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世界の理(ことわり) その6


「困るんだよね……こういうことされると……」

 部屋の隅から真っ黒なイタチがぬっと姿を現す。

「シュバルツ!?」

「やぁ、七海。久しぶりだね。周りの目があってなかなか顔を出せなかったんだよ」

「これがインストーラー……?」

 サテラが目を丸くしていると、その横を風をきるように横切るものがあった。シグナスだ。

「……かわいい」

 シグナスは疾風のごとくシュバルツの長い胴を両手で掴むと胸に抱きかかえていた。

「ちょ、ちょ、やめろ、人間っ……!痛い、痛いって!!」

 バタバタと逃げようとすればするほど、シュバルツはきつく抱きかかえられる羽目になった。

「……飼う」

「ちょ、七海!助けて!!」

 身近な前足でシグナスの腕をタップするが、その力が弱まることはないようだ。


「インストーラー――それは異世界より転生し者をこの世界の王として適応させるために遣わされしものじゃ」

 シュバルツに一瞥も与えず、老人は七海に語りかける。

「貴方もひと通りのことはこのシュヴァルツから聞いておろう?」

「はい……」

 七海が頷く。

「僕の気配を察知したり、名前まで知っている……君は一体何者なんだい?」

 シュバルツは抵抗を諦めたのか、抱きかかえられるままに老人に語りかけた。


「ワシの名はヘルマン。聖修道会の長じゃやよ」

「……ヘルマン修道院長」

 シグナスがぽつりと呟く。聖修道会という名を聞いた瞬間にサテラの顔が強張った。

「一般的にはそう呼ばれるておるのう。サテラ、そんな警戒せずともよいじゃろう。聖修道会と聖教会は別物じゃ。」

 よっこいしょ、としんどそうにヘルマンは椅子に座る。

「もう、歳じゃでな、失礼だが座らせてもらうよ。」

「別物――とは言うが、聖王を奉じている点では同じ。貴方の目的は――」

「答えを急いではいかんと先ほども言ったじゃろう。」

 ほっほっほっ、とヘルマンが笑う。


「第一、貴方達が聖都に来たのは修道院を尋ねるということではなかったのかな?」

「……そう。……修道院に七海を連れて行くよう、団長に言われた」

「ワシはフレデリックから、小さなお嬢さんが訪ねてくると聞いておったからの」

「あっ!そういえば、そんな話だったっけ……」

 七海が首をひねる。肝心のホークとはぐれてしまったため、修道院を訪れる目的を彼女は知らなかった。

「私は、マスターを隙あれば奪還しようとしていただけです」

 サテラは正直なところを呟く。それに乗っかるようにシュバルツが口を挟んできた。

「そうだ、サテラ!こんなやつら君の力があればあっという間に倒せるだろう?七海を連れて逃げ――」

 言い終わらないうちにシグナスに締め上げられる。

「……ちょっと、黙ってて」

「く、くるし……し、死ぬ……」

 シュバルツはまた必死にシグナスの腕をタップする羽目になった。


「聖修道会は――」

 ヘルマンがおもむろに話し始める。

「聖修道会はこの世界のあるがままを尊び、その流れに身を任せて道を修めるというのが教義じゃ。ただ、大いなる力を持つ、全てを統べる存在として、王を奉じておる。」

 そして、優しく七海に微笑みかける。

「その点において、聖王も魔王も同じじゃ」


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