ミラクル・キス その1
こいつは一体どういうことだ。
目の前が暗く、冷たかった。
崩れた瓦礫の中にうつ伏せで倒れているようだ。
右側の頬に冷たい地面を感じる。
だが、右側は柔らかい。しかも、生暖かいときてる。
その感触は、少し前に感じた覚えがあった。
暗闇に目が慣れてきたのか、それともその暗闇が、布を被せられていただけだからなのか、ホークには自分の置かれた状況が次第に理解できてきた。
見上げると、そこにはプリッとした肉付きの良い知りと、清潔感のある白い下着が見えていた。暗闇はスカートの中に頭が入っているからのようだ。
「おい、どいてくれないか――?」
「変態っ!!」
ホークが言い終わるより先にそれは素早く立ち上がると、ホークの頭を踏みつけた。
「変態っ!!変態っ!!変態っ!!」
何度も、何度も、踏みつけられる。
ひとしきり踏みつけると気が済んだのか、目の前の少女が仁王立ちで言った。
「一日に二度もアタシのお尻に頬ずりして、気持ち悪いっ!」
こんな理不尽なことはねぇ……
「ちょっと待て!俺が悪いのか!?俺が何したんだ!?お前が降ってきたんだろ!!」
ホークが抗議する。縛っていた柱は一緒に倒壊したものの、後ろ手に縛られたままだ。
どうやら、クリスはホークよりも上階にいたようだが、建物が倒壊した際に落ちてきたらしい。
そして、再び、ホークの頭がクッションとなり、無傷であった。
「悪いわよ!」
頬をぷっくりと膨らませると、クリスは言い放った。
「こういう時はお姫様抱っこで受け止めるものでしょ!そしてこう言うの、『親方、空から女の子が!』って。」
クリスは自分の世界に倒錯するところがあるようだ。
親方って誰だよ……
そもそも、縛られてて抱きとめれねーよ。
「そして、空賊と一緒に空飛ぶ城を探しに行くのよっ!」
「……盛り上がってるところ申し訳ないんだが、この縄を解いちゃくれないか?」
ホークは腹ばいでクリスを見上げると懇願した。
「……。それが人にものを頼む態度かしら?」
その姿を見て、自分が上位に立っていると確信したクリスが居丈高に言う。
「……解いてください、お願いします。」
「ダメ、ダメ。謙虚さが足りないわね。アタシの靴にキスするの。そして、『何でも、何でもいうこと聞くから!』って言うの。」
大げさな身振りを加え、クリスはホークに服従を要求した。
このガキ……。
ホークは腸が煮えくり返る。
「お前、パンツ、見えて――」
言い終わる前に視界が暗くなる。
図らずもホークはクリスの靴にキスをすることとなった。




