世界の理(ことわり) その3
「神々は更に我々に祝福を与えた!」
沸き起こる歓声を前にセラスが声を上げると、辺りが静寂に包まれる。それを確認した後に、セラスはその言葉を続けた。
「陛下の再臨とともに、勇者もまた誕生したのだ――」
視線が一斉に跪いているホークへと注がれる。
「――ホーク……前へ……」
「は、はいっ!」
ガチガチに緊張したホークが玉座に座るクリスの前へ進み出る。
「第104期王立士官学校主席――、聖王騎士団、辺境第十師団所属、ホーク少佐。」
「……はっ!」
所属と階級を呼ばれホークが居住まいを正す。踵を床に叩きつけ、直立すると乾いた音があたりに響いた。
「勇者が聖王騎士団の将校から生まれるとは……正に天佑と言えるだろう……」
「陛下、勇者へ剣をお授け下さい。」
セラスが言うと、従者が一振りの長剣をクリスの前に捧げる。クリスはあっけにとられながら両手でそれを受け取った。
「さ、授けるって……どうすれば……」
剣を渡されて困惑するクリスが、セラスに視線を送る。すると、セラスは微笑で答えた。
「……」
クリスは剣を手に、おもむろに立ち上がる。そして、その剣を抜き放つと切っ先をホークの肩へそっと添える。
「汝、ホーク、我が剣となりて、その身が砕けるまで、戦うと誓うか……?」
「……誓う。」
ホークが顔を上げてクリスを見つめる。クリスと目が合う。その目は涼やかに、まっすぐにホークを見つめていた。
「汝、ホーク、我が盾となりて、その身が果てるまで――、……アタシを守って……くれる……?」
涼やかな瞳が、一瞬潤む。だが、ハッと目を見開くと、クリスは言い直した。
「――その身が果てるまで、戦うと誓うか?」
「誓う。」
ホークの迷いのない答えが響き渡った。
「聖王の名において、汝を勇者に任ずる――」
クリスが言うや、大歓声が巻き起こった。
「聖王陛下万歳!勇者万歳!神々の祝福を!!」
「神々は再び我らに王を与えた!」
静かに、そして、力強く、セラスの声が響き渡る。大完成は再び静寂に戻っていた。
「神々は我々に命じているのだ。邪悪なる者どもを滅ぼせ、と。世界を我ら神々の僕である人間の手に取り戻せ、と。」
天井が遥か高く、教会の大聖堂のような作りの部屋に静かに声が響き渡る。どこか華やかで、色気のあるバリトンボイスが心地よい。
「聖王の元に集え、神々の僕よ。その剣を捧げよ、その身を――、血を――、肉を――、魂を捧げるのだ。」
胸元に拳を作り、セラスは激情を露わにした。
「今が”その時"である――古より続く、魔族との戦いを終わらせるのだ。神々に勝利を導き、魔族を滅ぼすのだ。我々、神々の僕である人間の手で――我々が世界を変えるのだ!」




