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ミラクル・キス その4

「姫、ご無事ですか?」

 そこには真っ白な翼を広げ、(しろがね)に輝く甲冑に身を包んだ天使がいた。

 クリスをかばうように両手を広げる。右手には身長を超える2メートルはあろうかという大槍を携えていた。


「ガブリエルっ!」

 クリスが歓声を上げる。


「……なるほど。君が騎士(ナイト)というわけなんだ?久しぶりだねぇ、ガブリエル。」

 ヘラヘラと笑いながらも目が笑っていない。会話から、ジークフリートはガブリエルに面識があるようだった。

「ジークフリート、何をしに現れたのですか?」

 ガブリエルが槍の切っ先を相手に向け、鋭い口調で問いただす。


「何をしに!?今、『何をしに』って聞いたのかい?」

 ジークフリートの口元が歪む。嘲る様な口調で続けた。

「『殺し』に来たのさ!殺しにきたに決まっているよね、ガブリエル!

 その子だけじゃない、ここにある『すべて』さ!

 すべててを奪い尽くし、すべててを焼き尽くし、すべてを破壊し尽くし、すべて殺し尽くすんだよ!」

 狂気に満ち満ちた表情で、大げさに腕を振って見せる。

「だってそうだろう?ガブリエル、ボクらは"選ばれた"んだ。神なんだよ。何だって奪う権利がある。誰だって殺す自由があるのさ!」


 狂ってる……。

 クリスは目の前の歪んだ光景に吐き気を覚える。


「さぁ、殺しあおう、ガブリエル!君と殺しあうのは何十年、いや、何百年ぶりかな。

 ボクを楽しませておくれ!ボクをゾクゾクさせておくれよ……。」

 ジークフリートは腕を組み恍惚の表情を浮かべ身体をくねらせる。その間にもじりじりと配下の兵が包囲の輪を縮めている。

 クリスはガブリエルの袖を掴んだ。これから起こることが不安で仕方ない。


「姫様、ご安心を――。」

 ジークフリートが腕を組んだまま右手を上げる次の瞬間、取り囲んでいた兵たちが一斉に飛びかかってきた。

「――ここは私が。姫はお逃げください。」

 一瞬振り返って微笑むと彼はその華奢な体には不釣り合いな大槍を一閃した。

「ちょっ…!?」

 刹那、クリスの足元の床が崩れ落ちた。


 やだ!?また落ちる――!?


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