ミラクル・キス その3
「見ぃ~つけたっ!」
少年の声が風通しのよくなった部屋に響き渡る。ガチャガチャとやかましい甲冑の音共に十数人の魔人たちがクリスを取り囲む。
「な、何よアナタ達っ!?」
クリスは気丈にも目の前の異形の者たちに向かって問いかけた。
「これはこれは、お姫様は元気がいいみたいだね。」
少年がパチパチと手を叩きながら近づいてくる。すらりと背が高く、色が白い。白いというよりは青白かった。切れ長の目に妖しく紫色の瞳が光っている。
背中には龍と同じ、鱗のついた翼が生えていた。
「名前くらいは覚えているよね?キミ、名前は?」
「……人に名前を尋ねる時は自分から名乗るものよ。」
クリスは目の前の少年をまっすぐに見据えて応えた。
少年は、おやおや、という身振りをすると――
「ボクの名前は魔神ジークフリート。ジークって呼んでね――」
一瞬の瞬きのうちにジークフリートはクリスの目の前に移動していた。そして、クリスの顎をつまんで問いかける。力を込められているのか自然と爪先立ちとなった。
「もう一度聞くよ。君の名前は――?」
「――クリスよ。」
真っ直ぐに見据えたまま答える。
怖い。吸い込まれるような怪しげな瞳……。
瞳の奥には残虐な心を垣間見るような気持ちを感じさせるものがある。
「……まぁ、いいや。君を連れて行けばボクも大公に褒めてもらえるからね。」
そういって手を放す。クリスの両腕を甲冑に身を固めた屈強な兵士掴む。
「言っておくけど、抵抗しない方がいいよ?ボクは君を殺して持って帰っても全然構わないんだ。」
「――むしろ、ここで抵抗して死んでくれると楽なんだけどなぁ。」
そういい終わらないうちに扉を突き破って何かがクリスの目の前を横切った。
首のなくなった兵士が音もなく崩れ落ちる。
「ほうら、面白くなってきた。」
ジークフリートは楽しそうに嗤っていた。




