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風の旅団 その3

 ホークはチェスカが言ったとおり黒い縦縞のテントの手前にいた。

 青々とした草原の地面に座り、傍らには白い服を着た女性がいる。頭にちょこんと四角い帽子を乗せており、どことなく看護婦のように見えた。


「よう、七海!ようやくお目覚めか」

 七海が声をかけるより早く、ホークがこちらに気づいて手を振っている。七海はホークの元に小走りで駆け寄る。

 ホークは傷の手当を受けているのか、身体のいたるところに包帯を巻いていた。


「あの……昨日はありがとうございました。」

 七海は深々とお辞儀をすると、ホークは慌ててそれを制止する。

「オイオイ、よしてくれ。チェスカから聞いてると思うが俺達は今、辺境の防衛を仕事にしてるんだ。民間人の保護も仕事のうちってな!」


 あれ、この人、昨日は報酬が……とか、言ってなかったっけ?


「あの、昨日はお礼が必要だって……。でも私、お金持っていなくて……」


 事実、七海は持ち合わせがなかった。もっとも、持っていたとしてもこの世界で日本円が通じるとは思えないが。


「ば、バカっ、それは内緒に……って、痛てぇっ!」

 ホークが人差し指を立ててしゃべるなという仕草をすると同時に痛みのあまりもんどり打って転げる。傍らの看護婦さんが何かしたようだった。

「……やっぱりそんなことだろうと思った」

 彼女はと淡々とした口調で話すと、蔑むような眼でホークを見た。

「違う、違う、言葉のあやってやつだよ。こんなガキから金ふんだくろうなんて考えるわけねぇだろ!!」

「貴方には前科がある。それも、一つや二つじゃない……

 この件はチェスカ姉に報告させてもらう。」

「だから、今回は違うって。信じてくれよ〜……シグナスぅ〜」

 後生だから、とシグナスと呼ばれる白衣の女性に土下座するホーク。

「……プリンで手を打とう。」

ポツリ、とシグナスがつぶやく。どういうことだとホークが目を白黒させていると、シグナスが続けた。

「プリンが食べたい。そしたら、チェスカ姉には話さない」

 そしたらは脈絡がないんじゃないかな〜……と、苦笑する七海を横にホークは平身低頭していた。

「ははーっ、シグナス様、仰せのとおりに。」

「うむ、よきにはからえ。」


どんな漫才だ……と呆れながらも、七海は恩人の傷の具合が気になった。ホークがゼップに痛めつけられていたところは少し覚えている。


「ホークさん、傷は大丈夫なんですか?」

「ああ、何とかな。肋骨アバラが何本かイカれちまったが、こいつのお陰でこの通りだ!」

 そう言って、自分の胸をドンと強く叩く。次の瞬間、痛みのためか声にならない叫び声をあげた。

 それを見てシグナスは冷たく言い放つ。

「ヒビや骨折程度は治癒術ヒーリングで直せる。切り傷はこの膏薬こうやくを塗れば治る。でも、貴方の頭はもう手遅れ……」

「……ナチュラルにひどいよな、コイツ……」


「そういう七海はどうなんだ?傷一つないってチェスカから聞いたんだが……」

「私はほとんど怪我らしいものはなくて……、最後の方どうなったか覚えていませんか?あのま魔神はどうして私達を見逃したんでしょうか?」

 七海の問いにホークは深くため息をついた。

 ”わからない”それが彼だけでなく、旅団としての答えのようだった。


「そうだ、ステラさん! ホークさん、ステラさんを見ませんでした? 彼女は今どこに……」

「残念だが、それも分からないんだ。俺たちは魔神と戦った。ステラは……天使だったのか? それとも魔人だったのか? 俺にもわからねぇんだよな……」

ホークは腕を組んで悩むそぶりを見せた。


「ホークと七海は森に倒れていた。二人だけ。他には誰もいなかった。」

「シグナスさんが見つけてくれたんですか?」

そう問われるとシグナスは無言ながら満面の笑みでうなずいた。




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