は問いかけた。

「さぁ?どうしてじゃろうかな……」

ヘルマンはとぼけたような口調で答える。

「まだ、その時ではない……そんなところじゃろうか……」


「院長!聖教騎士団が中を捜索すると言ってきております」

そこへ若い修道士が血相を変えて駆け込んできた。

「ふん、どうせガブリエルあたりが来たのであろう。あの若造は待たせておけば良い」

「しかし、今にも押し入ってきそうです!」

「年寄りを急かすものではない、そう伝えるのじゃ」

釈然としない顔ながら、若い修道士は元来た方へ駆け出す。


「さぁ、あまり時間がないようじゃ。急ぐがいい」

「……答えを聞いていません」

七海がヘルマンに食い下がる。外が慌ただしくなってきている。

入れろ!という怒号が何度も聞こえていた。


「ふふ……良い目をしている。本当にこんなまっすぐな目をする少女が魔王とは思えんのう……」

目を細くしてヘルマンが七海に微笑みかけた。

「答えなどない。ワシが今はお主を逃がそうと思った。それだけじゃ」

ヘルマンは背を向けて地下室を出た。


「ヘルマンさん……」

七海は何も言えず、その後ろ姿を見送ることしかできない。

その袖をシグナスが引く。

「……行こう」

「そうです、マスター。どういう意図であれ、今は捕まるわけにはいきません!」

ステラに手を引かれ、七海は修道院を脱出した。

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