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その名はクリス! その2

気がつくとそこは草原だった。ふかふかの緑のベッドに、仰向けに寝転がって空を見上げる。

空は透き通るほどに青い。


「お目覚めになったのですね、姫。」

優しげな男の声が頭の上から響く。


暖かい……。


誰かが手を握ってくれていた。心地よいまどろみの中、温もりの方に振り向くと間近に男の顔があった。


「な、な、なに!?」


驚いて飛び起きる。目の前の青年は端正な顔立ちで、見た目西洋人の様だった。

青い瞳、金色の髪。少しそばかすのある頬。文句のつけようのない美形である。


「これは失礼を……。(わたくし)はガブリエルと申します。貴女をお守りする様仰せつかった騎士(ナイト)で御座います。」

そう言って片膝を着くとクリスの手のひらに口づけをした。


あのイケメンに騙された!


ガブリエルに連れられ、大きなお城のある街に来た。その後、荘厳な教会の一室に案内され、それっきりである。

ガブリエルは毎日三度食事を運んでくるだけだ。

何を尋ねても『いずれお答えしますが、今はその時ではないのです。』微笑みで返された。


「今じゃないって、じゃぁ、いつ答えるのよ!」


クリスは腹立ち紛れに枕を天蓋に向かって投げつける。まくらは跳ね返ると、当て付けの様にクリスの顔面に命中した。


「もう嫌ぁーーーーーーーーっ!!」

雄叫びの様な声を上げると枕に噛みつき、歯で布を引き裂いた。

中には羽毛が詰まっていた。それを手で掴み出すと手当たり次第に放り投げる。

ゆっくりと羽が舞い、雪を散らす様な状態となった。


それだけでは飽き足らず、更に枕を引き裂く。

ビリビリという音ともに布が裂けて行く。

その様子を見ていて、クリスは何かひらめいた様だった。


「そうか、その手があったわね!」

そう言うやベッドのシーツを剥ぎ取り端に噛み付くと同じ様にビリビリと咲き始めた。

上質なシルクで織られたシーツは柔らかく、切り込みを入れると面白い様に裂けた。


幾つかの帯に切り裂くとその端と端を固く結び一本のロープに仕上げた。


「ふふん、やっぱ、アタシって天才。

これを伝って窓から降りれば完璧ね。」


得意げにニヤニヤしながら窓際にあるテーブルの脚にシーツを縛り付ける。

テーブルは大理石を彫り込んで作ったものであるらしく彼女の力では微動だにしない。これならロープにぶら下がっておりてもびくともしないだろう。


窓を大きく開いて身を乗り出したその時であった。


トントン、と軽いノックの後、例のイケメンが部屋に入ってきたのであった。


ーー

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