聖都燃ゆ その4
「知らない!私はプリンセスでも、魔王でもないっ!」
「ほら、やはり自分の立場が分かっていらっしゃるでしょう?それならば、私に抵抗するのは筋違いというものでしょう?」
クルトが妖しく微笑みながら近づいてくる。
「私の役目は貴方様をお連れすることでしょう。我が王として、魔族の王、魔王として玉座にお連れすることが我が使命でしょう?」
「知らない……そんなの、私が……私が望んだことじゃない……」
「望む、望まないは関係ないでしょう?貴方の血が、そうさせるのでしょう?」
クルトが七海の腕を掴む。怪しげな瞳が七海を見据える。七海の恐怖は頂点に達した。
「いやぁぁぁっ!」
刹那、七海の足元に銀色の魔法陣が展開する。
「な、何でしょう……!?」
光があたりを包み込み、七海の腕を掴んで魔法陣の中に入っていたクルトの腕に異変が生じる。
「……なっ!?」
ボコボコと肉の塊が腕に浮き上がってくる。慌てて七海の手を離し、魔法陣から離れる。
だが、それは止まらない。何かが増殖するかのように腕を伝い、肘を超えて上に上がってくる。
「う、うわぁぁぁっ!」
クルトは左腕を振り上げ、手刀で自らの右腕を切り落とした。
ゴトリ、と落ちた右腕は増殖を続け、やがて弾けて血しぶきをあたりに散らした。
「ど、どうして……これ、私が……やったの……!?」
七海には目の前の光景が信じられない。紫色の血しぶきを上げ、肉片が飛び散っていた。
「嫌……嫌だよ……こんなの、嫌……」
ステラを抱き、涙を流しながら激しく首を横にふる。
同時に、七海の足元に広がる魔法陣はどんどんと大きくなっていく。そして、その地面との境界面からは小さな草が芽吹き始めた。銀色に輝く魔法陣はその底面を青草色にしながら広がっていく。
「こ、これが今回の魔王の能力……ということでしょう?」
苦しそうな表情を浮かべながらクルトは二歩、三歩と後ずさる。
その間にも魔法陣はその範囲を広げる。七海の周りを中心として蔓や木が伸び始め、徐々に森を形成するような勢いとなっている。
「ち、力が……暴走している……でしょう?」
クルトが逃げようとする。だが、足が何かに掴まれ動かない。
「な、なんということでしょう!?」
いつの間にかクルトの足元に蔦が絡みつき、地面に固定されてしまっている。
「こ、こんなことが……
これが、ゼップを倒した力……ということでしょう!?」
残った右腕にも蔦が絡みつく。ゼップは完全に身体の自由を奪われてしまった。
「り、リトルプリンセス!いや、魔王様、どうかご慈悲を!!」
クルトが命の危険を感じ、七海に乞う。
「分からない、分からないよ!?どうやったら止まるの!?」
自分の力が制御できず、七海は天を仰いだ。




