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ミラクル・キス その6

「ご無事ですか、マスター?」

 微笑みかけるステラに七海は安堵した。だが、すぐにも現実に引き戻される。

 焦げ臭い……物が燃える臭い。逃げ惑う人々の悲鳴。そして、戦う両軍兵士たちの怒号と、断末魔の叫びである。

「何でこんなことに――」

「それはあなたがここにいるから、ですよ。」

 七海がポツリと呟くと、辺りに声が響いた。


「――クルトか。」

 ステラが虚空を見上げて吐き捨てる。そこには黒い羽根を広げて滞空する男の姿があった。

「ステラ姫、ご機嫌麗しゅう。お父上は元気ですかな?」

 ゆっくりと地面に降り立つ。クルトは上品な初老の紳士、といった趣で、白髪に白い口ひげをたくわえている。


「私の降下猟兵師団(シュトゥーカ・イェーガー)もなかなかのもの、でしょう?」

 両腕を後ろに組んだままゆっくりと七海の方に近づいていく。

「我が姫君(リトルプリンセス)、お初にお目にかかります。魔神六将が一人、龍使いの(ドラゴンテイマー)クルトでございます。」

 クルトがゆっくりと七海の前でお辞儀をする。

「……まぁ、ゼップを貴女が殺してしまいましたので、もう五将となっているのですがね。」

 困った、困ったと苦笑いをする。


 殺した?私が――?

 この人は一体何を……


 七海が当惑するのを横目にクルトが続ける。

「我々は貴女と、もう一人異世界からやってきた荷物(パッケージ)を殺しに、わざわざこんなところまで来たのです。」

 今まで上品そうに話していたクルトの顔が醜く歪む。

「ですから、あなたの命もここまで。そういうことでしょう?」


 ビュンッ――

 クルトが言い終わる前に素早くステラの剣が彼を襲う。

 だが、上から振り下ろされた剣をクルトは二本の指で挟み、受け止めてしまった。

「魔神ですらない、ましてや魔人としても中途半端な貴女が私に勝てるとでも?」

 冷たい微笑みとともにステラは七海の方に向かって弾き飛ばされる。もの凄い衝撃で壁が崩れ瓦礫が落ちてきた。


「ステラさん!ステラさんっ!?」

 土埃が辺りに立ち込める中、七海が必死でステラを抱き起す。

 落ちてきた瓦礫のせいか、衝撃のせいか、唇を切っていた。口の中も切れているのが自分でもわかる。鉄のにおいがした。


「……マ、マスター……」

 朦朧とする意識の中ステラは自分を抱く幼い主を見上げた。

 きつく結んだ唇から滲む血が痛々しい。

 それを見て、ステラはある覚悟を決めた。


 ステラは七海の頭をそっと撫でる。

「マスター……ご無礼を……」

「ちょ、ちょ……ステラさん!?

 ん、んーーーーっ!?」

 ステラは七海の頭をそっと抱き寄せるとキスをした。


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