夜襲 その3
「一体、何が起こっている?」
彼に分かっていることはただ一つ、物音ひとつ拾うのも難しい雨の中、暗闇から猛烈な敵襲を受けているということだけだ。
だが、敵はそう多くはない。
状況が把握できないながらも、それだけはしっかりと感じられた。
大軍で夜襲を行えば同士討ちが必ず起こる。人間は同士討ちを最も嫌うからだ。
「右翼が騎兵に突破、分断されたようです。」
傍らの参謀格の魔人が馬上の彼にそっと報告する。
「騎兵は前列最後尾をかすめて正面へ展開するものかと……」
「違うな。」
指揮官は即断する。
「騎兵は右翼を突破した後、2手に分かれているはずだ。でなければ中央にいる我々と激突している。」
魔族の軍は右翼、中央、左翼に分かれて行軍していた。縦に長く伸びる右翼の横っ腹に騎兵が突き刺さり、それを分断していった。
浸透戦術は速攻に主眼を置いているため、輸送部隊のような後列がない。このため、戦況報告はないが、背後にも展開しているとみて間違いない。
「つまり、われらは挟撃される。」
だけでない。突破され、総崩れとなった右翼の兵が中央に逃げ込み、混乱がひどい。
右翼側からもすぐに敵兵が雪崩込んでくるだろう。
「左翼をすぐに中央の後方へ回せ。敵は三方からくる。右翼方向に円錐形の陣へ切り替える。」
敵は少数。その読みが外れていないのであれば、押し返せるだろう。
「それまでは中央が攻撃を支える。親衛隊の意地を見せろ!」
「おおっ!!」
怒号が上がり、指揮官の檄に、魔族軍が息を吹き返した。
だが、次の瞬間、彼らの横を青白い閃光が走り、後方で爆発が起こる。
彼らは数名の魔人が力なく宙に打ち上げられるのを見た。




