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聖都 ヴェストファーレン その2

「走れっ!」

ホークが鋭く命じると、シグナスは七海の手を握って右の路地へと駆け出した。

それを見るや左の路地、つまり向かい側にいた男の影が慌てて駆け出す。

ホークはその動きを見逃さなかった。


ふらふらっと、よろけるようなそぶりをしてその男に肩を当て、その足を止めたのである。

「痛ぇっ!なんだ、この野郎っ!!」

雑踏に響き渡る、普段よりも高い声のトーンでホークは怒鳴った。あたりの視線が一斉に注がれる。

ホークは相手の胸ぐらを掴み自分に引き寄せようとする。

男は顔を見られまいと俯き加減にその手を払おうとした。ホークはその動きに合わせて大げさに、仰け反って見せる。

「こいつ、旅団の大将を殴りやがった!!」

周囲でざわめきが起こるった。「マズい」、と影が慌てて逃げようとしたところへホークの拳骨が眉間に突き刺さる。

男がよろめき、脇にいた酔っ払いに激しくぶつかる。

「なんだこの野郎!」

今度はその酔っ払いが激昂して男に殴りかかる。男は酔っ払いの攻撃を避けようと身をかわすと、さらに隣の酔っ払いに激突する。酔っ払いの拳は空を切り……とは、いかず、別の酔っ払いの鼻っ柱へと突き刺さった。

こうなるともう手が付けられない。雑踏のあちこちで乱闘騒ぎが沸き起こっていた。


「おのれ、勘のいい奴だ……」

雑踏を遠巻きにし、様子を伺っている男が吐き捨てる。

男達は白いフード付きの外套(マント)を深く被っていた。ホーク達の尾行していた三人組だ。


七海を尾行していたと思われる二人の男は足早に乱闘現場を離れる。

「どうする?荷物<パッケージ>を見失ってしまった。なんと弁明したら良いか……」

もう一人の男はひどく怯えているのか、リーダ格の男を追いながら早口でまくし立てる。

「こんな事にならないように城兵に手を回しておくべきだったのだ!」

尾行者たちのリーダーはその男の胸ぐらを掴むと壁に押し当てた。

「馬鹿を言うな。ああ見えて、あの男は旅団の高級士官なのだ。」

加えて、王立士官学校の首席ときている。下手に手を回せば近衛に感づかれ……」

「へぇ、なかなか俺のことをよく調べてるじゃねぇか?」

「!?」

男たちが振り返るとそこにはホークの姿があった。

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