聖都 ヴェストファーレン その4
(4)
先程まで怯えていたはずの男が短剣を抜き放ち、ホークに襲いかかる。
ホークは事もなげに躱すと相手の腕を捻り、短剣を奪った。
「おやおやー?復活祭の間は城兵以外は武器の帯同を禁じられているのではございませんかー?」
そのまま男を足蹴にし、後頭部を踏みつける。鈍い音がして、地面に赤黒い染みがひろがった。
「自分たちが作ったルールを自分たちで破る。いつもの事ながら、反吐が出る。」
ドスの効いた低い声で吐き捨てると、足元の男を蹴飛ばす。それは失神した為か、だらりとだらしなく転がった。
「さすが、10年に一度の傑物と言われただけはある。」
リーダー格の男、司祭が不敵に笑った。
「だが、所詮は10年に一度程度の男ということだ。」
司祭が右腕を上げると、音もなくホークの周りに人垣が出来ていた。
手に手に背丈ほどもある長い六角の棒を携えている。
その先端に鋼でできた十字架があしらわれている。
聖教会の兵士、いわゆる僧兵の集団であるようだった。
「聖都の中は全て教会領なのでね。自分の敷地で何をしようと自由なのだよ。」
「こりゃまた、雑魚らしいセリフだこと……」
呆れた、という感じで手にした短剣を構える。
「俺一人捕まえるのに死人を何人出すつもり……」
「いやぁぁぁぁーーーーーっ!落ちるーーーー!!」
突然真上からヒステリックな声が轟く。
「な、なん……だ……!?」
見上げたホークの視界は闇に包まれた。




