雨中の行軍 その1
七海は護衛の兵とともに、聖都に向かう途中にあった。大きな馬3頭が引く荷馬車にシグナスとともに座っている。二人は他愛もない話をずっと続けていた。
馬車を中心として3mはある長い槍を装備した歩兵が取り囲み、その外側を騎兵が固めている。約200名からなる護衛の兵団は物々しい雰囲気を漂わせている。ホークはその兵団の先頭にあった。
「途中の襲撃には十分注意しろ。」
フレデリックが出発前にホークにかけた言葉はそれだけだった。
傭兵とはいえ、上下の序列は絶対だ。ホークはチェスカに食い下がったようにはしなかった。
でなくとも、食えないオッサンだ。ホークは馬上でポツリと呟いた。
七海と出会う直前、ホークはステラに会っていた。
荷物を回収しろ。フレデリックはそう言ったきりで何も説明はしない。それはチェスカも同じだった。
星と呼ばれた魔人は「少女《七海》を魔族に渡すな」と言った後、星空へ消えた。その後見たのは魔人たちとやりあった時だ。
「ご主人様」、ステラは七海をそう呼んだ。
「リトル・プリンセス」、ゼップがサテラとの会話でそう言ったのも聞いている。
とすれば、七海は魔王なのか……
いや、それなら魔人が魔王を人間に託すはずはない。
荷物とは聖王の事ではないのか……?
ホークも神族と魔族の戦い、俗に神魔戦争が周期的に起こると言うことは幼い頃から昔話として聞かされてきた。それが転生した魔王によって引き起こされるということ、人間を聖王が率いることも。
「駄目だ、分かんねぇ~っ!」
馬上で頭を掻きむしる。それを見て、後ろから2人の騎兵が近づいてきた。
「どうしたん?いつも変やけど、いつにもまして今日は変やで。」
「そうですねぇ……ブツブツ、ブツブツ腕を組んで言ってますし、遂に頭に虫が湧きましたか?」
二人はいきなりとんでもない暴言を上司にぶつけた。




