聖都へ その3
「あの二人、仲悪いのかな?」
七海は目の前で足先を抱えて転げまわるホークを見て、シグナスに聞いた。ホークは誰に対しても軽いノリであることは分かってきたが、チェスカはホークを嫌っているようにも見える。
「むしろ逆。あの二人は夫婦……」
シグナスがそういいかけると間髪いれず、
「そんなわけあるかっ!」
「ないわよっ!」
二人は否定した。
「この通り、阿吽の呼吸を実装済み。」
二人の剣幕はどこ吹く風。シグナスは飄々(ひょうひょう)としている。
「七海ちゃん、こんな馬鹿が護衛で不安だとは思うけど、代わりに強~い兵隊さんがいっぱいいるから安心してね。」
チェスカは七海を覗き込むようにして微笑みかける。
「オイ、オイ、オイ、誰が馬鹿だって? 仮にも上官だぞ?」
聞き捨てならない、といった感じでホークはチェスカに絡む。
「上官なら上官らしく、尊敬できる言動をしなさいよ。あなたのせいで旅団の風紀が乱れ……」
「風紀、風紀って、俺らは正規軍じゃありませ~ん。大体、傭兵が傭兵らしく振舞うことの何が悪いんだよ? お前の親父さんからしてザ・傭兵じゃねーか。」
「そういう古い考えじゃ駄目なのよ! 私達は傭兵とはいっても、王国軍の一翼を担っているのよ!? あなた、一体、士官学校で何を学んだのよ?」
士官学校、という言葉にホークは眉をしかめた。それまでふざけておちょくる様な口ぶりだったが、途端に語気が荒くなる。
「ああ、何も学んでねーよ。あんなところ、何の意味もねぇ!」
「そうみたいね! あなたは何も学んでいない。身につけるべきものを何も身につけていない!」
チェスカがそういいきると二人はにらみ合ったまましばらく動かなかった。
…………
七海には耐え難い沈黙が続く。その静寂を破ったのはホークだった。
ホークはおもむろに左手を突き出すと、チェスカの胸の前で拳を握って、開いてという動作を数度繰り返した。その目はチェスカを睨んだまま、真剣な表情である。
そして、言った。
「身になってるはずのものが、ねぇっ!」
次の瞬間、チェスカに股間を蹴り上げられ、声もなく崩れ落ちる。
(げ、ゲスだ…)七海は思った。
「ホークも……なってるはずのものなくしそう。」
シグナスはうずくまり、およそ自分には分かるはずもない痛みにもんどりうっている男へさげすむ視線を投げかけた。
「死んじゃえ!馬鹿っ!!」
チェスカは踵を返して旅団司令部へ戻っていく。その目にうっすらと涙がたまっていたことに気づいた者はいなかった。
気づいたらギャグパートになってしまった(-w-;
「聖都へ」まだちょっと続きます。
次回2013.07.12 0時投下




