聖都へ その2
「ところで――」
チェスカはホークの方へと向き直った。
「ホーク少佐、旅団長閣下からの命令を伝えます。」
チェスカの敬礼を受けると、ホークの雰囲気が一瞬で変わるのを七海は感じた。
「了解。拝命する。」
同じく、チェスカに対し敬礼を行う。
チェスカは軍服の内ポケットから命令書を取り出して読み上げる。
「本日、正午を以って飛鷲大隊を率い、客を聖都まで護衛。聖教会のセラス枢機卿にその身柄を引き渡すこと。」
「じょ、冗談だろ!?」
そう叫ぶと、七海と視線を合わせる。
どう見たってただの女の子じゃねぇか。
どういう理由でそんな大層な護衛が必要なんだ……
「小娘一人を運ぶのに俺の大隊を全部投入するってのか?」
ホークは旅団内での階級は少佐であり、大隊指揮官である。
風の旅団の兵力構成は6個大隊の約3000名だ。1個大隊の定数は凡そ500名である。だが、ホークが指揮する飛鷲大隊は他の大隊とは異なり、選抜兵だけで構成された2個中隊200名という少数精鋭部隊だ。フレデリックはそれを護衛のためだけに投入するという……
「少佐、復唱は?」
チェスカは戸惑うホークに対し、厳しい態度を見せた。
「……本日正午、大隊を率い、客を聖都まで護衛。聖教会のセラス枢機卿にその身柄を引き渡します。」
カッ、と踵を合わせて敬礼する。
それを受けた後、チェスカは命令書を手渡す。ホークは命令書のサインを一瞥すると上着のポケットに押し込んだ。
ホークはおもむろにチェスカに近づくと耳元で囁く。
「チェスカ、お前と親父さんは一体何を企んでるんだ?」
「……今は言えない。それと――」
チェスカは踵を上げ、思い切りホークの足先を踏みつける。
「顔が近いっ!」
ホークの悲鳴が辺りに響き渡った。
次回2013.07.11 22時投下
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旅団の兵制をどうしようかと迷いましたが、あんまり込み入った設定にしても仕方がないので、6個大隊定数500名としました。
ホークの大隊は定数が少なく、3000名から余る部分が大隊司令部…ととても安直な設定です。
また、大隊も本来は4個中隊とすべきですが、精鋭ということで2個中隊にし、かつ、中隊定数も100名とキリのいい数字にしちゃいました。




