対面
「じゃあね、海月ちゃん。」
『うん、バイバイ!』
私の親友、坂崎 友梨とショッピングモールでの買い物が終わった私は、帰宅の途についた。
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『ただいま~』
玄関に入り靴を脱ごうとしたところで、私は自分や母親ものではない男物の靴があることに気がついた。
えっ、誰?
父親が亡くなってから家に男の人がいたことが無かったので、私は訝しみながら居間に向かった。
「海月、おかえり」
そう言った母親のテーブルの向かい側にはやはり男の人が座っていた。
少し細い目に短く整えられた髪の毛、これといって特徴の無いよくありそうな顔をした男だ。
「こんにちは、お邪魔してます。」
その人が ニコッと笑って私にそう言った後、お母さんは私にその人を紹介した。
「この人は鳴瀬 悠人君、あなたの新しいお父さんよ」
『えっ...!!』
「はぁっ!?」
私は驚きで息が止まりそうになった。
あれ、でも何でこの人まで驚いているんだ?
私が心でそう思ったすぐあと、お母さんは大笑いしながら言った。
「ハハッ、嘘、嘘。だいたい私は、あなたのお父さん一筋だからね。鳴瀬君は私が若いときの知り合いよ。」
私はそれを聞いて、構えていた全身の力が抜けてしまっていた。
『...もうっ!びっくりさせないでよ。』
「ごめん、ごめん。」
「この子が私の娘、海月よ。」
お母さんは私に笑いながら謝ったあと、鳴瀬さんと紹介されたその男の人に私を紹介した。
『は、初めまして。海月です。』
私が詰まりながら挨拶すると、まだ驚いた表情をしていた鳴瀬さんは我に返ったようだった。
「初めまして。隣に引っ越してきた鳴瀬 悠人です。これからよろしくね。」
鳴瀬さんはニコッと笑顔をつくって言った。
『よ、よろしくお願いします。』
私は鳴瀬さんの笑ってできたえくぼを見ながらそうこたえたのだった。