会話
18時過ぎに鳴瀬さんが帰ったあと、私はお母さんとキッチンで夕飯を作っていた。
ザクッ ザクッ
『鳴瀬さんとはいつから会ってなかったの?』
私はお味噌汁に入れる白菜を切りながらお母さんに質問してみた。
ザッ ザッ
「そうねぇ...私が19歳の時、あなたを妊娠したときに引っ越したから....16年近くになるわね。」
お母さんはシンクのほうでお米を研ぎながらそう答えた。
『その時って鳴瀬さんは何歳だったの?』
「5歳、だったかな。」
『へぇー、鳴瀬さん、どんな子だった?』
「可愛かったわよ、いつも私を〈七姉ちゃん〉って呼んでくっついてきてたわ。
あと、片付けが苦手な子だったわね。本人は片付けてるつもりでも、周りから見たら散らかしてるみたいだったわ。」
『アハハッ、面白い子だったんだね、鳴瀬さん。他には、何かない?』
「フフッ、海月さっきから悠人君のことばっかりね。そんなに気に入ったの?」
ドキッ
私が動揺したのはお母さんの質問の内容ではなく、お母さんが鳴瀬さんを「悠人君」と呼んだことだった。
なんでだろ。わたし、なんで...。
『別に気に入ってなんかないよ。』
そう答えてその会話は終わったが、私の心の奥にはなにかモヤモヤした感情が残ったのだった。