勇者誕生! その3
「分かったのよ。アンタがそのすごい力を得た原因と、理由が、ね。」
そう言うとクリスは腕を組み、ぐるぐると円を描くように歩き出した。
ホークは呆気にとられ、見ているしかない。
「まず第一に、アンタのその力はアタシが与えたものよ。」
ぴっ、と人差し指を立て言い放った。
「……そ、そうなのか?」
「ええ、もちろん。アンタが倒れた時、既に息をしていなかった。だから、アタシはキ、キスを……ち、ち、ちがうわ、じ、人工呼吸をしたの!
そしたら、アンタは復活して、奇跡の力を得たのよ。」
キスの下りでしどろもどろになったが、クリスはホークの力は自分のおかげだ、という点を強調した。
「なんでお前にそんな力が――」
「何故、アタシにその力があるか、それはアタシがお姫様だからよ!」
自信満々に言い切るクリスに飲まれ、ホークはきょとんと聞き入ってしまう。
「アタシにはすごい力があって、それを分け与えることができるの。アンタにはそれを分けてあげたのよ、感謝なさい。」
「お、おう。」
「おう、じゃないわよ。ありがとうございます、でしょ?
アタシは命の恩人よ?」
「あ、ありがとうございます。」
……あれ?俺、お礼はさっき言わなかったっけ、と思いつつも、クリスの言われるがままになってしまう。
「ほら、そうやってアタシの言いなりでしょ?アンタはアタシの騎士になったの。その命尽きるまで、アタシを守るの!」
「守るって、何から守ればいいんだ?」
「決まってるでしょ!アタシを狙うイケメンどもからよ!」
「????」
予想外の答えにホークの頭の中は混乱し始めた。
イケメンから守る??一体、こいつは一体何を言っているんだ??
「アタシを狙うイケメンがもうすでに二人いるのよ?ガブリエルとジークフリートっていうの。これからも新しいイケメンたちがあの手、この手でアタシを狙ってくるのよ。アンタはそれからアタシを守るの!」
「えーっと……要約すると、イケメンがお前の命を狙いに来るから、それから、守って欲しいってことでいいのか?」
「ぜーん、ぜんっ違うわっ!何を聞いてたのよ?」
「えっ!?」
クリスはホークが自分の言っていることが全く理解できていないことに落胆し、ホークはホークでクリスの答えに困惑の色を隠せない。
「イケメンが狙うのはアタシのハートよ、ハート。アタシを落としに来るの!」
クリスは自分の胸を拳で二度、三度と叩く。
「落とすって、口説くってことか?」
ホークが尋ねると、クリスは強く頷いて見せた。
「口説かれるのがダメなのか?」
「そうよ。アタシの心が他のイケメンに行かない様に守るの!」
「え、えっと……、俺がお前を守る理由がよく分からないのですが……」
「そ、そ、それはアンタがアタシの……、アタシの……ふぁ…、ふぁ…、ふぁ…」
クリスは『ファーストキスの相手だから』、という言葉がなかなか出せずに、モゴモゴしてしまう。
「あははっ、君、面白いね~!」
不意に頭上から無邪気な笑い声が聞こえた。
ジークフリートが拍手をして笑っている。
「いや~、面白いっ!なかなか独創的な想像力だね。所々、正解があるところが可笑しくて笑っちゃったよ。」
そう言いながら地面に降り立つと、クリスに向かって妖艶な微笑みを向けると問いかけた。
「でも――、君、馬鹿でしょ?」




