大脱走! その3
「じゃぁ、なんで壁にしがみついてるのよ。そういう趣味があるワケ?」
少女の視線が痛い。
俺だって好き好んでこんなことをしているわけじゃない。
短剣は手の中に作るだけではなく、身体が触れる任意の位置に出すことができた。
それならば、と足から出せるか試してみたのだが、これが思いのほかうまくいった。
つま先に意識を集中させ、壁をけるとうまい具合に短剣が壁に突き刺さるのだ。
これを利用して下まで降りようかと思ったのだが、見る限り、最下部まで途中に部屋は無い。
下がるには片足を踏み出して下げねばならず、どうしたって不安定になる。
すると、真横に部屋があるじゃないか。
あそこまで行って城の中から逃げよう——そう思ったのだ。
「よりによって、お前の部屋かよ……」
ホークは自分の不運さを呪った。
「と、とにかくだ……部屋に入れてくれないか?」
「絶対、嫌っ!人を呼ぶわよ」
ケダモノを見るかのような視線が突き刺さる。
「これには訳があってだな……それを説明させてくれないか?」
ホークの笑顔が引きつっている。
短剣を踏み台にしているとはいえ体を支えているのは壁にしがみついている腕だ。
だんだん力が入らなくなってきた。
「回れ右して自分の部屋に戻りなさいよ」
しかも、相手はなかなかに手強い。
今日会ったばかりの男が夜這いと受け取られかねないような真似をしているのだから、当然か——
ガラッ、
突然、右足を支えていた短剣が抜け落ちた。
お、落ちる!?
態勢を崩したホークはとっさに残った左足の短剣を踏み台として、窓めがけて飛び出した。
どすん——
かろうじて、窓枠内に体が飛び込み、下へ真っ逆さま……という状況は避けられた。
だが、事態はより深刻かもしれない。
ホークは右手に柔らかい感触を感じていた。
むにゅむにゅと柔らかいながらも張りのあるそれは——まぁ、何か説明する必要もないだろう。
窓に飛び込む形となったホークは当然窓際に立っていたクリスに飛びかかる格好となった。
そして、勢いのままそれを押し倒したのである。
発育途上にあるにしてはなかなか立派なものが付いていた。
「い、いや……これは不可効力ってやつで……」
ホークの下敷きとなった少女からただならぬ殺気が漂っているのを感じる。
はは、ははっ、とホークの乾いた笑い声が広い部屋にこだました。




