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覚醒

「がっ…かはっ……」

 熱い…身体が燃えるように熱い。

 何だこりゃ……何で俺が……


 ホークの身体には両肩から斜め十字に大きく傷が刻まれ、血飛沫が吹き上がっていた。

 痛みより、身体が燃えるように熱い。両膝ががっくりと折れ、地面に膝まずく。

 見上げると、下卑た笑みをたたえるゼップの姿を認めた。


 ゼップは左腕を失い、その顔には顎から山刀が刺さっていた。

 ニヤニヤと笑いながら右手で山刀を抜き、べっとりとついた自らの血を嘗め回す。


「この程度で魔神が殺せるとでも思ったのかね?」

 そう言って山刀を投げ捨てるとその顔は元通りに復元していた。

「もちろん、腕を落としても無駄だ」

 大げさに左腕を振って見せると斬りおとしたはずの腕が徐々に生えていく。


人間ゴミにしてはよくやったな。褒美をやろう。最期のその瞬間まで苦しんで死ぬがいい。」

 そういって手で空を掴むしぐさをすると、ホークの身体に締め上げられるような激痛が走る。


「ぐっ…がぁああぁぁあっ」

 メキメキと激しい音が自分の身体中から聞こえる。

 触れずしてすり潰されるような激痛が走る。


「そうだ。人間らしい、いい声で鳴くのだ。」

 ゼップは残酷な行為に快楽を感じるのか、恍惚とした表情となっている。


「やめて下さいっ!」

 その時、甲高い声があたりに響いた。

「もう、やめて下さい……。それ以上やったら……死んじゃう!」

 七海が勇気を振り絞って声を上げた。その声は震えており、明らかに怯えている。


「……これは、これは……興覚めですな」

 ゼップが腕を下ろすと同時にホークはその場に崩れ落ちた。

「人間ごとき、どうなろうと構わないというのに」

 そう言ってゼップは七海にゆっくりと近づく。


「……い、いやっ。来ないで!」

 七海はじりじりと後ろに下がっていくが、ゼップの歩みは止まらなかった。

「それはできない相談ですな、リトル・プリンセス(姫様)

「姫様……?どういうこと?私はあなたなんて知らない!」

「あなたが知らなくても、我々にはあなたが必要なのですよ。さぁ、参りましょう。」

 そう言って七海の腕を取ろうと手を伸ばした時であった


「汚らわしい手でマスターに触れるな!」

 ステラが剣を振りかざし七海とゼップの間に入る。

「ステラさん!」

「……ステラ、貴様がやっている事は背信行為だ。エルヴィン公は我々を裏切ったということか?」

 ゼップがステラを睨み付ける。


「……父上は関係ない。これは私の独断だ!」

「ほぅ……、ならばそういうことにしておいてやるか……」

 ゼップが右手を上げ掴むしぐさをすると、とたんにステラが苦しみだす。

「っ……、この、ゲスめ……っ」

 ステラの首にくっきりと手の跡が浮き上がりぎりぎりと締め上げていく。

「それは最高の褒め言葉だよ……、あちらで母上によろしく伝えておいてくれたまえ……」

 ゼップが力をこめるとゆっくりとステラの身体が浮き上がった。

 ステラは足をバタつかせてもがくが、だんだんと意識が薄れていく。


 どうして?どうして?どうして……こんなことに……

 わけが分からない。

 追いかけられて、落ちて、助けられて、襲われて、それを助けてくれた人たちが殺されそうになっている。

 これは全部私のせいなの?


 わからない……わからないよ……


「さぁ、姫……こちらへ……」

 ステラを締め上げながらゼップが手を伸ばしてくる。


 いやだ…こんなの……


「嫌っ、いやぁぁぁあああっ」


 刹那、七海の周りに漆黒の空間が現れ、閃光が走る。


「……まさか、もう覚醒するのかっ!?いかん、これでは暴走してしまう……」


ゼップが七海を捕らえようとさらに手を伸ばすと七海を包む闇が弾けた。

「しまっ……た……」


次の瞬間、あたりは闇に包まれた。



2013.07.09 少々改稿しました

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