聖都燃ゆ その3
「馬鹿な、馬鹿なっ!こんなことがあって良い訳ないでしょう!?」
「どうやら、お仲間は総崩れの様ですね?龍使い……」
「おのれ……せめてリトル・プリンセスだけでも……手に入れなければ私の面子に関わるでしょう!?」
突如、クルトの様子が変わる。老獪な紳士といった風貌が醜く歪み、上半身が3倍以上に膨れ上がる。左右の眉間からは角が伸び、口は狼のように長く伸び、深く裂けた。身体中から湯気が立ち上り、筋骨隆々な姿がそこにはあった。
「ステラさん!気をつけて!」
七海の声が響くのとほぼ同時に一筋の黒い光が駆け抜けた。クルトの狼のようにつきだした口から咆哮とともに放たれたその怪しげな光はステラの肩を貫く。
「……くっ……」
ステラの表情が苦悶で歪む。肩口から赤く血が溢れ、腕に幾筋もの川を作っていた。
「ふひひひっ、痛いでしょう?泣き叫ぶといいでしょう。もう貴方は終わり、でしょう?」
言うが早いか、クルトの姿が視界から消える。
「ステラさん!上っ!」
七海があらん限りの力で叫ぶ。ステラが上を見上げると、クルトは大きくサーベルを振りかぶり、こちらに目掛けて降ってくる。
「ふひひひひっ!」
ガキン、と剣と剣がぶつかり合う音がしたかと思うとクルトのサーベルが砕け散る。
「このっ!!」
ステラが剣を横に薙ごうとするとクルトはその裂けた口で刃を受け止めた。刃に噛み付き、容易に離れない。
「ふひひひひっ!どほしたのでしょう?」
その目がニヤニヤと嫌らしくステラを睨みつける。
「……かはっ!」
ステラが腕に力を込め、刃を押し込もうとしたその時、
ドスン、と脇腹にクルトの拳が突き刺さる。
「ふひひひひっ!いい表情でしょう!もっと見せていただきましょう!!」
クルトは両サイドからボディーブロを立て続けに見舞う。ステラは剣を離すまいとしているためにまともにそれを受けてしまう。
ドンッ、っと強い衝撃がステラの身体の中央に走り、弾き飛ばされる。10メートルほど飛ばされたところで瓦礫にぶつかって止まった。
「ステラさん!」
七海が駆け寄る。見ると光に貫かれた腕が黒く変色し、異臭を放っていた。
「そんな…肉が腐って……るの?」
ステラの腕は今にも崩れ落ちそうな状態にまでなっていた。
「ふひひひひっ!私の力は全てのものを腐らせるのでしょう。鉄は錆、肉は腐り、やがて朽ちる……」
ゆっくりとクルトが七海の元へ近づいてくる。
「来ないで!」
クルトへの恐怖と、ステラに対するショックで涙が溢れてくる。
「そうはいかないでしょう?我が小さき姫……」
一歩、また、一歩とクルトが近づいてくる。
「知らない!私はプリンセスでも、魔王でもないっ!」




