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聖都へ その6

「あの姉ちゃんは俺に助けてほしいと言ってきた……。魔人が人間に助けを求めるなんて馬鹿げてるだろ?」

 そう言って、苦々しく笑う。

 フレデリックはガサガサと上着のポケットを探るとタバコを取り出した。火を点ける。口にくわえ、深く吸い込むと、ため息をつくように煙を吐き出した。


「この陣地は強力な結界が張ってある。魔族は絶対に入れない。だが、あの姉ちゃんはスルリと入ってきたんだ。金髪がこう、風に舞っててな。身体が光を帯びて輝いてんだよ。俺は天使が来たんだと思った。」

 フレデリックが言う情景はまさに七海がステラに助けられた時と同じであった。七海もまた、彼女を天使だと思ったのだ。


「だが、”自分は魔人だ”って言うんだ。この天使は頭がおかしいのかと思ったよ。その時、ステラは前髪をあげて見せたんだ。そこには角が一本立ってやがった。」

 魔族の特徴は紫色の肌と額の角……。それは最初にホークが説明してくれたことだ。

「色の白い魔人もいるのか? 俺はステラに聞いたんだ。そしたらあの姉ちゃんは人間も魔人も元は同じだなんていいやがる。少なくとも俺は角の生えた人間や、紫色の人間は見たことも聞いたこともねぇ。」

 再び、ため息のような煙を吐き出すと、がっくりと首を折る。

「訳が分からねぇ。突然現れて、突拍子もないこと言いやがる。俺はたかだか傭兵どものボスでしかねぇ。何で普通の人間である俺のところにそんな馬鹿げた話をしに来たんだか……」

 七海はフレデリックの話に共感を覚えた。この人はこの人で理不尽な事実を突きつけられている。突然この世界に連れてこられた自分とそれほど変わりがないのだ。


「助けるって、一体全体、何をしろってんだ? 俺が聞くとあの姉ちゃんは”神族も魔族もない世界を作る助けがほしい。人間と魔族を一つにする”なんていうんだ。どういうことだよ、まったく……」

フレデリックのぼやきはどこか諧謔かいぎゃくじみておかしかった。重大な話をしているはずなのに口許が緩むのを七海は感じた。


「だから、俺は言ってやったんだ。さっきの嬢ちゃんと同じように……」

 そう言って、すっかり短くなった煙草を地面に押し付ける。

「人間と魔族は戦うものと決まってる・・・・・・ってな。そしたらあの姉ちゃんが微笑んで言ったんだ――」

 よいしょ、とフレデリックは立ち上がり、七海を見つめる。その瞳は優しさに満ちていた。七海に手を差し出す。七海が手を取ると力強く引き上げられ、しっかりと立ちあがることができた。

 

「――世界は変えられる、ってな。」

フレデリックもまた微笑んで言った。





本日はこれにて終了です。


予想外に長くなってしまった。。


准将はいいパパなのです。

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