二人の少女
「私もお菓子好きです! 自分で作ったりもするんですよ。」
七海とシグナスはもう打ち解けていた。これが女子同士の会話というものか……と、ホークはそれを眺めるだけだった。
元々、甘いものは得意じゃないしな、そう言って話題に入っていけないことが”若さ”せいではないと自分に言い聞かせる。
「シグナスも……料理得意。パウンドケーキ焼ける。」
シグナスは相変わらず淡々とした口調で話す。だが、その表情は先程よりも柔らかく、頬も少し上気しているようだった。
「七海はアマレット、好き?」
「アマレット?」
七海は聞き慣れない単語に戸惑いを見せる。アマレットは杏の核を使ったリキュールだ。いわゆる、杏仁豆腐の”杏仁”である。その香りはアーモンドを思わせる。ソーダで割ったり、カクテルでも使用するが、ケーキの味付けにも用いいる。
「なんと、ここにシグナスが作ったアマレットケーキがある」
シグナスは大仰に言うと懐から油紙に包まれた細長い包みを取り出す。開くとそこには2センチほどの厚さに切られたパウンドケーキが5切れ程入っていた。バターと砂糖の甘い香りに、アマレットリキュールの上品な香りが広がる。
お菓子の香りを嗅いで七海のテンションが一気にあがった。
「おぉぉっ! これは美味しそうなケーキではありませんか、シグナス殿!」
「無論、美味しい。さぁ、食べられよ、七海殿!」
二人は芝居がかかった口調で大げさなやり取りをして遊んでいた。七海がアマレットケーキを口にすると、目がとろんとだらしなく緩んだ。糖分は麻薬に似ているという。猫にまたたび、女子にはスイーツといったところだろうか。
七海は幸せを数秒間の無言とともに噛み締めしめたあと、シグナスの手を取って感動を伝ええた。
「美味しい! アーモンドの香りがすっごく効いていて、上品な甘さが最高です!」
「七海、お前は中々見どころがある。弟子にしてやろう」
「はは〜っ」
今度は七海がシグナスに平身低頭していた。
歳が近いから、こいつら仲良くなるのも早いな……。ホークはそれを見て感心していた。
シグナスは七海と同じ15歳の女の子だ。やや引っ込み思案なところがあり積極的には人に話しかけたりしない。また、旅団は18歳以上を中心とした野郎ばかりで構成されている。
その中に15歳の少女がいるというのはやはり違和感があると、ホークは従前から考えていた。
シグナスの父は軍医、母は魔導師であった。傭兵団には珍しい職場恋愛で結ばれ、シグナスが生まれた。シグナスは魔法と医学の知識を合わせることで治癒術が得意な白魔道士となった。わずか10歳にして 治癒術を使いこなしたことから、旅団の衛生兵として勤務している。
外見はというと、シグナスは背が七海と同じくらいあるが、七海に比べて幼児体型だ。
逆に言うと、つまり、七海は中々の胸と尻を持っている。これは将来楽しみだと、ホークはニヤニヤせざるを得ない。
シグナスは銀髪で、長い髪を後ろで縛っている。瞳の色は青く、肌の色も透き通るほど白かった。このため、どこか浮世離れというか、人間離れしている感じがする。もっとも、性格は人間離れもいいところなのだが……とホークは苦笑する。
一方の七海は言葉遣いは丁寧だが、その性格は快活であろうと思われた。肩先までのショートボブで前髪を右に流し、ピンで止めている。健康そうな白い歯を見せて弾けるように笑い、表情豊かな印象を受ける。また、(この世界では、)珍しい黒い瞳と黒髪を持っているため、ホークは異国風な印象を受けた。
「女子同士は早く打ち解けられていいねぇ……」
ホークがボヤくと七海がそれに応じる。
「ホークさんのことも教えて下さいよ! 私、見た目よりもホークさんは若いと思ってるんです!」
ほう、ちょっと嬉しいじゃねーか。ホークは期待を込めて言った。
「で、何歳に見えるよ?」
「25歳っ!」
七海が手を使って年齢を表している。右手を広げて5を作り、それに左手のピースサインを加えて25ということだろう。
ああ、そうだ……いつもそうだ……
俺はいつも年上に見られる。それは、落ち着いているからなんだ。
そうやって3回心の中でつぶやくとホークは自分の歳を明かした。
「……俺は18だ……」
七海は空気が凍った音を聞いた。同時に、シグナスがフォローを入れる。
「ホークは”おっさんが無理して若作りしている”ように見えるが、実は”おっさんに見えるただのガキ”。だから、問題ない」
それは問題なんじゃないか、フォローになってないよ……と汗をかきつつ、七海は別の質問をぶつけた。
「昨日の夜、ホークさんは森で何をしていたんですか?」
それは本質的な問だった。無邪気に笑う七海の笑顔を横に、ホークは昨夜受けた傷が痛むのを感じた。
七海、シグナスの外見についてお菓子を話題にしながら描いてみましたwww




