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大脱走! その5

——夜這いと思われるよりはマシか……


ホークは城を抜け出そうとしたことを素直にクリスに告げる。


「へぇ……勇者が王様ほっぽり出して逃げようっていうの」

クリスの視線が痛い。

「いや、なんだ……俺にはこういう王宮暮らしは似合わないかな……って」


冗談じゃない。

アタシだって、突然変な世界に連れてこられて、挙句、王様に祭り上げられたのよ。

なんで、アタシよりコイツが先に逃げ出すのよ……


「連れて行って」

「は?」


ホークはクリスがしばらく考えて出した答えに呆気にとられていた。

「だから、アタシも連れて行って」

「どこに?」

「ア、アンタが行くところ……よ」

「俺は自分の隊に帰るだけだぞ?」


ホークにはクリスの言っていることが理解できなかった。

王様が城を出て傭兵の俺と付いてくるって——どういうことだ?


「ま、守るって……守ってくれるって言ったじゃない……」

クリスが恨めしそうに言った。

「確かに、言ったが——」

ホークは混乱していた。いや、二人とも混乱しているのだ。

魔族の襲撃と聖王、勇者への覚醒、戴冠式に夜会……今日はこれでもかというほど色々あった。


「はぁ……。じゃぁ、一緒に行くか!」

「うんっ!」

この二人、何も考えずに行動することに関しては人一倍気が合うらしい。

決めたら即行動とばかりに脱走の算段を始める。


「正面には衛兵が二人いるわよ」

クリスがひそひそとホークに話す。

「突破できなくはないが、やはり場内は護衛の兵がひしめいているか……」

衛兵を倒したところで、わんさか兵を相手にするのはさすがに骨が折れる。


「やっぱり、ここしかないわね」

「ああ。それしかないな……」

クリスもホークも脱走可能とみた経路は一致していた。

窓から下を覗く。

目が眩む高さだった。


「問題は……どうやって降りるか。降りてから、どうやって城外に出るかよ……」

降りた先は中庭であり、まだまだ城外へ出るには遠そうだった。

「それなら大丈夫だ。俺はこの城に多少土地勘がある。中庭の脇から食料庫に抜けられるんだ。そこから外に出られると思う」

「へぇ……詳しいのね?」

ホークは士官学校時代に何度も王城へ来たことがあった。

実習という名の強制労働と生徒からは呼ばれていた王城警護や物資の搬入作業をこなす中で、効率的にサボれる場所を探った賜物だ。


「だけど、どうやって降りる?俺はともかくお前は……」

ホークがクリスの方を見る。多少の運動神経は備わっていそうだが高所を短剣を踏み台にクライミングするような体力があるようには見えない。

「ふふん、こうすればいいのよ!」


そう言って手を虚空にかざすと、薄紫色の巨大な魔法陣が壁一面に広がった。

「っと、もう少し手前……そう、この辺……」

クリスは目をつぶってブツブツ言いながら何やら調整しているようだ。


「よし、ここっ!」

クリスが目を見開く。


すると壁に槍が中庭まで一列に突き刺さった。


穂先よりもやや深く壁に突き立てられたそれは人が足をかけて体重を乗せても耐えられるものであった。

要するに、即席のハシゴの出来上がりである。

「どう?頭いいでしょ?」

得意げにクリスが微笑む。確かに、この発想はなかなかできない。


「よし、じゃぁ降りるか」

先に窓から身を乗り出し、安全を確かめるとホークはクリスに手招きをした。

その手を取り、ゆっくりと外に飛び出す。

風は強いわけではないが、高さのせいもあってか、髪がなびくほどには吹いている。

ほんのりと火照った頬には気持ちが良かった。


「下見ないようにな……」

ホークが先行し、そのすぐ上をクリスが続く。

目が眩むような高さだが、下を見なければ淡々とハシゴを下るだけだ。


「きゃっ」

突然の突風にクリスは声を上げた。

ドレスに着替えたこともあってか、膨らんだスカートが風をはらんでバタバタとひるがえったのだ。

「おい、大丈夫か!?」

慌ててホークが見上げる。

「……シマシマ……」

思わず、光景を口に出してしまった。見上げるとそこはスカートの中。

クリスの下着はシマシマ模様であった。

「う、上見んなっ!」

げしっ、という鈍い音ともに、ホークは顔面を踏み台にされていた。


——ほんと、ツイてない1日だ……

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