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聖都へ その4

「おう、派手にやり合ってたな。」

 チェスカが去るのを見送る七海の後ろから声をかけるものがあった。低く響く、たくましい声だった。

「七海ってぇのは、嬢ちゃんかい?」

 振り返るとそこには一見して位の高い軍人であることを想像させる人物が立っていた。

 上着の胸には多くの勲章が付けられ、肩章は金色で銀の星が一つ縫い付けられている。

「まったく、大声でやかましい奴らだ……司令部のほうまで聞こえてきやがった。そういうことをやるから、兵達から”夫婦”だの、”婚約している”だの言われるんだ。まったく、公然と噂を耳にする親の身にもなって見ろってんだ、畜生め。」

 独特のべらんめぇ口調で話すその男は七海が見上げるほどの大男だった。


「あの……チェスカさんのお父さん、ですか?」

 七海が声をかけるとニカっと白い歯を見せ、男はうなずく。

「やっぱり! つやのある栗毛と優しそうな目がそっくりです!」

「そいつは嬉しいねぇ。どいつもこいつも何でトンビが鷹を産んだなんて言いやがる。嬢ちゃんは見る目があるな。」

 そう言ってフレデリックは大きな身体に似合わず、照れくさそうに頭をガリガリと掻いて、豪快に笑った。


「ちょっと嬢ちゃんと二人で話がしたいんだ。シグナス、そこのボケナスを連れて向こうに行っててくれないか? 聖都に経つ準備もあるだろう。」

 フレデリックに指示され、シグナスは素直にそれに従った。崩れ落ちたままのホークの手を引き、馬小屋のほうに引きずっていく。


「さて、嬢ちゃん、ちょいと座ろうか。」

 そう言って青々とした芝の地面にドカッと座る。七海はそれに向かいあうようにして正座をした。

「なに、とって食おうって訳じゃないんだ。そんな緊張しないでくれよ。」


「転生ってのは、この世界じゃよくある話なんだ。」

 フレデリックは唐突に話し始めた。

「よくあるって言っても、100年か200年かに2人なんだけどな。」


 気になる言い方だった。

 普通なら100年に1人か2人というところを敢えて”2人”と言っている。

 七海は疑問に思い、フレデリックに問いかけた。


「2人っていうのは、どういうことなんですか?」

「察しがいいね。利口な子は好きだぜ。」

 フレデリックは七海を試すような話しぶりで続ける。


「俺らの世界は神族と魔族に分かれている。人間は神族側だな。」


 あのフェレット(シュバルツ)が言っていたのと同じ話だ。


「神族と魔族は100年か、200年かに一度、大戦争をするんだ。それで勢力図が100年ごとに大きく変わる。だが、そんなの馬鹿げてるよな?」

 同意を求められ、七海はコクコクと無言でうなずいた。


 !?……100年か、200年かに一度って……


「……その戦争って言うのに転生者が関わっているってことですか?」

 そうだ、とフレデリックは深くうなずく。


「転生者は必ず2人だ。1人は魔王……魔族を率いて人間を滅ぼそうと企む。だから、俺らは魔族と戦う。」

 二人の間に重苦しい沈黙が流れる。


「……もう1人は……人間を率いて魔族と戦う勇者ですか?」

 耐え切れず、七海は問いかけた。


「いい線をいってはいるな。だが、少し違う。」



次回、2013.07.12 01:00投下します。

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